Love letter

１１

「あった！」
　パソコンの画面は、銀杏の葉の間に手紙が引っかかっているのを映し出している。
「でも手紙をどうやって回収するんだ？」
「待ってろ」
　そう言って森下はドローンのコントローラーを操作した。
　銀杏の木の近くを飛んでいたドローンが、猛烈な勢いで森下たちの方向に向かってくる。
　森下はすぐ近くにドローンを着陸させ、その機体の周りに粘着部が外側になるようにガムテープを巻いた。
「これに付ける」
　そう言って森下は再びドローンを発進させた。

　先程手紙を見つけたあたりをドローンが旋回している。
「どうだ？」
　森下が尋ねた。
「あった」
「よし。少しずつ近づいてく」
　森下は慎重にコントローラーを操る。
　パソコンの画面には、ドローンがプロペラで葉っぱを飛ばしながら手紙に近づいていく様子が写っている。
　突然、生い茂る葉の中から、ぬっと手が出てきた。
「うわ！」
　大崎と河原がびっくりして同時に叫んだ。
　画面の中で大雄が葉っぱの間から顔を出し、手紙へと手を伸ばす。
　大雄が手紙を掴むよりも早く、ドローンが手紙を機体に貼りつけて離脱した。
「くそ！」
　大雄が無念の表情を浮かべる。
「村沢！　取られた！　ドローンだ！」
　木の下にいる村沢に向かって叫んだ。

　村沢はドローンを追って走り出した。
　平も慌てて村沢を追う。
　ドローンはグラウンドを横切って飛んでいく。手紙が剥がれ落ちないようにゆっくりと進んでいるのですぐに追いついた。村沢はドローンの下に来て上を見ながら追いかける。
　そこに平がタックルした。
　二人はグラウンドに倒れる。
「何する！」
「邪魔するな」
「お前こそ邪魔するな、離せ！」
「離さん」
　村沢と平はグラウンドでもつれ合う。
　そこに帰宅するサッカー部の部員たちが騒ぎを聞きつけてやってくる。中にはマイボールをネットに入れて肩に掛けている者もいる。
「俺のことはいいから。ドローンを追いかけろ！」
　サッカー部員たちがドローンを追いかけて走る。
　そこに木から下りた大雄がやって来て、村沢と平を引き離した。
「なんだよ、お前ら、いい加減にしろ」
　そう言い捨てて大雄もドローンを追って走り出した。