極貧少女の成り上がり

大桃

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無駄なものなんてない

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ネルは日が落ちかけた頃アルを連れ家に戻ってきた。

何も言わず、夕食をだしメルが楽しそうに話すのをみんなで聞いて時にはその話に笑った。

その夜、私は3人と一緒に母親が眠る丘に行った。


少し盛り上がった土と母の名が刻まれた木片が立てられているそこが母の墓。

この丘はとても見晴らしがよく、母によく連れてきてもらっていた。

貧民層の奥にある街から遠く離れたこの場所には誰も訪れない。

私たち姉弟は何かを決意する時にここへ来ていた。


そこで私の気持ちを話した。

ネルもアルも話を理解できないはずのメルも泣いていた。

こんな顔をさせてしまう私の不甲斐なさに私も泣きそうになった。

そして強く強く抱きしめあった。

これからどうなるか分からない。でも弟たちがいる限り私は大丈夫だって思える。




そう家族の絆を確かめあった次の日私は街で私の体を買ってくれる人を探した。


あの男は1週間という短い期限で1万リロを要求してきた。

逃げれば路上生活、諦めて孤児院に行けばどっちにしろ売られて家族はバラバラになる。

もうあとは無い。やるしかない。



日中は私に声をかけてくる人はいなかった。

だから焦っていた。

このまま1人も買ってくれないと確実に間に合わない。

さらにずっと何もしないで立ち続ける私を街の人は嫌がり路地に追いやられてしまった。

商店街には私の顔を知っている人が多いため、近づけない。

もし私が体を売ろうとしているのが知られれば弟たちもそんな目で見られてしまうかもしれない、そう思ったから。


私はどうやったら買ってもらえるのか分からず途方に暮れていた。

暗い路地に座り込みどうすればいいのか考えていた。

日もだんだん暮れてきて子供の笑い声も聞こえなくなってきた頃、私がいる路地に1人の男が近づいてきた。


酒によっているのか足取りは不安定で酒臭いその男は醜く太ってはいるがやむを得ない。

「っ、あの」

「あぁ?」

「私を買ってくれませんか?」

懇願するように男に声をかける。


「ぐへへ、おめー美人じゃねぇか。ヒック、あー?ヤらせてくれんのかぁー?」

「っはい。」

「そうかそうか」

その男はその太い腕の右手で私の腕を掴み、左手で私の腰を撫でてくる。


我慢、我慢しなきゃ。

この人が私の初めてなんだ。

少しでもいい所をみつけて、笑えばいい。


「はあはあ」

酒臭い息が顔にあたる。

「こ、ここでするんですか?」

「ああ?どこでも一緒だろぉー?見られるのも興奮するじゃねぇか」

いやだ、と思ってしまったがこれがお金になるのならと諦めた

その時、


「何をしている」


若い男の声が突然聞こえた。

路地の入口を見ると白いローブを着た男の人が立っていた。

「なんだあ?おめーも混ざりてぇのー?見ろよこいつまだ子供だが顔もいいし体もなかなかだぞ、ぐへへ」

腰だけじゃなくその手は下にのび足を触られる。

痩せた体でもいいんだ、と少し安心するがその不快な感触に顔を歪ませてしまった。


「子供だと?」

「あんたも若い方がいいだろぉ?」

私の体をまさぐる男はいまだ私から視線を晒さず路地に入ってきた男の人を見ない


「自分から体を売っているのか」


冷たい声が頭で反響するように消えてくれない。


「なんでこんなことをしている」


みんなで幸せに暮らすため


「孤児か」


母親は3年前に、父親は分からない。


「金がいるのか」


1週間で1万リロ。急がなきゃ、間に合わない


「何に使う」


弟たちを守るために必要なの。


「助けて欲しいか」


っ、弟たちにお腹いっぱい食べさせてあげたい、体に合う綺麗な服を着させてあげたい、穴の相手いない靴で普通の子と同じように遊ばせてあげたい

そのためにはお金が必要で、でもそのお金が私たちにはない。

私だけが犠牲になるならそれでもいい。でも弟たちをその犠牲にしたくない。

今も、私のことを心配しているだろう優しい弟たちが救われるなら


「助けて」


私の首を舐めていたその酒臭い男が消えた。

いや、正しくは何かの力によって吹き飛ばされ壁にぶつかり気絶していた。

「へ…」

間の抜けた声を出してしまったが一体何が起こったのか分からない。


「ついてこい」

白いローブの人は気絶した男を気にせず踏みつけ路地の奥へ入っていく

一瞬、ついて行ってもいいのか悩んだがとりあえず行ってみることにする


すると路地奥にある家に入っていく。



え、これ私も入って大丈夫なんだよね?


そーっと白いローブの人のあとについて足を踏み入れた

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