お家に帰る

原口源太郎

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 泥まみれの面長男と丸顔男が小屋に帰ってきた。
「どうした」
「逃げられた」
 口髭男の問いかけに面長男が答える。
「馬鹿め」
 口髭男が腕を上げた。手には拳銃が握られている。
「おい、何の真似だ」
 闇の山に銃声がこだました。
 やがて口髭男が小屋から出てくると裏にまわり、オフロード型のバイクを出してくる。
 バイクにまたがりエンジンをかける。ライトを灯したバイクは暗がりの中へと走りだす。

 夜の住宅街。その中の一軒の門柱に山口の表札がある。
 家の居間では低いテーブルを挟んだソファに三人の男が座っている。
 テーブルの上の電話が鳴った。
 一人の男が受話器を取る。それは源太郎の父、政信だ。あとの二人は刑事。
「はい、山口です」
 話をする政信の顔付きが変わる。
「源太郎は・・・・」
 青ざめた顔で受話器を置く政信。
「時間を早めてきました。午前十時に金を持ってこいと」
 政信は二人の刑事に告げる。
「ほう」
「逆探知はダメです」
 刑事の一人が言った。
「そうか。取りあえず本部に連絡だ」
「それから犯人は金の受け渡しの時、警察は手を出すなと言っています。金を受け取った後で源太郎を解放するそうです」
「そうだろうな」
「どうします?」
 政信が心配そうに尋ねた。
「もちろん息子さんの安全が第一ですから、できるだけ犯人を刺激しないようにやります」
「お願いします」

 朝日が山肌を照らし、白い朝靄が少しずつ移動しながら消えていく。
 源太郎に寄り添うようにして寝ていた真奈美が目を覚ました。
「寒い」
 真奈美は起き上がりながら眠っている源太郎を見る。
 今頃になって真奈美はスマホを持ってこなかったことを後悔していた。でもスマホが必要になる事態に遭遇するとは思いもよらなかった。
「源太郎君、朝だよ」
 そっと声をかける。
「うーん」
 源太郎は眩しそうに眼を開いた。
「起きられる?」
「痛いよ」
「背中?」
「うん」
「行きましょう。早く病院に行って診てもらわないと」
「うん」
 二人は立ち上がり、真奈美が源太郎の手を引いて斜面を下り始める。
 やがて林道に出た二人は急ぎ足で道を下っていった。
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