お家に帰る

原口源太郎

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 源太郎たちは道に出た。細く、ひび割れた粗末なアスファルトの道が山を切り開いた斜面に沿って続いている。
 道端に男たちが乗ってきた車が止まっていた。
「運転できる?」
 源太郎ははあはあと息を継ぎながら真奈美に尋ねた。
「できない。私まだ十六だもん」
「免許取れないの?」
「取れないよ」
 真奈美は車のドアを開けると、中にあったコートやシート用の座布団を取りだした。
「もらっちゃお。さ、行きましょ」
「ちょっと待って」
 そう言うと源太郎は車に乗り込んだ。
「まさか、運転できるの?」
 真奈美が驚いて訊く。
「できないよ。でも、ブレーキの位置くらいは知っているから」
 源太郎はサイドブレーキを外した。
「昨日ここに来た時、大人たちがちゃんとブレーキをかけておかないと車が動くから気を付けろって言っていたんだ」
 さらにミッションを押したり引いたりしてニュートラルの位置にする。
「これでいいはず」
 そう言って源太郎は車の外に出ると後ろに回り、トランクを押し始める。
「手伝う?」
 源太郎を見て真奈美が言った。
「うん」
 二人で車を押した。
 徐々に車は動き始め、二人の手を離れて坂を下っていく。
 やがてカーブで道を外れ、車は崖下へと落ちて行った。
「行こう」
 真奈美が源太郎に声をかけた。
 源太郎から返事はなかった。意識を失ったように真奈美へと倒れ込む。
 真奈美は慌てて源太郎を抱きかかえた。
「大丈夫?」
 源太郎は目を開かない。
 真奈美は源太郎を引きずるようにして道から上の斜面に入っていった。

 日は傾き、森の中にはたちまち暗がりが迫ってきた。
 真奈美は大きな木の陰に源太郎を横たえた。車から持ち出してきたコートを源太郎に掛ける。
「源太郎君は強いんだね」
 源太郎を見る真奈美の目から涙が溢れてくる。
 涙が源太郎の頬に落ちた。
「どうしたの?」
 目を開けた源太郎が真奈美を見る。
「何でもない。私、誰かを呼んでくるね」
 そう言った真奈美の腕に源太郎が手を伸ばす。
「行っちゃ嫌だ」
「うん・・・・そばにいてあげる」
 山は闇に包まれていく。
「源太郎君?」
「ん?」
「私ね、好きだった人がいたの。十三の時から好きだった。でも、その人はもういないの。何も手につかなくなっちゃって、家を飛び出してきたんだ。・・・・本当のこと言うとね、死んでしまってもいいと思ったの。誰も知らない場所で死んでしまっても。でも、源太郎君を見ていたら、そんな弱い自分じゃ駄目だって。あら」
 源太郎はいつの間にかすやすやと寝息を立てている。
 真奈美は源太郎の小さな手を取ってそっと撫ぜた。
 辺りはもうどっぷりと闇に浸かってしまっている。
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