僕はパラポンパラ星人

原口源太郎

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 翌日の全体練習が終わると、中西が私のところにやってきた。まだ多くの部員が残っている。
「センパイ、お話しがあります。最後まで残っててください」
 そう告げると、ぷいと音楽室を出ていってしまった。こちらの都合などお構いなしだ。
 まさか一晩で前日の答えを出せというのではないだろう。と言っても私の答えは決まっている。ごめんなさいの一言だ。だって私は中西のことが嫌いだから。

 最後まで残った私がピアノをポロン、ポロンと弾いていると中西がやってきた。
 おいおい、いつまで待たせるんだよ。そういう自己中な奴なんだよな、中西って。
 私の中に怒りがこみあげてくる。
「センパイ、お話しがあります」
「それ、さっき言ったよね」
「じゃ、話します」
「はい、どうぞ」
「実は僕、パラポンパラ星人なんです」
「は?」
「僕は地球侵略に来たパラポンパラ星人なんです。今、地球の内核中心部にエネルギーを蓄える作業と、地殻及び上部マントルを強化する作業に取り組んでいます」
「は?」
 言っていることが全然わからない。
「パ、パラポン星人?」
「パラポンパラ星人」
 中西は演奏の間違いを指摘するように言う。
「パラポンポン星人が何?」
「パラポンパラ星人。センパイも耳が悪いですね」
 余計なお世話だ。
「本当のことを言うと僕はパラポンパラ星人じゃないんですが」
「は? 何言ってんの?」
 訳のわからないことばかり言うので再び怒りが込み上げてくる。
「パラポンパラ星人は地球上の生物、特に動物が嫌いで、その中でも人間のことが大嫌いなんです。地球に近寄りたくないくらいに。だからパラポンパラ星人たちは人間によく似たロボットを作って、地球で作業をさせるために送り込んだんです。だから僕の本当の正体はパラポンパラ星人によって作られたパラポンパラ星人のための人間そっくりなロボットなんです」
「はあ」
 私はもうこんなバカは相手にしないことに決めた。
「それじゃ私、帰るね。そんなに暇じゃないから」
「ちょっと待って。センパイはもう、ただじゃ帰れない」
「は?」
「秘密を知ったから」
「昨日言ってたことと全然違うじゃない」
「いえ、大いに関係があります」
「どんな関係よ?」
「僕は人間そっくりだけど中身はロボットだから、一緒に暮らしているのが人間だといずれはばれてしまう。だけど一生一人でいるってのも怪しく思われてしまう。だから僕の秘密を知っているパートナーが必要になる」
「それで?」
 私はこのバカに付き合ってやることにした。今帰ったらこの先何日も付きまとわれそうだからだ。今日、きっぱりとケリを付けてやる。

「センパイは僕の知ってる女性の中で一番分別が付くし、賢くて意志も強そうだから僕のパートナーにぴったりだと思ったんです」
「思った? とてもロボットが話してるようには思えないんだけど」
「普通の人間が分析したなんて言う? 僕の思考中枢は人間並みに行動するように組まれているから、言葉を間違えたり演奏を間違えたりもするし」
「わざと間違えているって言うの?」
「わざとじゃない。そういうように造られているんです」
「はいはい。それであなたは昨日言ったことをすっ飛ばして、私に結婚を申し込んでいるってこと?」
「センパイには無駄を省いた方がいいと思って」
「ばっかじゃない。何言ってんの」
 帰ろうとする私の前に中西が立ち塞がった。
「センパイ、僕の話を信じてないでしょ」
「何よ、通しなさい」
「僕の話を信じてないでしょ」
「人を呼ぶよ」
「何ならそこの椅子で僕の頭をガツーンとぶん殴って下さい。全然平気ですから。僕はロボットだから自分で自分を傷つけることができないんです。だからセンパイ、思いっきり僕をぶん殴って下さい。そうすれば僕がロボットだとわかるから」
「バカ、そんなことできる訳ないじゃない」
 私は中西の脇をすり抜けて走った。追いかけてくる気配はなかった。
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