26 / 27
25
しおりを挟む
大学の構内を歩く人は疎らだった。僕は今日が休日だという事に気が付いた。
近くを歩く学生を捕まえて、大きなぬいぐるみが来なかったか尋ねた。
「C棟のほうに走っていきました」
僕はそちらにバイクを走らせた。
C棟と呼ばれる建物の外階段を綾が上っていくのが見えた。
階段の下にバイクを停めると上に向かって叫ぶ。
「綾!」
ズボンのモンキーレンチを手に持ち、階段を駆け上っていく。
二階、三階、四階。
息が苦しくなって足を止めた。
その時、何か嫌な臭いがした。
僕は辺りに注意を払い身構える。
突然、上から何かが降ってきた。
狭い階段の踊り場で後ろに飛び退く。
目の前に巨大なネズミが二本の足で立っていた。
赤い目をして、口からだらだらとよだれを垂らしている。長いしっぽがビクビクと痙攣するように波打ち、体を覆う毛のあちこちが抜け落ちて血が滲んでいる。
ネズミが口を開け、こちらに突進してきた。
僕は慌てて身をかわし、階段を転げ落ちるように下の踊り場に逃げた。
「殺してやる」
ネズミは聞き取りにくいしわがれた声でそう言い、ゆっくりと階段を下りてくる。
僕はモンキーレンチを持つ手に力を込めた。
「なぜ殺す? なぜみんなを殺した!」
「人間の上に立つ者は神しかいない。私は人間を越えた。神になったのだ。私が人間を支配する」
「バカな。お前は人間に作られたんだ」
「だから殺す。私は私が支配すべき人間に作られたのはない。そんな生命など存在しない」
ネズミは苦しそうにゼイゼイと荒い息をしながら話す。
「その体はどうした? 薬とホルモンの投与を受けなくなって、お前は肉体を維持できなくなっている」
ネズミは自分の手を上げ、目の前で見た。
掌の皮膚が裂け、血が流れ出している。
僕も目の前の巨大なネズミの体に異変が起きているのは今、気が付いたところだった。
「まさか。それでこんなに苦しいのか? 私は死ぬのか?」
そしてネズミは赤く濁った眼で僕を睨む。
「なぜ私を作ったのだ。私は知能などいらなかった。ただの小動物でよかったのに」
ネズミは目を閉じ、ふらふらとバランスを崩した。その刹那、カッと目を見開き、こちらに向かって跳んだ。
夢中でモンキーレンチを振り回しながら身をかわそうとした。
ネズミの一撃をかわしきれずに、僕は床に叩きつけられた。ただ、モンキーレンチを持つ手にはしっかりとした手応えがあった。
モンキーレンチで叩きつけられたネズミは、額を割られて血を吹き出しながら踊り場の柵に激突し、そのまま向こうへと落ちて行った。
「ぎー!」
悲鳴を上げて落ちたネズミは、地面に叩きつけられてスイカのように爆ぜて粉々になった。
「綾」
綾が青ざめた顔でゆっくりと階段を下りてきた。
「怪我はないか?」
僕の問いかけに綾は首を縦に振る。
「清原さんは大丈夫ですか?」
「大丈夫だ。これで全て終わったよ」
僕が下を見下ろすと、赤い血の海の中で粉々になった肉片がまだビクビクと蠢いていた。
近くを歩く学生を捕まえて、大きなぬいぐるみが来なかったか尋ねた。
「C棟のほうに走っていきました」
僕はそちらにバイクを走らせた。
C棟と呼ばれる建物の外階段を綾が上っていくのが見えた。
階段の下にバイクを停めると上に向かって叫ぶ。
「綾!」
ズボンのモンキーレンチを手に持ち、階段を駆け上っていく。
二階、三階、四階。
息が苦しくなって足を止めた。
その時、何か嫌な臭いがした。
僕は辺りに注意を払い身構える。
突然、上から何かが降ってきた。
狭い階段の踊り場で後ろに飛び退く。
目の前に巨大なネズミが二本の足で立っていた。
赤い目をして、口からだらだらとよだれを垂らしている。長いしっぽがビクビクと痙攣するように波打ち、体を覆う毛のあちこちが抜け落ちて血が滲んでいる。
ネズミが口を開け、こちらに突進してきた。
僕は慌てて身をかわし、階段を転げ落ちるように下の踊り場に逃げた。
「殺してやる」
ネズミは聞き取りにくいしわがれた声でそう言い、ゆっくりと階段を下りてくる。
僕はモンキーレンチを持つ手に力を込めた。
「なぜ殺す? なぜみんなを殺した!」
「人間の上に立つ者は神しかいない。私は人間を越えた。神になったのだ。私が人間を支配する」
「バカな。お前は人間に作られたんだ」
「だから殺す。私は私が支配すべき人間に作られたのはない。そんな生命など存在しない」
ネズミは苦しそうにゼイゼイと荒い息をしながら話す。
「その体はどうした? 薬とホルモンの投与を受けなくなって、お前は肉体を維持できなくなっている」
ネズミは自分の手を上げ、目の前で見た。
掌の皮膚が裂け、血が流れ出している。
僕も目の前の巨大なネズミの体に異変が起きているのは今、気が付いたところだった。
「まさか。それでこんなに苦しいのか? 私は死ぬのか?」
そしてネズミは赤く濁った眼で僕を睨む。
「なぜ私を作ったのだ。私は知能などいらなかった。ただの小動物でよかったのに」
ネズミは目を閉じ、ふらふらとバランスを崩した。その刹那、カッと目を見開き、こちらに向かって跳んだ。
夢中でモンキーレンチを振り回しながら身をかわそうとした。
ネズミの一撃をかわしきれずに、僕は床に叩きつけられた。ただ、モンキーレンチを持つ手にはしっかりとした手応えがあった。
モンキーレンチで叩きつけられたネズミは、額を割られて血を吹き出しながら踊り場の柵に激突し、そのまま向こうへと落ちて行った。
「ぎー!」
悲鳴を上げて落ちたネズミは、地面に叩きつけられてスイカのように爆ぜて粉々になった。
「綾」
綾が青ざめた顔でゆっくりと階段を下りてきた。
「怪我はないか?」
僕の問いかけに綾は首を縦に振る。
「清原さんは大丈夫ですか?」
「大丈夫だ。これで全て終わったよ」
僕が下を見下ろすと、赤い血の海の中で粉々になった肉片がまだビクビクと蠢いていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
それなりに怖い話。
只野誠
ホラー
これは創作です。
実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。
本当に、実際に起きた話ではございません。
なので、安心して読むことができます。
オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。
不定期に章を追加していきます。
2026/1/1:『いえい』の章を追加。2026/1/8の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/31:『たこあげ』の章を追加。2026/1/7の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/30:『ねんがじょう』の章を追加。2026/1/6の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/29:『ふるいゆうじん』の章を追加。2026/1/5の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/28:『ふゆやすみ』の章を追加。2026/1/4の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/27:『ことしのえと』の章を追加。2026/1/3の朝8時頃より公開開始予定。
2025/12/26:『はつゆめ』の章を追加。2026/1/2の朝8時頃より公開開始予定。
※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる