スーパースター

原口源太郎

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 休みが終わり、大学の授業が始まった。昨年はリモートで講義を受けるとか、色々と面倒なことがあったけれど、今年はどうなるのだろう?
 語学の講義を終えて、俺は日向子と教室を出た。
「一緒にオリンピックを見に行く?」
 日向子が悪戯っぽく微笑みながら言った。
「え?」
「冗談よ。でも、友達がオリンピックに出るんでしょ?」
「うん。多分」
「一緒に陸上をやっていたんでしょ?」
「そうだよ」
「何をやっていたの?」
「俺? 言わなかったっけ?」
「いくら訊いても教えてくれなかったじゃない」
「そうだった? それじゃ、内緒」
「えー」
 日向子は不満そうな表情で口を尖らせた。
 俺は隠すつもりはなかったが、大した記録も残せなかった高跳びのことは言い出しにくかった。大学に入ってからはバーを跳んだことは一度もない。
「高跳びだよ。走り高跳び」
「へー」
 日向子は俺の顔を覗きこんだ。
「何だよ」
「何で大学でやらないの?」
「俺は神谷と違って、ただの凡人だからね」
「そっか。うふふふ」
 日向子は顔を伏せて笑った。
「何だ、その不気味な笑いは」
「北村君が高跳びをしている姿を想像して」
「どうせ間抜けな姿だよ」
「んーん。もしかしたら、すごく格好良かったんじゃないかと思って」
「バーカ」
 俺は高校時代の終わりごろ、受験勉強に明け暮れながら、グランドを眺めてはあのバーをもう一度跳んでみたいと思っていた。だけど大学に入ってからも競技を続けるつもりはなかった。三年の時のインターハイで、俺の跳べなかったバーを他の学校の一年生や二年生が跳び越えていくのを見るのは辛かった。
 次の講義を日向子に任せて、俺は大学のキャンパスを後にした。

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