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タクマはその場でわんわんと泣いていました。もしかしたらお父さんが心配して助けに来てくれるかもしれません。でも、帰る予定の時間にはほど遠いのです。自分はこの誰もいない寂しい土地で、ゆっくりと死んでいかなければならないのです。
十分ほども泣いていたでしょうか。泣き疲れて、気分が落ち着きました。冷静な思考力も戻ってきました。
鉱山の見晴らし台の上からドームに何か合図は送れないだろうか。作業場に、何か連絡する手立てがないだろうか。
鉱山の作業場は空っぽでした。何もありません。
あそこに十分な酸素が残っているでしょうか。
酸素の再生装置が取り外されて何週間も経ちます。酸素や気圧が抜けている可能性の方が高いでしょう。
その他に自分が生き抜く可能性があることはないでしょうか。
それは目の前にありました。丘の上の建物。あそこには人がいるかもしれません。この地域一帯の鉱山は役に立たないことがわかって長い時間が経ちましたから、あの建物も廃墟になっているのでしょうか。
タクマは二つのうち、ひとつを選択しなければならないことを知りました。
鉱山の作業場に戻って酸素がまだ十分に残っていることに賭けるか、あの丘の建物に行って何かを見つけるか。
タクマはGPS機能と地図を頼りにその建物のことを調べてみました。
お父さんの鉱山より大きくて人も大勢いた鉱山です。やはり何年も前に、人々はその鉱山を閉鎖して他に行ってしまったようです。数年前までは管理人が常駐していたという記録があります。しかし今も管理人がいるのかどうかはわかりません。
タクマは迷いました。鉱山の作業場に酸素があり、そこに留まることができるのなら、やがてお父さんが助けに来てくれるでしょう。
しかしタクマは荷物を整理してリュクサックを背負うと、丘の上の建物に向かって歩き始めました。さっき見た時に建物の窓から明かりが見えた気がしたのです。
それは死への選択になるかもしれません。でも、あの大きな建物には、たとえ廃墟になっていたとしても、自分を助けてくれる何かが残っているような気がしました。
お父さんやお母さんのいるドームと反対の方向へ行くのは、とても不安なことです。しかし生きるために正しい選択をしたという確信がありました。
できるだけ規則正しく、一直線に建物に向かって歩きます。焦りは禁物です。焦れば焦るほど状況は悪くなってしまうかもしれないと自分に言い聞かせます。
丘のふもとにたどり着いた時、ヘルメットの隅で小さく赤い光が点滅を始めました。はっきりとした異常をコンピューターが認めたのです。タクマは丘を登り始めました。
それほど険しい道のりでもないのに呼吸は乱れ、頭が痛くなってきました。酸素は十分にあるはずです。もちろん、小さな穴からわずかに漏れる空気のために酸素の消費量は増えていると思いますが、体調が悪い原因は他にあるようです。
宇宙服の気圧が下がっているのでしょう。調べてみればわかると思いますが、そんなことがわかっても仕方がありません。何の手立ても打てないのですから。
少しくらいなら気圧も自動で調節ができるのですが、それができなくなったために赤い光が点滅を始めたのです。
あとは自分が建物にたどり着くのが先か、意識を失うのが先かの問題です。
はやる気持ちを押さえ、激しい頭痛と戦いながら、やっと建物の前に来ることができました。自分の体がぐるぐると回るようで、今にも意識を失いそうです。建物の中に思いっきり深呼吸できる快適な部屋があると信じて扉の前に立ちました。
そこでタクマはへなへなと力が抜けました。
目の前の扉を開ける術を知りません。試しに右腕の操作パネルを扉横のモニターに近づけてみましたが、何の反応もありません。
すーっと意識が遠くなり、倒れるタクマを誰かの手が支えてくれました。
十分ほども泣いていたでしょうか。泣き疲れて、気分が落ち着きました。冷静な思考力も戻ってきました。
鉱山の見晴らし台の上からドームに何か合図は送れないだろうか。作業場に、何か連絡する手立てがないだろうか。
鉱山の作業場は空っぽでした。何もありません。
あそこに十分な酸素が残っているでしょうか。
酸素の再生装置が取り外されて何週間も経ちます。酸素や気圧が抜けている可能性の方が高いでしょう。
その他に自分が生き抜く可能性があることはないでしょうか。
それは目の前にありました。丘の上の建物。あそこには人がいるかもしれません。この地域一帯の鉱山は役に立たないことがわかって長い時間が経ちましたから、あの建物も廃墟になっているのでしょうか。
タクマは二つのうち、ひとつを選択しなければならないことを知りました。
鉱山の作業場に戻って酸素がまだ十分に残っていることに賭けるか、あの丘の建物に行って何かを見つけるか。
タクマはGPS機能と地図を頼りにその建物のことを調べてみました。
お父さんの鉱山より大きくて人も大勢いた鉱山です。やはり何年も前に、人々はその鉱山を閉鎖して他に行ってしまったようです。数年前までは管理人が常駐していたという記録があります。しかし今も管理人がいるのかどうかはわかりません。
タクマは迷いました。鉱山の作業場に酸素があり、そこに留まることができるのなら、やがてお父さんが助けに来てくれるでしょう。
しかしタクマは荷物を整理してリュクサックを背負うと、丘の上の建物に向かって歩き始めました。さっき見た時に建物の窓から明かりが見えた気がしたのです。
それは死への選択になるかもしれません。でも、あの大きな建物には、たとえ廃墟になっていたとしても、自分を助けてくれる何かが残っているような気がしました。
お父さんやお母さんのいるドームと反対の方向へ行くのは、とても不安なことです。しかし生きるために正しい選択をしたという確信がありました。
できるだけ規則正しく、一直線に建物に向かって歩きます。焦りは禁物です。焦れば焦るほど状況は悪くなってしまうかもしれないと自分に言い聞かせます。
丘のふもとにたどり着いた時、ヘルメットの隅で小さく赤い光が点滅を始めました。はっきりとした異常をコンピューターが認めたのです。タクマは丘を登り始めました。
それほど険しい道のりでもないのに呼吸は乱れ、頭が痛くなってきました。酸素は十分にあるはずです。もちろん、小さな穴からわずかに漏れる空気のために酸素の消費量は増えていると思いますが、体調が悪い原因は他にあるようです。
宇宙服の気圧が下がっているのでしょう。調べてみればわかると思いますが、そんなことがわかっても仕方がありません。何の手立ても打てないのですから。
少しくらいなら気圧も自動で調節ができるのですが、それができなくなったために赤い光が点滅を始めたのです。
あとは自分が建物にたどり着くのが先か、意識を失うのが先かの問題です。
はやる気持ちを押さえ、激しい頭痛と戦いながら、やっと建物の前に来ることができました。自分の体がぐるぐると回るようで、今にも意識を失いそうです。建物の中に思いっきり深呼吸できる快適な部屋があると信じて扉の前に立ちました。
そこでタクマはへなへなと力が抜けました。
目の前の扉を開ける術を知りません。試しに右腕の操作パネルを扉横のモニターに近づけてみましたが、何の反応もありません。
すーっと意識が遠くなり、倒れるタクマを誰かの手が支えてくれました。
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