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「やっぱり乗ってこないよ」
「他の車両に乗っ、た、の、か、も」
ぎゅうぎゅうに押されて夏香の声がだんだんと苦しげになる。ドアから無理矢理に人が電車に乗り込んでくるからだ。ドアが閉まればまた少し楽になる。
いつも雪美が乗る駅に着くまでに夏香と優樹菜は土曜日に雪美の母からの電話について再度話していた。土曜日からお互いに連絡取り合っている。雪美の身の上に何かあったのではないか? いくら電話をしても繋がらないし。
だから今朝の関心事は雪美がこの電車に乗ってくるかこないかだった。乗ってこないのなら雪美はどうしたのか?
程なくして二人は満員電車から解放されて路上の人となった。
「雪美どうしたのかな」
夏香が空を見上げるようにして言った。
「誰かいい人にさらわれたんじゃない?」
「まさか」
「病気? 怪我? 身内の不幸?」
「なぜ電話の電源を切ってる?」
「うーん、電話を忘れて出かけたとか?」
「おっはよう」
二人は後ろから声をかけられて振り返った。
「あれ、雪美は?」
声をかけてきたのはクラスメイトだった。
「わからない。風邪かな?」
「お腹壊して下痢とか」
優樹菜の言葉に夏香とクラスメイトは言葉を失った。
朝、弁当を前にして三人がテーブルについている時、雪美は思い切って昨日の料理をしてみたいという考えを言ってみた。その意見は意外とすんなり通った。ただコンロが使えるかどうかわからないし、調味料もないとのことだった。
雪美は台所に備え付けの棚の扉を開けてみた。
埃だらけで、まず初めに大掃除から始めなければならないと知った。
食事後にいざ掃除を始めて見ると、そのつもりに積もった埃が舞い上がり砂嵐のようになった。窓を勝手に開けてはいけないと言われているので雪美は這う這うの体で台所から逃げ出した。
二人の男に助けを求めるとクロは「いやだいやだ」と言って笑って逃げるし、クラは聞こえないふりをしていつもの仏頂面で動かない。
雪美が口を富士山のように尖らせるとクロはクラに「頼む」と言葉をかけて家を逃げ出していった。
渋々クラが立ち上がって台所に向かう。表情に出ていないが、そのノロノロとした動作が物語っている。
「すみません、わがまま言って」
前を行くクラの背中を見ながら雪美が済まなさそうに言った。
「いいよ。うわっ、すげえ。ちょっと支度してこよう」
台所の惨状を見たクラが引き返す。雪美も後に続く。
二人はタオルを帽子のように頭に巻き、マスクを付けた上に布で顔のほとんどを覆った。
「これなら埃吸わないし、外から誰かに見られたとしても俺たちが誰かわからないだろう」
そう言って台所に戻ったクラは窓を全開にした。
それからの三時間、二人は台所で奮闘した。
「あー久しぶりに運動したって感じ」
雪美は額の汗を拭きながら言った。
「じゃ、料理期待してるから」
クラはそう言い残して台所を出ていった。
「えー、期待されても困るんだけど」
雪美の発した言葉はクラに届かなかった。
クッキーやドーナッツなら作ったことあるんだけど、食事といえるものは・・・・
「他の車両に乗っ、た、の、か、も」
ぎゅうぎゅうに押されて夏香の声がだんだんと苦しげになる。ドアから無理矢理に人が電車に乗り込んでくるからだ。ドアが閉まればまた少し楽になる。
いつも雪美が乗る駅に着くまでに夏香と優樹菜は土曜日に雪美の母からの電話について再度話していた。土曜日からお互いに連絡取り合っている。雪美の身の上に何かあったのではないか? いくら電話をしても繋がらないし。
だから今朝の関心事は雪美がこの電車に乗ってくるかこないかだった。乗ってこないのなら雪美はどうしたのか?
程なくして二人は満員電車から解放されて路上の人となった。
「雪美どうしたのかな」
夏香が空を見上げるようにして言った。
「誰かいい人にさらわれたんじゃない?」
「まさか」
「病気? 怪我? 身内の不幸?」
「なぜ電話の電源を切ってる?」
「うーん、電話を忘れて出かけたとか?」
「おっはよう」
二人は後ろから声をかけられて振り返った。
「あれ、雪美は?」
声をかけてきたのはクラスメイトだった。
「わからない。風邪かな?」
「お腹壊して下痢とか」
優樹菜の言葉に夏香とクラスメイトは言葉を失った。
朝、弁当を前にして三人がテーブルについている時、雪美は思い切って昨日の料理をしてみたいという考えを言ってみた。その意見は意外とすんなり通った。ただコンロが使えるかどうかわからないし、調味料もないとのことだった。
雪美は台所に備え付けの棚の扉を開けてみた。
埃だらけで、まず初めに大掃除から始めなければならないと知った。
食事後にいざ掃除を始めて見ると、そのつもりに積もった埃が舞い上がり砂嵐のようになった。窓を勝手に開けてはいけないと言われているので雪美は這う這うの体で台所から逃げ出した。
二人の男に助けを求めるとクロは「いやだいやだ」と言って笑って逃げるし、クラは聞こえないふりをしていつもの仏頂面で動かない。
雪美が口を富士山のように尖らせるとクロはクラに「頼む」と言葉をかけて家を逃げ出していった。
渋々クラが立ち上がって台所に向かう。表情に出ていないが、そのノロノロとした動作が物語っている。
「すみません、わがまま言って」
前を行くクラの背中を見ながら雪美が済まなさそうに言った。
「いいよ。うわっ、すげえ。ちょっと支度してこよう」
台所の惨状を見たクラが引き返す。雪美も後に続く。
二人はタオルを帽子のように頭に巻き、マスクを付けた上に布で顔のほとんどを覆った。
「これなら埃吸わないし、外から誰かに見られたとしても俺たちが誰かわからないだろう」
そう言って台所に戻ったクラは窓を全開にした。
それからの三時間、二人は台所で奮闘した。
「あー久しぶりに運動したって感じ」
雪美は額の汗を拭きながら言った。
「じゃ、料理期待してるから」
クラはそう言い残して台所を出ていった。
「えー、期待されても困るんだけど」
雪美の発した言葉はクラに届かなかった。
クッキーやドーナッツなら作ったことあるんだけど、食事といえるものは・・・・
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