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壮大がカギをかけた部屋で化粧をしている。
そして自分の顔をじっくりと観察する。
「やめた。いつまでもこんな関係でいられるわけがない」
そう言って鏡に映る自分の顔を口紅で消した。
壮大は約束した駅前で待っていた。
今日は女装をしていない。化粧もしていない。友加里が壮大を見たら驚くだろう。いや、誰かわからないかもしれない。
だけど、これからはありのままの自分で友加里と会うことにした。友加里は怒るかもしれない。二度と壮大とは会わないと言うかもしれない。
だけど、いつまでも女の、偽りの姿で友加里と会い続けるわけにはいかない。
なぜなら、壮大は男として、友加里を好きになったのだから。
「どうしたんだろ」
壮大はスマホを出して時間を見た。約束の時間をかなり過ぎている。さっき電話したばかりだけど、もう一度電話をしてみる。
やっぱり出ない。
近くに停まっているタクシーに行き、乗り込むと友加里のアパートを告げた。
タクシーから降りると、アパートの入り口に行った。
たくさん並んだ郵便受けを見る。
友加里の名前は見つからない。
「おかしいな」
この前会った時に、友加里からこのアパートの2階の部屋だと聞いた。
階段をのぼり、二階の端から端まで歩いたが、どれが友加里の部屋かわからなかった。
壮大はその場に立ち尽くした。
もしかしたら、三階かもしれない。だけど三階の郵便受けにも友加里の名前はなかった。それどころか一階にも四階にもなかった。見落としたのだろうか
そう考えているときに、ドアの一つが開いて若い男が出てきた。
壮大は思い切って男に声をかけた。
「済みません」
男が壮大を見る。
「このアパートの藤森友加里さんを訪ねてきたんですけど、どの部屋か教えてもらえませんか」
「藤森友加里?」
男が怪訝そうな顔をする。
「若い女の人なんですが」
「この階の女の人は205号室の人だけだと思うけど、そんな名前じゃなかったな」
「そうですか」
男は困っている壮大をしり目に、廊下をすたすたと歩き、階段を下りていった。
壮大はとりあえず205号室に行ってみた。
呼び鈴を押す。
中でガサゴソと動く気配があり、しばらくしてドアが開いた。
「あ」
若い女の人だったが、ちょっとけばけばしい友加里とは全然違う人だった。
「何?」
チェーンをかけたドアの向こうから女が不審の目で壮大を見る。
「このアパートの二階にいる藤森友加里さんを訪ねてきたのですが、部屋が分からなくて」
「藤森? 友加里って女?」
「二十歳の女の子です」
「そんな子いないよ。藤森って人ならお隣にいたけど」
「お隣ですか」
「でも男だよ。それにもういないし」
「いつからいないんですか?」
「二日前に引っ越しの人たちが大勢来て、あっという間にどっかに行っちゃった。何の挨拶もなし」
「藤森って人は本当に男ですか?」
「は? あんまりよく見たことないけど、男」
「そうですか。ありがとうございました」
壮大は落胆して言った。
女は壮大を値踏みするようにじろじろ見てからドアを閉めた。
壮大はアパート入口のところに表示してあったアパートの管理会社に電話してみた。
「206号室の人です。僕は一緒にアルバイトをしている者です。そう、その藤森翔平さん。引っ越し先はわかりますか?」
しばらく話して壮大は電話を切った。
引っ越し先はわからない、元の住所は教えられない、そのほかプライベートなことも教えられないとのことだった。藤森修平という名前の若い男が二日前に引っ越していったことだけはわかった。
壮大はスマホをポケットに入れると、友加里がいたはずのアパートを振り返って見た。
それから途方に暮れて歩き出した。
そして自分の顔をじっくりと観察する。
「やめた。いつまでもこんな関係でいられるわけがない」
そう言って鏡に映る自分の顔を口紅で消した。
壮大は約束した駅前で待っていた。
今日は女装をしていない。化粧もしていない。友加里が壮大を見たら驚くだろう。いや、誰かわからないかもしれない。
だけど、これからはありのままの自分で友加里と会うことにした。友加里は怒るかもしれない。二度と壮大とは会わないと言うかもしれない。
だけど、いつまでも女の、偽りの姿で友加里と会い続けるわけにはいかない。
なぜなら、壮大は男として、友加里を好きになったのだから。
「どうしたんだろ」
壮大はスマホを出して時間を見た。約束の時間をかなり過ぎている。さっき電話したばかりだけど、もう一度電話をしてみる。
やっぱり出ない。
近くに停まっているタクシーに行き、乗り込むと友加里のアパートを告げた。
タクシーから降りると、アパートの入り口に行った。
たくさん並んだ郵便受けを見る。
友加里の名前は見つからない。
「おかしいな」
この前会った時に、友加里からこのアパートの2階の部屋だと聞いた。
階段をのぼり、二階の端から端まで歩いたが、どれが友加里の部屋かわからなかった。
壮大はその場に立ち尽くした。
もしかしたら、三階かもしれない。だけど三階の郵便受けにも友加里の名前はなかった。それどころか一階にも四階にもなかった。見落としたのだろうか
そう考えているときに、ドアの一つが開いて若い男が出てきた。
壮大は思い切って男に声をかけた。
「済みません」
男が壮大を見る。
「このアパートの藤森友加里さんを訪ねてきたんですけど、どの部屋か教えてもらえませんか」
「藤森友加里?」
男が怪訝そうな顔をする。
「若い女の人なんですが」
「この階の女の人は205号室の人だけだと思うけど、そんな名前じゃなかったな」
「そうですか」
男は困っている壮大をしり目に、廊下をすたすたと歩き、階段を下りていった。
壮大はとりあえず205号室に行ってみた。
呼び鈴を押す。
中でガサゴソと動く気配があり、しばらくしてドアが開いた。
「あ」
若い女の人だったが、ちょっとけばけばしい友加里とは全然違う人だった。
「何?」
チェーンをかけたドアの向こうから女が不審の目で壮大を見る。
「このアパートの二階にいる藤森友加里さんを訪ねてきたのですが、部屋が分からなくて」
「藤森? 友加里って女?」
「二十歳の女の子です」
「そんな子いないよ。藤森って人ならお隣にいたけど」
「お隣ですか」
「でも男だよ。それにもういないし」
「いつからいないんですか?」
「二日前に引っ越しの人たちが大勢来て、あっという間にどっかに行っちゃった。何の挨拶もなし」
「藤森って人は本当に男ですか?」
「は? あんまりよく見たことないけど、男」
「そうですか。ありがとうございました」
壮大は落胆して言った。
女は壮大を値踏みするようにじろじろ見てからドアを閉めた。
壮大はアパート入口のところに表示してあったアパートの管理会社に電話してみた。
「206号室の人です。僕は一緒にアルバイトをしている者です。そう、その藤森翔平さん。引っ越し先はわかりますか?」
しばらく話して壮大は電話を切った。
引っ越し先はわからない、元の住所は教えられない、そのほかプライベートなことも教えられないとのことだった。藤森修平という名前の若い男が二日前に引っ越していったことだけはわかった。
壮大はスマホをポケットに入れると、友加里がいたはずのアパートを振り返って見た。
それから途方に暮れて歩き出した。
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