あの娘のスクール水着を盗んだ ~ちょっとエッチな短編集~

かめのこたろう

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可愛い彼女と夜景をみてイチャつく男の話

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「綺麗……」


 部屋に入った途端、薄暗がりの中を窓際まで真っ直ぐに向かって彼女は言った。

 地上から遥か遠く離れた天空から望む夜の景色。
 都会の明りと星々の輝きが僅かな暗黒に隔てられて上下に散りばめられてきらきらと瞬いているその光景は確かに悪くないと僕も想う。
 
 ただ、これまで互いが経験したり見知ってきたものの中でも特に素晴らしく格別のものではないのは間違いなかった。
 彼女にとっても僕にとっても、数多いとは言わずともある程度日常的に慣れ親しんで、自ら意識的にそう想おうとさえしなければさほどの感慨も齎さないものの一つでしかなかっただろう。

 一応、世間的にはグレードが高いとされているシティホテルの一室。
 とりあえず周りには自分たちの視線を遮る建造物が無い程度の眺め、少なからず値段に見合うだけの満足を得られる程度の調度とサービス。

 最高じゃないかもしれないけれど、それなりの気分と充足がもてる環境。
 目的を叶えるための決定的な要素ではないけれど、決して邪魔にはならない状況。

 だから彼女がタイトなワンピース姿の背中を見せながら口にしたその言葉も、特別な意味があったわけではない。

 単に物事を円滑に進めるための様式的なもの。
 これから始まる時間を豊かで意義あるものにするために用いられる基礎手続(プロトコル)。
 
 たとえ心からの言葉であろうとなかろうと関係ない。
 「そういうことにしておく」という暗黙の了解の下で現実的な効果を発揮する類の儀式でしかない。

 大切なのはそういう約束事を共有できるという事実を明示的に確認しあえること。
 お陰で自分は特に問題なく事態が着々と進行している手応え、安堵と昂ぶりを感じられている。


「そうだね」


 言いながら、ゆっくりと近づいていった。

 細く柔らかな身体の線。
 決して控えめとはいえない割合で露出された四肢、それでいてギリギリの絶妙なバランスで気品を保ち、匂いたつような色気と澄んだ美的価値を両立させている。
 シンプルゆえにこそ計算されつくされていることが明らかな高級服飾品に浮かび上がっている曲率の高いカーブ。
 どこまでも魅惑されずにいられない、愛する女の身体の形。
 あと少しで触れられる距離まで近づいたとき。

 いきなりくるりと振り向いてくる。
 しなやかな野生の動物を思わせる、生き生きとした機敏な動き。
 それまでのしっとりとした物言い、静的な雰囲気から一転させたその動きにまんまと不意打ちを食らう。


 にっこり。


 意図したとおりの反応を確認した、悪戯で純真な満面の笑み。
 最も綺麗で華やかだと想っている彼女の顔。

 とうとう我慢ができなくなって一気に抱き寄せた。
 腕を廻すのに気持いいくらいぴったりでお誂えむきだとしか思えない腰の括れ。
 もう逃がさぬように、両サイドからがっちりと絞めてみると、想定以上に深くはまりこんでいく。
 
 華奢だけど病的な不健康さは一切感じさせない、しなやかで靭性(じんせい)に富んだ感触。
 鼻腔に溢れる甘い香り。

 もうずっとそのままでいようと決心しかけると。


「ねえ」


 僕の胸に手を当てて顔の距離をとる。
 Yの字のように下半身は密着したまま、背筋を弓なりに逸らして顎を引く。


「私のどこが好きなのか教えてよ」


 戯言。
 でもそんなものこそが今は相応しい。

 わざとらしくちょっと考える素振りをする。
 明らかに演じ気味で、馬鹿馬鹿しいくらいが丁度いい。
 生真面目な顔を作って言い放つ。


「強いて言うなら二つくらいしかない」


 ぴくり。

 その言葉に僅かに歪む眉。
 「全部」とか「何もかも」とか。
 そんな肯定的な言葉が返されることを確信して疑わなかった傲慢を裏切られた怒り。

 彼女の中に渦巻いているものを想像して嗤う。

 自信たっぷりの自尊心が刺激させられた気高い女の意図せぬ反応を見て沸き起こる愉悦。
  
 でもそのまま何もかも台無しにするつもりなどあるわけがない。


「見た目と性格だけかな」
  

 その言葉の意味を理解した瞬間の開闢。
 有効な効果が齎されたことを一変した表情の中に見通してほくそ笑む。


「ふーん……」


 明らかに得意げで満更でもなさそうな顔。
 口元の笑みを押さえようとしているのがよくわかる。
 
 あまりにもいじましくなってこちらからも聞いてみる。


「じゃあそっちは?」


 一瞬の虚を突かれたようなあどけない顔を見せた後、すぐにまた含み笑いのたっぷりと乗った艶やかな表情に戻って彼女は言った。


「内緒」


 理不尽。
 思わず反射的にその想いが口に出ていた。


「ずるい」

「悪い?」


 全く悪びれもせず言い返す様はとても凛々しくて素敵だった。

 美しく魅力的なものは総じて理不尽なものなのだ。
 彼女は僕にその事をたっぷりと教えてくれた。

 そんな彼女がこれから徐々に自分の前でどうなっていくのか想像するだけで熱く滾ってしまう。
 目もくらむような期待ではちきれそうになる。

 もう後は何も答えずに黙ったまま腰に廻していた手をゆっくりと下げていく。
 その先にあるはずのものを目指して。
 僕が最も欲求を掻き立てられる場所の一つ、彼女の身体の中でも特に魅力的だと想っている部位。


 強く握った瞬間、泣き笑いのような顔をした。
 精神的な優越と余裕、意図せぬ感覚に翻弄されまいとする強張りがない混じったそれは何よりも貴重で価値あるものに他ならなかった。




 了
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