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実在する異世界転移、直後のちんこの臭い
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セックスが終わった直後でなお一緒に居られる女というのは貴重だと思う。
やるべきことは全部やり切った倦怠感と温(ぬる)く湿気(しけ)った空気の中、寄り添うようにダラダラと時間の進みが緩慢な空間を共有できる相手というのはとても稀有で珍しい。
大抵は疎ましくなったりめんどくさくなったりといった気持ちになってできればどこかに早々とお引き取り願いたくなるもの。
何故ならもう目的は達成できてしまったんだから。
それまでの盛り上がりとか情熱とかがどれだけ本当で誠実なモノだったとしても、一度終わってしまえばそこには厳然とした男にとってのリアルがどうしても立ちはだかるものである。
性的欲求というユニークで巨大な一つの価値を失った後に残るものだけで女という純粋な物理的存在と対峙しなくてはいけないのだから。
世界を構築していた重要な要素がすっぽり抜け落ちた、比喩や例えなどではないまさしく並行世界(パラレルワールド)にその都度男という生き物は突き落とされていることに他ならないのである。
御他聞に漏れずそうして今日もSF創作などとは違う嘘偽りなく本物の異世界へ一歩踏み出したのをはっきり自覚しながら、隣で寝息を立てる女の顔を窺った。
ぼんやりとした快感の残滓を下腹の奥にくすぶるように感じるだけで、そう悪いものは生まれてこないようだった。
あたかも本来いるべきではないところに図々しく不当占拠しているような存在に感じる煩わしさも拒否感も、孤独への誘惑もさほどない。
むしろ汗を纏わりつかせた柔らかい曲線の頬に郷愁めいた切ない愛着のようなものを感じる気がする。
今回訪れた場所はさほど元の世界と乖離しているわけではなさそうだと安心したら、急に催してきた。
すーすーという寝息を妨げないように静かにフローリングに足を降ろしてトイレに向かう。
大も小もどちらも催しているような気がしたから便座に座った。
ヒーターが入ってないひんやりとした冷たさがヌルっとした汗の感触と合わせて決して心地よくはなかった。
さっさと用を済ませてあの温いベッドに戻ろうと。
そんな急かされるような気持ちだったからか、結局大きい方は出なかった。
じょろじょろと性行為とは別の快感に包まれながら用を足してぶるぅっと身じろぎをする。
壁に設置されてるトイレットペーパーに手を伸ばして適当にちぎってから、すっかり萎んで大人しくなった蛇腹状のものを拭おうとする。
先端にまとわりつく、僅かな粘度を持つ小水の残滓を綺麗に取り払ってすっきりするために。
するとツンとえぐみのある匂いが鼻の奥の粘膜を突いてきた。
足の裏や脇など、決していい匂いではなくむしろ抵抗や拒否感があるにも関わらず何故か嗅がずにいられない類の生々しい刺激臭。
自分の精液と相手の分泌液が混ざったものが乾いて適度に抜けつつある、生物由来の有機物に感じる本能的な嫌悪と蠱惑的な魅力の相混じった香り。
普段は決して意識もしないけど、確かに毎回この時間に嗅いでいるのは間違いないのを鮮明に思い出す。
それは自分にとってセックスそのものの匂いなのかもしれなかった。
相手の体臭や行為中のどんな直接的なものよりもなにより性行為というのを象徴しているもののようだった。
トイレの只中で、うっすら濡れた裸体のままひんやりと全身が冷えていくのを感じながらそう思う。
何故か便座から腰を上げるのが億劫になってきた。
あれほど還るのを望んでいたはずの約束の場所が、とても遠く果てしない道のりになっていくようだった。
狭い個室トイレの便座から動けないまま時が過ぎていく。
凍えるほど身体が冷え切ってしまうまで、しばらくそんな風に世界を拒絶して引きこもっていた。
了
やるべきことは全部やり切った倦怠感と温(ぬる)く湿気(しけ)った空気の中、寄り添うようにダラダラと時間の進みが緩慢な空間を共有できる相手というのはとても稀有で珍しい。
大抵は疎ましくなったりめんどくさくなったりといった気持ちになってできればどこかに早々とお引き取り願いたくなるもの。
何故ならもう目的は達成できてしまったんだから。
それまでの盛り上がりとか情熱とかがどれだけ本当で誠実なモノだったとしても、一度終わってしまえばそこには厳然とした男にとってのリアルがどうしても立ちはだかるものである。
性的欲求というユニークで巨大な一つの価値を失った後に残るものだけで女という純粋な物理的存在と対峙しなくてはいけないのだから。
世界を構築していた重要な要素がすっぽり抜け落ちた、比喩や例えなどではないまさしく並行世界(パラレルワールド)にその都度男という生き物は突き落とされていることに他ならないのである。
御他聞に漏れずそうして今日もSF創作などとは違う嘘偽りなく本物の異世界へ一歩踏み出したのをはっきり自覚しながら、隣で寝息を立てる女の顔を窺った。
ぼんやりとした快感の残滓を下腹の奥にくすぶるように感じるだけで、そう悪いものは生まれてこないようだった。
あたかも本来いるべきではないところに図々しく不当占拠しているような存在に感じる煩わしさも拒否感も、孤独への誘惑もさほどない。
むしろ汗を纏わりつかせた柔らかい曲線の頬に郷愁めいた切ない愛着のようなものを感じる気がする。
今回訪れた場所はさほど元の世界と乖離しているわけではなさそうだと安心したら、急に催してきた。
すーすーという寝息を妨げないように静かにフローリングに足を降ろしてトイレに向かう。
大も小もどちらも催しているような気がしたから便座に座った。
ヒーターが入ってないひんやりとした冷たさがヌルっとした汗の感触と合わせて決して心地よくはなかった。
さっさと用を済ませてあの温いベッドに戻ろうと。
そんな急かされるような気持ちだったからか、結局大きい方は出なかった。
じょろじょろと性行為とは別の快感に包まれながら用を足してぶるぅっと身じろぎをする。
壁に設置されてるトイレットペーパーに手を伸ばして適当にちぎってから、すっかり萎んで大人しくなった蛇腹状のものを拭おうとする。
先端にまとわりつく、僅かな粘度を持つ小水の残滓を綺麗に取り払ってすっきりするために。
するとツンとえぐみのある匂いが鼻の奥の粘膜を突いてきた。
足の裏や脇など、決していい匂いではなくむしろ抵抗や拒否感があるにも関わらず何故か嗅がずにいられない類の生々しい刺激臭。
自分の精液と相手の分泌液が混ざったものが乾いて適度に抜けつつある、生物由来の有機物に感じる本能的な嫌悪と蠱惑的な魅力の相混じった香り。
普段は決して意識もしないけど、確かに毎回この時間に嗅いでいるのは間違いないのを鮮明に思い出す。
それは自分にとってセックスそのものの匂いなのかもしれなかった。
相手の体臭や行為中のどんな直接的なものよりもなにより性行為というのを象徴しているもののようだった。
トイレの只中で、うっすら濡れた裸体のままひんやりと全身が冷えていくのを感じながらそう思う。
何故か便座から腰を上げるのが億劫になってきた。
あれほど還るのを望んでいたはずの約束の場所が、とても遠く果てしない道のりになっていくようだった。
狭い個室トイレの便座から動けないまま時が過ぎていく。
凍えるほど身体が冷え切ってしまうまで、しばらくそんな風に世界を拒絶して引きこもっていた。
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