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「何をやっとるんだ、あいつは」
犯人と一緒に銀行へ入っていく岡本を見て、吉田はあきれたように言った。
しばらくすると二人が銀行から出てきて、犯人は岡本に何か言っているようだった。そして犯人が走り出す。岡本は短く考えてから吉田たちのところへ駆けてきた。
「今度つけてきたら娘を殺すと」
岡本は荒い息を吐きながら言った。
「バカ野郎、他の奴につけさせろ」
吉田は隣の刑事に言った。
デパートに入って二階の婦人服売り場近くの隅で足立はさりげなく女とバッグを交換した。同じ柄のバッグだった。女はバッグを持って脱衣所に入った。
足立が男を待たせてあるトイレに行くと、若い男はまだいた。
「このデパートにはもういないと思うが、そう遠くにも行っていないと思う。しつこい女だ」
そう言いながら足立はズボンと服を脱いだ。男にもバッグから取り出した同じ服とズボンを渡す。
男が着替え終わるとカツラと帽子、マスクとサングラスを渡した。
男の用意が整うと、足立はさらに一万円札を四枚取り出した。
「約束の残り四万。女を撒いてきてくれたらもう五万だ。俺はここにいるから」
「はい」
男は札を受け取るとポケットに入れた。
「おっと、このバッグも持っていってくれ」
足立は男の服や荷物が入ったバッグを男に渡した。
男はトイレから出ていった。
残った足立はカツラやサングラスを取り、別の帽子を被った。着ていた服やカツラを紙袋に放り込むと急いでトイレを出た。
外で女と合流すると二人は急ぎ足で歩き、デパートから少し離れたところでタクシーを止めた。
二人を乗せたタクシーは通りの車の中に紛れていった。
「タクシー乗り継いできたし、経費もそれなりに掛かったからね。それらは引いてある。これがお前の取り分」
足立が紙袋を大石の前に差し出した。
大石は黙って紙袋を受け取る。
「中を確かめなくていいのか?」
「いいです」
「俺たちがいた痕跡は消したな?」
「できるだけきれいに掃除はしました」
「よし、それじゃ行くか」
足立が腰を上げた。大石と雪美が続く。
少し離れた場所に停められた車にはすでに一人の女が乗っていた。
日はすっかり落ちている。
高架下の人気のないところに車は停められた。
「ここをまっすぐ行って大きな通りに出たら右だ。しばらく行くと駅の看板がある。今まで悪かったな」
運転席の足立が言った。
「気を付けてな」
大石も言った。
雪美が降りると車は走り出した。セーラー服姿の雪美は赤いテールランプが見えなくなるまで見送った。
何だったのだろう、今までの数日間は。
別れ際に返されたスマホは電池切れで使えなかった。早くお父さんやお母さんの顔が見たいと思うと、知らず知らずのうちに歩く足が速くなった。
大通りに出ると多くの車が行きかい、知らない制服を着た高校生たちが歩いている。
ふと雪美は大石のことを思った。
大石という名前しか知らない。大学生で、お母さんは仕送りするために一生懸命働いている。本人もアルバイトを掛け持ちしているけれど、たまった家賃が払えなくて。
まとまったお金が手に入ったら大学を辞めて遠くへ行く。わざわざ滞納した家賃を払ってから逃げるというのが大石の性格を表しているような気がして、なんだかおかしくなった。
なぜ大石のことが頭に浮かんだのだろう。私はあの人に惹かれてる? いや、そんなことはない。
でもどうして? この寂しいような気持ち。
犯人と一緒に銀行へ入っていく岡本を見て、吉田はあきれたように言った。
しばらくすると二人が銀行から出てきて、犯人は岡本に何か言っているようだった。そして犯人が走り出す。岡本は短く考えてから吉田たちのところへ駆けてきた。
「今度つけてきたら娘を殺すと」
岡本は荒い息を吐きながら言った。
「バカ野郎、他の奴につけさせろ」
吉田は隣の刑事に言った。
デパートに入って二階の婦人服売り場近くの隅で足立はさりげなく女とバッグを交換した。同じ柄のバッグだった。女はバッグを持って脱衣所に入った。
足立が男を待たせてあるトイレに行くと、若い男はまだいた。
「このデパートにはもういないと思うが、そう遠くにも行っていないと思う。しつこい女だ」
そう言いながら足立はズボンと服を脱いだ。男にもバッグから取り出した同じ服とズボンを渡す。
男が着替え終わるとカツラと帽子、マスクとサングラスを渡した。
男の用意が整うと、足立はさらに一万円札を四枚取り出した。
「約束の残り四万。女を撒いてきてくれたらもう五万だ。俺はここにいるから」
「はい」
男は札を受け取るとポケットに入れた。
「おっと、このバッグも持っていってくれ」
足立は男の服や荷物が入ったバッグを男に渡した。
男はトイレから出ていった。
残った足立はカツラやサングラスを取り、別の帽子を被った。着ていた服やカツラを紙袋に放り込むと急いでトイレを出た。
外で女と合流すると二人は急ぎ足で歩き、デパートから少し離れたところでタクシーを止めた。
二人を乗せたタクシーは通りの車の中に紛れていった。
「タクシー乗り継いできたし、経費もそれなりに掛かったからね。それらは引いてある。これがお前の取り分」
足立が紙袋を大石の前に差し出した。
大石は黙って紙袋を受け取る。
「中を確かめなくていいのか?」
「いいです」
「俺たちがいた痕跡は消したな?」
「できるだけきれいに掃除はしました」
「よし、それじゃ行くか」
足立が腰を上げた。大石と雪美が続く。
少し離れた場所に停められた車にはすでに一人の女が乗っていた。
日はすっかり落ちている。
高架下の人気のないところに車は停められた。
「ここをまっすぐ行って大きな通りに出たら右だ。しばらく行くと駅の看板がある。今まで悪かったな」
運転席の足立が言った。
「気を付けてな」
大石も言った。
雪美が降りると車は走り出した。セーラー服姿の雪美は赤いテールランプが見えなくなるまで見送った。
何だったのだろう、今までの数日間は。
別れ際に返されたスマホは電池切れで使えなかった。早くお父さんやお母さんの顔が見たいと思うと、知らず知らずのうちに歩く足が速くなった。
大通りに出ると多くの車が行きかい、知らない制服を着た高校生たちが歩いている。
ふと雪美は大石のことを思った。
大石という名前しか知らない。大学生で、お母さんは仕送りするために一生懸命働いている。本人もアルバイトを掛け持ちしているけれど、たまった家賃が払えなくて。
まとまったお金が手に入ったら大学を辞めて遠くへ行く。わざわざ滞納した家賃を払ってから逃げるというのが大石の性格を表しているような気がして、なんだかおかしくなった。
なぜ大石のことが頭に浮かんだのだろう。私はあの人に惹かれてる? いや、そんなことはない。
でもどうして? この寂しいような気持ち。
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