ネコになったみーちゃんがオスネコと交尾した

かめのこたろう

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ネコになったみーちゃんがオスネコと交尾した

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 近所に住んでいるみっつ年上のみーちゃんは僕にとってともだちのようなお姉ちゃんのようなそんなひとです。

 昔っからずっと一緒にいました。
 たぶん赤ちゃんだったころからそうなんだと思います。

 気がついたらみーちゃんはいて、僕にとって唯一の遊び相手でした。
 かくれんぼとか高鬼とかもずっと二人で遊んでました。
 かえるを捕まえたりアヤトリをしたのもそうです。
 
 みーちゃんが女の子っぽいおもちゃを持ち出したりおままごとをやりはじめると、自然と僕も付き合います。
 逆に僕のロボットとか怪獣遊びとかにもみーちゃんは付き合ってくれます。

 オトコとかオンナとか全然関係ありませんでした。
 二人しかいなかったからずっとそんなふうでした。

 僕らが住んでいたのはちょっと街の中心から外れた山際に、ポツンと数件の家がまとまっているようなところだったから、他に遊べるような子なんていなかったし。

 何より僕はみーちゃんと一緒にいるのが楽しかったしうれしかったから。
 僕よりもいろいろ知ってて、何でもできるみーちゃんが好きだったから。

 ただ時々みーちゃんは、ちょっと意地悪そうな悪戯な顔をして僕にはよくわからないような難しいこととか不思議なこととかを言ったりやったりする癖がありました。

 夜、鏡をずっと見ていると映っている自分の顔がお化けにかわっちゃうとか。
 駄菓子屋の赤いゼリーは実はさらわれた子供の血で出来てるとか。
 さんざん「世界中で実際にあった突然人が消えちゃう話」をしてきた直後に、いきなり隠れてみたり。
 
 そのつどそのつど、ぶるぶる震えたりぽかぁんとしている僕の様子をなんとも嬉しそうな満足そうな顔で見ているのです。
 僕が驚いたり怯えたりするのを見て心の底から楽しそうにしている、そんなところがみーちゃんにはありました。


「私、ネコにのりうつれるの」


 ある日、学校からの帰り道でいきなりそんなことを言い出しました。

 みーちゃんの前には茶虎のネコ。
 顔も体も全体的に細く小さめ、だけどもう子供じゃない。
 ビー玉みたいな目で静かにみーちゃんを伺っていて、ときどきぺろぺろと舌と前足を使って顔を洗ってるようすは、とても落ち着いて見えます。
 なんとなく大人のメスなんだろうなと思いました。 

 それをじぃっと見ながら、みーちゃんはなんの前触れもなく「私は心をネコに移すことができるのよ」、「ネコになっていろんなものを見てきたわ」などと言いだしたのです。

 僕はその時、「ああ、みーちゃんのアレがまた始まったのかな?」と思いました。

 それを口にする直前の独特の雰囲気。
 みーちゃんが僕に何かを仕掛けようとするときの、なんとなく空気を切り替えるような、それまでしていた何気ない普通の会話とかを一度まっさらにして「いざ」と一歩を踏み出すような、そんな「溜め」のようなものがあったからピンときました。

 学校に入って数年、いい加減僕も何度も何度もやられていたから、大体そんな風にみーちゃんのやり口がわかっていたのです。
 もう低学年じゃないし、ほとんど心を揺さぶられることもなくなりつつあったのです。

 それでもごくごくたまに「会心の出来」のものがあったときには、相変わらず驚いたり怖がったりすることもありましたけど。

 でももう、僕はみーちゃんのそれを「悪い癖」という風に、きちんと頭でわかって心の準備ができるくらいには成長していたのでした。

 だからその茶虎のネコの前で「動物になるのはいかに素晴らしいか」を低い声で説明し続けるみーちゃんに、僕は「ふーん」って気のない返事をしてみたのです。
 「もう僕は子供じゃないよ」、「全然通じないよ」っていう気持ちを目一杯に含んでみたつもりでした。

 そんな僕の想いが伝わったのかどうか、みーちゃんは特に気にした様子もなく、「まあそこで見てなさいよ」と言い、ネコのすぐ前でしゃがみこみます。
 膝くらいまでのスカートがめくれ上がり、何故かこの頃気になり始めた、ちょっと日に焼けた足が根元の方まで出てきます。
 そしてみーちゃんはますます集中するようにそれから無言になりました。

 僕は声もだせずに見ていることしかできません。
 すでにみーちゃんのやることがただの「悪ふざけ」の「嘘っぱち」なんだとわかり始めていたのにもかかわらず、ただじっと待つ以外に何もできません。

 なんとなく邪魔してはいけないような、何か余計なことをしてしまうと取り返しがつかないような、そんな雰囲気。
 そういうのを作るのがみーちゃんはとても上手いのです。
 厳しいセンセイの授業とか、学校の大切な行事の時みたいな、いかにも「いまは静かにしていないといけません」という空気。
 そういうのをいとも簡単に、まるで魔法のように使ってくるのです。

 ネコにもそのみーちゃんの力が通じていたのでしょうか。
 特に動いたりするでもなく、にゃーんって鳴いたりするでもなく、みーちゃんを伺うように固まってるように見えました。
 一人と一匹はずっと昔からそうだったように、その形で最初から作られていたセットの置物みたいに、座り込んだまま見詰め合っていました。


 そうしてどれくらい時間が経ったのか。

 
 いきなりネコがブルリと身震いしたかと思うと、僕に顔を向けてきました。
 そして一声鳴くと、甘えるように身を摺り寄せてきたのです。


 その瞬間、僕はそれがみーちゃんであるとすっかり思い込んでしまいました。
 なんの疑いもなく、完全にみーちゃんがネコに乗り移ってしまったんだと信じていました。

 あれほど頭ではわかっていたつもりだったのに、「どうせ嘘っぱちだ」という気持でいたのに、全然そんなのは何の役にもたちません。
 「騙されないぞ」と力んでいた心の備えなど完全に吹き飛ばされてしまいました。

 それほどその時のみーちゃんの振る舞いと、その直後のネコの動きには言われたとおりのことがまさに起こったのだと僕に思わせる、信じさせるほどの本物っぽさがありました。
 偶然に起こったとは思えない、すべて意味があることに思えました。

 もっとも後から考えたら、別にそう特別な何かがあったわけではありません。
 みーちゃんはじっとネコを見詰めていただけ、そしてネコは僕に擦り寄ってきただけ。
 人間とネコが普段すること以上のことはなんにも起こっていないのです。

 ただ、そのあまりにも完璧なタイミング。
 しゃがみこんだまま黙り込んだみーちゃんからあふれ出す「意味深」な雰囲気。
 見詰められたままじっとしていたネコ。

 「それが起こった」としか思えない、その後の動き。

 理屈じゃありませんでした。
 そのときのネコとみーちゃんには僕をすっかり信じ込ませて納得させるなにかがありました。


 身体を擦り付けてきたネコは、今度は後ろ足で立って前足を僕の足に突っ張るように当ててこちらの顔を見上げてきます。
 そしてそのまままた、にゃーんと鳴きます。

 そのときのネコの顔。

 ただでさえ意味ありげなネコの顔が確かに笑ったように見えました。
 みーちゃんが驚き慄く僕を笑っているとしか思えませんでした。

 それからもいちいちネコはみーちゃんが乗り移ったとしか思えない動きを続けます。
 いや、それも結局はネコが当たり前に行うことしかやってなかったのですが、僕にはもうみーちゃんがそうしているとしか見えませんでした。
 今はもう抜け殻になったのであろう本来の身体はしゃがみこんだ格好のまま全く動きません。

 そうして一向に僕のびっくりが落ち着く様子も見せないうちに、そこにはもう一人、いやもう一匹の闖入者が現れたのです。


 あおーん。


 大きな黒ネコでした。
 片耳の先がちょっと欠けた、いかにも迫力満点の。
 恐らくこの辺のボスなんだろうなぁと一目で思わせるようなヤツでした。

 それがノッシノッシと堂々とした歩き方でこっちに向かってくると、途端にみーちゃんネコは落ち着きをなくしたようでした。
 僕の足の陰に隠れて、なーんと心細そうな声で鳴きました。

 こちらを見上げる顔はもしかしたら抱き上げて欲しいとでも言っていたのかもしれません。

 でも僕はそれまで起こっていたことのショックから立ち直ることもできずにただただ呆とすることしかできません。
 しまいにはすぐ側まで来た黒ネコがふんふんとみーちゃんネコのお尻の部分のにおいをかぎ始めても何もできずにただ見ているだけでした。

 みーちゃんネコはどうも怯え竦んで動けなくなってしまったようでした。
 とくにオシッコが出るところをペロリと舐められた時から、見るからに固まってしまってカチカチになってしまったようです。

 もしかしたらそれも、ネコ同士のやり取りではよくあることなのかもしれませんが、そのときの僕には「ネコになったみーちゃんがあまりにも恥ずかしいことをされてそうなった」ようにしか見えませんでした。
 そのままペロペロとお尻やおしっこを出す部分をしきりに舐められ続けるまま、みーちゃんネコは黒ネコに時々抗議するような声で鳴いたり、僕の顔を一瞬見上げてすぐ逸らすくらいの動きしかしません。
 僕の足のすぐ横で黒ネコにされるがままになっています。

 僕はその様子から一瞬も目を逸らせませんでした。
 みーちゃんが乗り移ったはずのネコが明らかに嫌そうにしているのに、助けることもできませんでした。

 なんというか、その時にはもうビックリ以外の気持がムクムクとわいてきたようでした。

 とっても悪いことなんだけど、すごく楽しい悪戯みたいな。
 やったら確実に怒られる、見つかったら絶対まずいことを企むときのワクワクとかドキドキ感のような。

 大人の目を盗んでやってしまういけないことの気持ちよさみたいなのが僕の中に溢れてきていたのです。
 みーちゃんも僕に悪戯するときこんな気持だったのかなって心のどこかで思いました。

 それが僕を夢中にさせて、すぐ目の前で起こっていることから釘付けにして離さないようでした。

 とうとう黒ネコがみーちゃんネコの上に後ろから乗っかりました。
 後足で立って、おなかをみーちゃんネコの背中に乗せるような格好です。

 僕はそれが交尾だとすぐにわかりました。
 動物がそういうことをして赤ちゃんを作るということを、ついこないだ理科の授業で習ったばっかりだったからです。
 それにある程度は習う前から、意味はわからないけどそういうことをしているのを周りの動物から見知っていました。

 だから僕にとって動物の交尾を見るのは初めてじゃなかったのです。
 決して特別な何かを感じることではなかったはずなのです。

 でもいざそれが始まった瞬間。
 目の前でみーちゃんネコが黒ネコのおちんちんを入れられた瞬間。
 如何にも哀しそうな、無念そうな声で「に゛ゃあっ!」っと鳴いた瞬間に。


 先ほどから感じていたどこか後ろめたいようなドキドキワクワクが弾けて爆発したのです。
 それまで経験したことがないような、生まれて初めてのとても熱い苦しい何かが僕をおそったのです。


 それから黒ネコがもにゅもにゅとあんまりはっきりしない感じで動き続け、みーちゃんネコがひたすら耐えるように僕の目の前で交尾していました。
 傍から見たら、ただのネコの交尾以外の何ものでもなかったと思います。

 あんまりネコは人前でしないらしいから、それをやってるというもの珍しさくらいしかない光景だったのでしょう。

 でも僕にとっては全然違っていました。
 まったく違う意味と価値をもってしまっていました。

 それはただのネコの交尾などというものではなかったのです。
 もっと何か特別で奇妙でありえない、あってはいけないことだったのです。

 みーちゃんという、僕にとって掛け替えのない存在がとても大変な目にあってしまっている、凄惨な事故現場そのものだったのです。


 でも不思議とみーちゃんを想う、痛ましい哀しい辛いという気持はあまりありませんでした。
 たぶん、結局は「ネコに乗り移っただけで、本当のみーちゃんの身体に何かがあるわけではない」という気持があったんだと思います。
 心がみーちゃんでも、交尾しているのはネコなんですから。

 戻ってしまえば、それで大丈夫。

 みーちゃん自体には影響がないのだという安心があったんだと思います。

 だからこそ、強く熱い何かだけが純粋に僕を虜にして離さなかったんでしょう。
 みーちゃんが黒ネコと交尾しているという事態に、ドキドキワクワクだけを強く感じさせたのでしょう。


 僕は何かにとり憑かれたように一部始終を最後までしっかりと見続けました。
 やがて満足したらしい黒ネコが動きを止めて、みーちゃんネコを労わるように寄り添うところも手に汗を握ったままずっと見ていました。

 もうみーちゃんネコもその時には怯え竦んでいる様子はありませんでした。
 中むつまじく、黒ネコにゴロゴロと甘えているような素振りをしています。

 そこにはみーちゃんらしさはもう完全になくなっていました。
 そこにいるのはただの茶虎で細身のメスネコでした。

 気がつくと本当のみーちゃんが、すぐそこでしゃがみこんだまま固まっていたはずのみーちゃん本人が僕のすぐ横に立ってネコを見詰めていました。
 どこか放心したような、熱っぽいような、それまで見たことがない顔でした。

 そして相変わらずじゃれあっている二匹のネコの側にいき、うっすらと微笑みながら。


 黒ネコを優しく撫で始めました。


 何故か茶虎の方は全然目もくれません。
 

 そのときのみーちゃんの様子。
 愛おしそうに、労わるようにひたすら黒ネコを優しく撫でていたみーちゃんの姿が鮮やかに僕の心に刻み込まれました。


 その後、みーちゃんは特にそれ以前と変わった様子もなく相変わらず僕を時々からかったりしつつも仲良くしてくれます。
 学年もいくつか変わって、制服も変わったりしたけど僕らの関係は変わりません。
 みーちゃんはみっつ年上の、友達のようなお姉ちゃんのような人です。


 でも実際にはもうただそれだけの存在ではありませんでした。
 あの学校の帰り道、ネコになったみーちゃんがオスネコと交尾したあの日から、僕にとってもっと特別で大切な人になってしまったようでした。





 了
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