25 / 27
24
しおりを挟む
大体のことがわかった。
細胞を活性化させる薬の開発のために、岡部は大量のマウスを飼育し動物実験を行っていたのだ。
薬の調合を微妙に変えてマウスに投与していた。さらにそれらのマウスの中から薬の効果が出ているマウス、強めの投与に耐えられるマウス、それに動きの速いマウス、学習能力の高いマウス、体の大きいマウス、体温の高いマウスなど、様々なマウスを交配させて遺伝的にも強いマウス、薬を受け入れやすいマウスを作り上げていったらしい。そうして何世代にもわたって薬を投与し続け、進化したマウスを生みだしていく中で生まれたのがQ-0063というマウスだった。
親のマウスは大型犬ほどにまで成長して死んだ。Q-0063は最終的に人間の大人ほどの大きさになった。そしてその脳も能力も。
人間並みの知能を持ったマウスが檻を出て岡部を殺し、河村や鈴木たちを次々と殺していった。何のために殺したのかはわからない。
岡部の作り上げた薬は人間にとって有益なものかもしれない。しかしそんなバケモノを作り出すような薬やデータを残しておくことはできない。
僕は電源の入ったままのパソコンを持ち上げると、床に叩きつけた。
僕は外に出た。裏口に近い所に、ボイラー用の燃料タンクがある。
配管をモンキーレンチで叩き壊し、近くにあったバケツに灯油を入れた。
二階に行き、ファイル棚や机の上に灯油を撒く。二階へ上る階段にも撒いていく。
台所のガスレンジで紙に火を点けると、階段の灯油の上に放り投げた。
炎はたちまち広がり、二階へと駆け上っていく。
僕は屋敷を出てバイクのところに戻った。
柵を乗り越え、バイクにまたがる。
二階の窓ガラスが炎を映し出し、黒煙が昇るのを確認してから僕はバイクのエンジンをかけた。
自宅へとバイクを走らせながら考えていた。
殺人者の正体はわかった。人間に変装するというわけにはいかないから、日中はどこかに身を潜めていなければならない。奴はどこにいるのだろう。
田辺はもう外国に逃げてしまったのだろうか。そうだとすると残されたおとどけもののことを知る人間は僕一人だけになる。Q-0063と呼ばれたネズミはきっと僕を殺しに来る。僕は外国に逃げ出す術を知らない。いずれ殺人者と戦わなければならない。
その時、おとどけもののことを知るもう一人の人物の存在に気が付いた。
綾。
あいつは僕が綾と会っていたことを知っているだろうか? 僕が綾におとどけものの仕事のことを話したことは?
胸騒ぎを覚え、路肩にバイクを停めた。すでに都内に入り、道は多くの車で溢れている。
スマホを出して綾に電話する。
「はい」
「今、自宅?」
「はい」
「これから綾のところに行く。話さなければならないことがある。僕が行くまで」
「きゃあ」
電話の向こうで綾の悲鳴が聞こえた。
「綾? 綾!」
僕の呼びかけに応答はなかった。
僕は夢中でバイクを走らせた。
まさかこんな白昼堂々と綾のところに現れるとは思わなかった。綾に悲鳴を上げさせたのは例の奴に違いない。
無事でいてくれ。
そう願って焦るばかりだった。
やっと綾のアパートが見えた。
僕はアパートの入り口に突っ込むようにバイクを停め、二階への階段を駆け上った。綾の部屋は知らないが、二階にある事は知っている。
二階のひとつの部屋の前に人だかりができていた。
「綾は?」
僕は廊下に立つ人たちに向かって声を出した。
「大学のほうへ走っていったよ。ぬいぐるみが追いかけていった」
アパートの住人らしい男が言った。
僕はバイクに飛び乗り、大学を目指した。ズボンの後ろのベルトにはモンキーレンチをさしてある。いざとなったらこれを使う。
細胞を活性化させる薬の開発のために、岡部は大量のマウスを飼育し動物実験を行っていたのだ。
薬の調合を微妙に変えてマウスに投与していた。さらにそれらのマウスの中から薬の効果が出ているマウス、強めの投与に耐えられるマウス、それに動きの速いマウス、学習能力の高いマウス、体の大きいマウス、体温の高いマウスなど、様々なマウスを交配させて遺伝的にも強いマウス、薬を受け入れやすいマウスを作り上げていったらしい。そうして何世代にもわたって薬を投与し続け、進化したマウスを生みだしていく中で生まれたのがQ-0063というマウスだった。
親のマウスは大型犬ほどにまで成長して死んだ。Q-0063は最終的に人間の大人ほどの大きさになった。そしてその脳も能力も。
人間並みの知能を持ったマウスが檻を出て岡部を殺し、河村や鈴木たちを次々と殺していった。何のために殺したのかはわからない。
岡部の作り上げた薬は人間にとって有益なものかもしれない。しかしそんなバケモノを作り出すような薬やデータを残しておくことはできない。
僕は電源の入ったままのパソコンを持ち上げると、床に叩きつけた。
僕は外に出た。裏口に近い所に、ボイラー用の燃料タンクがある。
配管をモンキーレンチで叩き壊し、近くにあったバケツに灯油を入れた。
二階に行き、ファイル棚や机の上に灯油を撒く。二階へ上る階段にも撒いていく。
台所のガスレンジで紙に火を点けると、階段の灯油の上に放り投げた。
炎はたちまち広がり、二階へと駆け上っていく。
僕は屋敷を出てバイクのところに戻った。
柵を乗り越え、バイクにまたがる。
二階の窓ガラスが炎を映し出し、黒煙が昇るのを確認してから僕はバイクのエンジンをかけた。
自宅へとバイクを走らせながら考えていた。
殺人者の正体はわかった。人間に変装するというわけにはいかないから、日中はどこかに身を潜めていなければならない。奴はどこにいるのだろう。
田辺はもう外国に逃げてしまったのだろうか。そうだとすると残されたおとどけもののことを知る人間は僕一人だけになる。Q-0063と呼ばれたネズミはきっと僕を殺しに来る。僕は外国に逃げ出す術を知らない。いずれ殺人者と戦わなければならない。
その時、おとどけもののことを知るもう一人の人物の存在に気が付いた。
綾。
あいつは僕が綾と会っていたことを知っているだろうか? 僕が綾におとどけものの仕事のことを話したことは?
胸騒ぎを覚え、路肩にバイクを停めた。すでに都内に入り、道は多くの車で溢れている。
スマホを出して綾に電話する。
「はい」
「今、自宅?」
「はい」
「これから綾のところに行く。話さなければならないことがある。僕が行くまで」
「きゃあ」
電話の向こうで綾の悲鳴が聞こえた。
「綾? 綾!」
僕の呼びかけに応答はなかった。
僕は夢中でバイクを走らせた。
まさかこんな白昼堂々と綾のところに現れるとは思わなかった。綾に悲鳴を上げさせたのは例の奴に違いない。
無事でいてくれ。
そう願って焦るばかりだった。
やっと綾のアパートが見えた。
僕はアパートの入り口に突っ込むようにバイクを停め、二階への階段を駆け上った。綾の部屋は知らないが、二階にある事は知っている。
二階のひとつの部屋の前に人だかりができていた。
「綾は?」
僕は廊下に立つ人たちに向かって声を出した。
「大学のほうへ走っていったよ。ぬいぐるみが追いかけていった」
アパートの住人らしい男が言った。
僕はバイクに飛び乗り、大学を目指した。ズボンの後ろのベルトにはモンキーレンチをさしてある。いざとなったらこれを使う。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
それなりに怖い話。
只野誠
ホラー
これは創作です。
実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。
本当に、実際に起きた話ではございません。
なので、安心して読むことができます。
オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。
不定期に章を追加していきます。
2026/1/1:『いえい』の章を追加。2026/1/8の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/31:『たこあげ』の章を追加。2026/1/7の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/30:『ねんがじょう』の章を追加。2026/1/6の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/29:『ふるいゆうじん』の章を追加。2026/1/5の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/28:『ふゆやすみ』の章を追加。2026/1/4の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/27:『ことしのえと』の章を追加。2026/1/3の朝8時頃より公開開始予定。
2025/12/26:『はつゆめ』の章を追加。2026/1/2の朝8時頃より公開開始予定。
※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる