私はあなたに恋をしたの?

原口源太郎

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 刑事の吉田と岡本が居間に入ってきて昨夜からそこにいる刑事に交代を告げた。
「やっぱり犯人からは何の連絡もありませんね」
 眠そうな目をした刑事が言った。
「ん、ご苦労さん」
 吉田が二人の刑事をねぎらった。
 夜をその場で過ごした刑事が立ち上がると、吉田と岡本がそこに座った。
「犯人からの連絡はもう無いかもしれませんね」
 岡本が吉田に言う。
「そうなるとやばいな」
「すでに殺さ」
 そこに盆を持って友里恵が部屋に入ってきた。慌てて口を塞いだ岡本が友里恵を見る。どうやら会話を聞いてはいなかったようだ。
「何か召し上がりますか?」
 二人の前にお茶の入った湯飲みを置きながら尋ねる。
「いえ、どうぞお構いなく」
 吉田が頭を下げて言った。
「娘は無事でいるのでしょうか」
「そうですね・・・・」
 吉田は返事に困ってしまった。犯人からはあれ以来連絡がないし、さらわれた娘に関しては姿が見えなくなってからの情報が何もない。
「刑事さんだってわかりませんよね。済みません」
 友里恵は部屋を出ていった。
「さすがに落ち着いていますね」
「旦那はどうしてる?」
「さあ、私たちの邪魔をしちゃいけないと思っているんじゃないですか。この家にはいるようです」
「そうか」
「娘はやっぱり生きていないでしょうか?」
 岡本は少し声のトーンを落として尋ねる。
「さあ、どうかな。このまま犯人から何の連絡もないとなると心配だが」
 吉田は素っ気なく言ってお茶を啜った。

「もう二時間になるぞ」
 日に焼けた男が眉を曇らせて大石という雪美の見張り役に言った。
 雪美が料理をすると言って台所に姿を消してから二時間以上経っている。
「大丈夫かな?」
「覗くなと言ったけど、ちょっと心配だな」
 台所からはガサゴソと奇妙な音がたまに聞こえてくるから逃げ出したわけではない。
「ちょっと見てきますか?」
「シチューを作るとか言ってたけど、あんなもの材料を切って煮てシチューの素を入れれば完成だろ? それらしい匂いもしてこないぞ」
「見てきます」
 大石が立ち上がった。
 雪美は台所で何かごそごそやっていた。
「どう?」
「きゃあ」
 大石の声に雪美は悲鳴を上げて振り返った。
「ヤダ、見ちゃダメ」
「まだ皮むきやってんの?」
 大石が近くに来るまで気が付かなかったほどだから、余程熱中していたのだろう。
 雪美がすねたそぶりを見せると、大石は水道のところに行き、手を洗った。戻ってくると雪美の前に手を差し出す。
 雪美から包丁を受け取ると、するするとジャガイモの皮をむき始めた。
「わ、どうして? 上手い」
「いちよう一人暮らし長いし」
「じゃ、シチューはお願い。私はサラダを作るから」
「え?」
 大石は諦めてシチューを作ることにした。雪美に任せていたら明日までシチューは食べられないだろう。

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