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ここはどこ?私は私…だよね?
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スーパーに行こうと玄関で靴を履いた所だった。
酷い目眩で意識がきゅーっと遠退いていく。
あ、貧血かな。
ふっと眩しさに目が覚めたけど、まだ目の前は白くてくらくらしてる。何度か貧血で意識を失った経験からすぐには起き上がらずに、目をつむって暫く安静にする。
玄関で倒れた割には身体に痛みが無い…というか…背中が柔らかい。それに蒸れた土と草の匂い?え?
ぱちっと目を開いて横になったままキョロキョロと辺りを見回して驚いた。
「なに…ここ…」
我ながら消え入りそうな声。逆に心臓はバックンバックンと煩く脈打ってる。
何ここ死後の世界?!
もしや貧血じゃなくて心筋梗塞とか脳梗塞だった?
ああ…こんなに元気に心臓が動いてるのに私死んじゃったのかなぁ。
左を向けばうちの15帖のリビングにも納まりそうな小さな泉。
右を向けば泉を囲うように拓けた花畑…というより草の間にぽつぽつと小さな白や黄色の花のある原っぱと更にそれを囲う森の木々。
なんだか泉に斧を落としてみたくなる。妖精とか精霊とかがいそうな雰囲気。
どこか神聖で清涼な空気に、いくらか気分が落ち着いてゆっくり起き上がる。あれ?なんだか服に違和感…。
(ウエストがやけに緩い?!)
30も後半になって、ウエスト付いた肉が全然落ちなくなったのに!なぜかいきなりくびれてるし!!
というかなんだか肌にもやたらハリがある…ハッ!もしかして!
「やっぱり!若返ってるう!?」
何をしたかって?ええ、ブラジャーを外したんですよ。無駄に巨乳で重力に逆らえなかった胸が、痩せていた胸元からパンッと張り出すように盛り上がっている。
どこで確認してるんだと思われるけど、顔以外で1番年齢を感じる場所って重量に逆らえない部分だと思うし。
ちょっと泉で顔も確認したかったけど泉に引きずり込むナニカがいたら怖いからやめた。
冷静になると外でなにやってるんだかって感じだけど、人どころか虫の1匹すらいない場所だし服の上から覗いてチェックしただけだから許してほしい。
ブラを付けてそれからも変化を確認すべく自分の身体を見回していてアレ?と気が付いた。
手の甲にあった黒子が無い。(ついでに小ジワも節くれも無い)え?他の場所の黒子も子供の時から消えない傷痕も生まれ付きのシミも無い。それどころか産毛すら無くなってる。
「え?何で?」
慌てて頭を触る。ほ…髪はあった。眉毛…睫毛もある。肌のザラつきなんかは全くない。赤ちゃんみたいにつるつるすべすべ。
「不思議…若返っただけにしては肌が綺麗過ぎる」
何というか…若い時の私をコピーしたけど、細部までは再現出来なかったって感じ?それか不要な部分は省いたとか?
耳を触ったらピアスホールの感覚も無いし。
何だか変な所が欠損してそうで怖いなぁ。
私の夢だからって可能性もあるけど明晰夢なんて見た事無いし、こんなに感覚があるなんて怖い。
「女…?」
「ひぇっ?!」
何の気配も無かったのに背後から声が聞こえてビクーンと身体が跳ねた。
恐る恐る後ろを向くとそこには金髪碧眼のイケメン白人男性…では無く普通に黒褐色の髪と瞳の日本人的な容姿の男性がいた。
いや、普通って所は訂正する。イケメンなんて表現は失礼ってくらい、かなり美形な日本人ぽい男性がいた。
服装はスリーピースにロングブーツとハンチング帽と、お貴族様の狩りみたいな格好だけど、日本人がこんな格好をしていてもそこまでおかしいって事はないと思う。何かの撮影かコスプレ?とは思うけど。
だからやっぱりここは日本で彼は日本人なのかな。
でもそれならばなんで私はこんな場所に倒れていたんだろう?不自然に若返っているんだろう?
「君は…人間の、女性だよね?」
「はい。一応女性ですけど」
え?何?生まれてこの方男にも人間以外にも見られた事なんてないんですけど。貶されてるのかな?
いやこんな綺麗な人を前にしたらこんなのが女ですみませんと謝りたくもなるけども。それにしても人間かどうか疑うのはひどい。
「あ…すまない。変な事を聞いてしまったね。可愛い女の子がこんな所に1人で座っているから驚いてしまって…。泉の精霊かと思ったんだ」
ああー。こんな森の中にこんな軽装でいるんだもんね。そもそも人?霊?妖怪?みたいな気持ちだったのかも。精霊呼ばわりなら寧ろありがとうございますだわ。
「ですよね。私も驚いています。どうしてここにいるのか分からなくて」
いい歳して可愛い女の子なんて言われてそわそわする。社交辞令って分かってるけどね。こんな美形様に言われたら頬が緩むのを止められないわ。
はぁ…それにしても近くで見ると改めて美形だわ。
目は切れ長だけど大きめのくっきり二重で、鼻は高くて鼻筋が通ってる。唇が赤いのが黒い髪と相まって壮絶に色っぽい。
背は180cmは越してるかな?手足の長さは日本人離れしている。いや日本人かは分からないけど。
ジッと見ていると彼の頬がみるみる赤くなってく。え?案外人見知り?でも…綺麗過ぎて目が離せない。
「可愛いな…」
「え?」
「私の名前はカナメ・アズサ。貴女の名を教えていただきたい」
え?要梓?やっぱり日本人?
バッと跪かれて思わず後ずさったら引き戻すように手を握られた。ひぇえっ!
「えっ…えっと、リコです。佐伯璃子」
にっこりと微笑まれて一瞬フラッシュ焚かれたかと思った…まっ眩し。美形の破壊力すごいっ!待って!ちょっと待ってぇ!
「リコ…名前も可愛らしい。リコ、私と結婚して下さい」
「ええっ?!」
こんな美形から求婚なんてありえない。しかも出会って数秒とかやっぱり異世界だ。いや夢だ。なんだ私欲求不満か。
「ああ違うね、結婚しよう。だ。それとこんな場所で女性を1人にする夫など不要でしょう?何人いようと捨ててしまいなさい」
いやあんな夫何人もいたら堪んないよ。
「…確かに捨てたい夫ではありましたけど」
結婚して13年、性生活があったのはほんの1年だった。25歳で女としての私を終わらせた男。
そのくせ自分は外で…
「リコ?」
「はっはい。大丈夫です」
ヤバい。多分、今私めっちゃ嫌な顔してたと思う。
「良かった。ではすぐに相手方とは離縁して私と籍を入れよう」
「え?」
あ…もしかして今の返事が結婚の了承だと思ったって事?!え?ドッキリにしても杜撰な。
「あ、あの…そもそもここは何処なんでしょう?わざわざ自宅から誘拐して山奥につれてきてドッキリなんてするわけないし」
なにより不自然な若返りの説明がつかない。
「誘拐…?誘拐されたのか?!ここは大翼翔帝國の黒羽区。この山林は神殿管轄の王家の領地となっているから、登録証が無い人物はまず入る事が出来ない。今日の入山者を見れば貴女の夫が分かると思ったが…」
大翼翔帝國なんて知らない。ちょいちょい日本ぽいから混乱するけど。あと言葉も通じるしね。あ、でも何か…通じてるのに日本語で会話してる気がしないっていうか…自分の口に違和感を感じる。
とにかく今、聞きたい事は聞いてしまおう。誤魔化したところで戸籍も何もない不審者だし、頭がおかしいと思われればそれまでだ。
「私は地球って星の日本と言う国の横浜市に住んでいました。ここは地球でも、日本でもないんですか?私は別の世界に来てしまったのでしょうか」
「別の世界…?…もしや…」
ばっと泉を振り返るカナメさんにまたビクッとしてしまう。距離が近いんだよ~。
「もしや…泉の贈り者か…?リコ、君は泉に入ったか?」
「いいえ?」
「では泉に身体の一部を…そうだな、手を浸してみてほしい」
ええ…。なんか不安。私泳げないし。ほんとに精霊がいたら怖い。特に引きずり込む系の。
「あの、申し訳ないんですが泉に手を浸す間、もう片方の手を握っていてもらってもいいですか?」
こんな美形様におばちゃんが手を握ってなんて図々しいにも程があるけど許してほしい。ほら今は若い女子だし。引きずり込まれそうになったら助けてね。
「ああ…。なんて可愛らしい…。ずっと握っていてあげよう」
えーっ?!出会って数分でその眼差しとセリフはなんですか?!何?もしかして私美少女にでも変身しちゃった?!
パニックになりながらも泉に手を浸す。あ、冷たくてちょっと冷静になりました。
酷い目眩で意識がきゅーっと遠退いていく。
あ、貧血かな。
ふっと眩しさに目が覚めたけど、まだ目の前は白くてくらくらしてる。何度か貧血で意識を失った経験からすぐには起き上がらずに、目をつむって暫く安静にする。
玄関で倒れた割には身体に痛みが無い…というか…背中が柔らかい。それに蒸れた土と草の匂い?え?
ぱちっと目を開いて横になったままキョロキョロと辺りを見回して驚いた。
「なに…ここ…」
我ながら消え入りそうな声。逆に心臓はバックンバックンと煩く脈打ってる。
何ここ死後の世界?!
もしや貧血じゃなくて心筋梗塞とか脳梗塞だった?
ああ…こんなに元気に心臓が動いてるのに私死んじゃったのかなぁ。
左を向けばうちの15帖のリビングにも納まりそうな小さな泉。
右を向けば泉を囲うように拓けた花畑…というより草の間にぽつぽつと小さな白や黄色の花のある原っぱと更にそれを囲う森の木々。
なんだか泉に斧を落としてみたくなる。妖精とか精霊とかがいそうな雰囲気。
どこか神聖で清涼な空気に、いくらか気分が落ち着いてゆっくり起き上がる。あれ?なんだか服に違和感…。
(ウエストがやけに緩い?!)
30も後半になって、ウエスト付いた肉が全然落ちなくなったのに!なぜかいきなりくびれてるし!!
というかなんだか肌にもやたらハリがある…ハッ!もしかして!
「やっぱり!若返ってるう!?」
何をしたかって?ええ、ブラジャーを外したんですよ。無駄に巨乳で重力に逆らえなかった胸が、痩せていた胸元からパンッと張り出すように盛り上がっている。
どこで確認してるんだと思われるけど、顔以外で1番年齢を感じる場所って重量に逆らえない部分だと思うし。
ちょっと泉で顔も確認したかったけど泉に引きずり込むナニカがいたら怖いからやめた。
冷静になると外でなにやってるんだかって感じだけど、人どころか虫の1匹すらいない場所だし服の上から覗いてチェックしただけだから許してほしい。
ブラを付けてそれからも変化を確認すべく自分の身体を見回していてアレ?と気が付いた。
手の甲にあった黒子が無い。(ついでに小ジワも節くれも無い)え?他の場所の黒子も子供の時から消えない傷痕も生まれ付きのシミも無い。それどころか産毛すら無くなってる。
「え?何で?」
慌てて頭を触る。ほ…髪はあった。眉毛…睫毛もある。肌のザラつきなんかは全くない。赤ちゃんみたいにつるつるすべすべ。
「不思議…若返っただけにしては肌が綺麗過ぎる」
何というか…若い時の私をコピーしたけど、細部までは再現出来なかったって感じ?それか不要な部分は省いたとか?
耳を触ったらピアスホールの感覚も無いし。
何だか変な所が欠損してそうで怖いなぁ。
私の夢だからって可能性もあるけど明晰夢なんて見た事無いし、こんなに感覚があるなんて怖い。
「女…?」
「ひぇっ?!」
何の気配も無かったのに背後から声が聞こえてビクーンと身体が跳ねた。
恐る恐る後ろを向くとそこには金髪碧眼のイケメン白人男性…では無く普通に黒褐色の髪と瞳の日本人的な容姿の男性がいた。
いや、普通って所は訂正する。イケメンなんて表現は失礼ってくらい、かなり美形な日本人ぽい男性がいた。
服装はスリーピースにロングブーツとハンチング帽と、お貴族様の狩りみたいな格好だけど、日本人がこんな格好をしていてもそこまでおかしいって事はないと思う。何かの撮影かコスプレ?とは思うけど。
だからやっぱりここは日本で彼は日本人なのかな。
でもそれならばなんで私はこんな場所に倒れていたんだろう?不自然に若返っているんだろう?
「君は…人間の、女性だよね?」
「はい。一応女性ですけど」
え?何?生まれてこの方男にも人間以外にも見られた事なんてないんですけど。貶されてるのかな?
いやこんな綺麗な人を前にしたらこんなのが女ですみませんと謝りたくもなるけども。それにしても人間かどうか疑うのはひどい。
「あ…すまない。変な事を聞いてしまったね。可愛い女の子がこんな所に1人で座っているから驚いてしまって…。泉の精霊かと思ったんだ」
ああー。こんな森の中にこんな軽装でいるんだもんね。そもそも人?霊?妖怪?みたいな気持ちだったのかも。精霊呼ばわりなら寧ろありがとうございますだわ。
「ですよね。私も驚いています。どうしてここにいるのか分からなくて」
いい歳して可愛い女の子なんて言われてそわそわする。社交辞令って分かってるけどね。こんな美形様に言われたら頬が緩むのを止められないわ。
はぁ…それにしても近くで見ると改めて美形だわ。
目は切れ長だけど大きめのくっきり二重で、鼻は高くて鼻筋が通ってる。唇が赤いのが黒い髪と相まって壮絶に色っぽい。
背は180cmは越してるかな?手足の長さは日本人離れしている。いや日本人かは分からないけど。
ジッと見ていると彼の頬がみるみる赤くなってく。え?案外人見知り?でも…綺麗過ぎて目が離せない。
「可愛いな…」
「え?」
「私の名前はカナメ・アズサ。貴女の名を教えていただきたい」
え?要梓?やっぱり日本人?
バッと跪かれて思わず後ずさったら引き戻すように手を握られた。ひぇえっ!
「えっ…えっと、リコです。佐伯璃子」
にっこりと微笑まれて一瞬フラッシュ焚かれたかと思った…まっ眩し。美形の破壊力すごいっ!待って!ちょっと待ってぇ!
「リコ…名前も可愛らしい。リコ、私と結婚して下さい」
「ええっ?!」
こんな美形から求婚なんてありえない。しかも出会って数秒とかやっぱり異世界だ。いや夢だ。なんだ私欲求不満か。
「ああ違うね、結婚しよう。だ。それとこんな場所で女性を1人にする夫など不要でしょう?何人いようと捨ててしまいなさい」
いやあんな夫何人もいたら堪んないよ。
「…確かに捨てたい夫ではありましたけど」
結婚して13年、性生活があったのはほんの1年だった。25歳で女としての私を終わらせた男。
そのくせ自分は外で…
「リコ?」
「はっはい。大丈夫です」
ヤバい。多分、今私めっちゃ嫌な顔してたと思う。
「良かった。ではすぐに相手方とは離縁して私と籍を入れよう」
「え?」
あ…もしかして今の返事が結婚の了承だと思ったって事?!え?ドッキリにしても杜撰な。
「あ、あの…そもそもここは何処なんでしょう?わざわざ自宅から誘拐して山奥につれてきてドッキリなんてするわけないし」
なにより不自然な若返りの説明がつかない。
「誘拐…?誘拐されたのか?!ここは大翼翔帝國の黒羽区。この山林は神殿管轄の王家の領地となっているから、登録証が無い人物はまず入る事が出来ない。今日の入山者を見れば貴女の夫が分かると思ったが…」
大翼翔帝國なんて知らない。ちょいちょい日本ぽいから混乱するけど。あと言葉も通じるしね。あ、でも何か…通じてるのに日本語で会話してる気がしないっていうか…自分の口に違和感を感じる。
とにかく今、聞きたい事は聞いてしまおう。誤魔化したところで戸籍も何もない不審者だし、頭がおかしいと思われればそれまでだ。
「私は地球って星の日本と言う国の横浜市に住んでいました。ここは地球でも、日本でもないんですか?私は別の世界に来てしまったのでしょうか」
「別の世界…?…もしや…」
ばっと泉を振り返るカナメさんにまたビクッとしてしまう。距離が近いんだよ~。
「もしや…泉の贈り者か…?リコ、君は泉に入ったか?」
「いいえ?」
「では泉に身体の一部を…そうだな、手を浸してみてほしい」
ええ…。なんか不安。私泳げないし。ほんとに精霊がいたら怖い。特に引きずり込む系の。
「あの、申し訳ないんですが泉に手を浸す間、もう片方の手を握っていてもらってもいいですか?」
こんな美形様におばちゃんが手を握ってなんて図々しいにも程があるけど許してほしい。ほら今は若い女子だし。引きずり込まれそうになったら助けてね。
「ああ…。なんて可愛らしい…。ずっと握っていてあげよう」
えーっ?!出会って数分でその眼差しとセリフはなんですか?!何?もしかして私美少女にでも変身しちゃった?!
パニックになりながらも泉に手を浸す。あ、冷たくてちょっと冷静になりました。
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