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若妻の穴を堪能する夫の話
しおりを挟むふと、夕食の時に向き合って食べている妻の鼻の穴が気になった。
自分が作ったトマトとチーズの色彩が綺麗なカプレーゼをもぐもぐと一心不乱に食べている女(ヒト)。
その全体的にバランスの整った端正な顔つき、可愛いというよりは美人というのがしっくりくる顔の中心にある小ぶりだけど形のいい鼻梁の先、点々と控えめな風情で開いた二つの穴。
何の脈絡も無く、妙にそれが気になってきた。
結婚して数年、未だ独身時代の空気が抜けきったとはいえないが、恋人だった時から唯一の夜のパートナーとして数限りなく愛し続けてきた相手。
およそ「性的」とされ男女が行いうる交わり方は大抵行ってきた自負があり、なんとなく彼女の身体は知り尽くしているような気持でいた。
性器は勿論、そのほかの場所を使って行う営みも当たり前のようにしてきたのだ。
抵抗や拒否感のない混じった最初の初々しい反応、徐々に慣れてきて我が物にしていくその歴史的経過、世の恋人達や夫婦であれば誰もが経験しているだろう積み重ねを確固として自分たちが共有しているという確信がある。
だから彼女の身体で愛していないところなど無い筈だとすっかり思い込んでいた。
いや、そんな気分で自分がいたのだと今唐突に気付かされた。
鼻の穴という部分を自分はかつてどれだけ意識したことがあったのか。
誰よりも愛する人の身体の一部でありながら、今初めてそこに己の思考がフォーカスされたことを知る。
考えるまでもなく、そこが無くてはならない大切な場所なのは間違いない。
彼女の顔という統一された美を、完成された黄金率を構成するのに絶対不可欠なのは自明だ。
だがこれまできちんとその価値を考え向き合ったことがあったのか。
最も大切な女性が持つ器官の一つとして、意識的に取り扱ってきたのか。
果たしてそんな己の有様は生涯を共にすると誓った人間として、相応しいものだといえるのか。
およそ唯一無二のパートナーたることを自認するなら、何処の場所も分け隔てなく愛するべきではあるまいか。
ましてや世間並みに考えれば遥かに汚らしく不潔だとされているだろう場所をすら、互いに愛し合っているのだ。
それらと比べれば、鼻の穴というものはよっぽど高尚で清潔で可愛げのあるいじましいもののような気がする。
そこまで思い至ったときに、己の手が完全に止まっていたのを自覚した。
ふと見れば怪訝そうにこちらを見る妻の顔。
何事も無かったように、ナイフとフォークの動きを再開する。
今さっき思いついたばかりの考えを披瀝するのはせめて食事が終わった後だろう。
………
別にいいけど。
「鼻の穴を舐めさせてくれ」と言ったときの妻の反応。
さほどの抵抗も感じていない淡々とした態度で彼女は言った。
長年の付き合いである自分がやっとわかる程度に口角が上がっていたから、面白がってすらいるのかもしれない。
我ながら自分の提案が当たり前で普通のことだとは思っていなかったから、彼女のこの反応は意外ではあった。
常軌を逸しているとまではいかないが、こんなことを要求することもされることもまず無いだろう類のことだというのは重々わかってはいたのだから。
月並みな抵抗を示す相手に要請、懇願、ある程度の譲歩、妥結といった一般的な交渉を展開する心の準備がすっかり整っていた分、肩透かしの想いすら沸いてくる。
だがその堂々として凛々しさすら感じさせる彼女の様子に心が熱くなってしまったのもまた事実。
愛する女の魅力を再発見した感動のままにソファーに座らせたら、いよいよそのときが来た。
頭を少し上げるように言うと、何の抵抗もなく諾々と従う彼女。
そのまま下から見通すと、ぷっくりと魅惑的に膨れてグロスで艶々照り光っている上唇の先にぽっかりと開いた二つの穴が確認できる。
決して大きくはない、縦に長い楕円形。
外側からよじれるように内側へと曲がる縁の曲線が美しい。
とても有機的なフォルムで、生物的な印象を抱かせるデザインだと思った。
機械的で無機的な直線では感じられない、生々しく瑞々しいイメージを沸き立たせる。
そしてそこから続く緑がかった暗い肌色の内側。
うっすらと控えめに茂っている無数の体毛。
ひどく短く、薄い毛質でとても秩序的に生え揃っている。
単純に綺麗だと思った。
こんなところでさえ、己の妻は美しいのだと思い知った。
よく見知っている自分の鼻の状態、ごわごわと野太く強(こわ)い毛が生い茂ってところどころ鼻垢がこびりついており、ともすれば長く伸びたものが廉恥心の欠片も感じられない激しい自己主張をするたびに暗澹とやるせない想いにさせられる慣れ親しんだものから推量して、てっきり彼女のもある程度は同じようなものだと覚悟をしていた。
どれだけ見苦しく恥ずかしいものだったとしても、それが当然であり受け入れるつもりでいたのだ。
だが蓋を開けてみたらどうだ。
彼女の鼻の穴の中はそんな不潔感とも不衛生感とも、見苦しさとも全くの無縁。
むしろ清潔で犯し難い神聖な雰囲気すら湛えている。
毛の濃淡、穴の陰影が生み出すパターンはもはや芸術的といえようか。
聞けば、鼻毛が穴の外まで伸びてくることも無いらしい。
この毛質では最もだと納得しつつ、女というのは皆こうなのかと羨ましくもなる。
あるいは彼女が特別なのだろうか。
聞いてみたけど、笑いながら「知らない」と言われた。
ずるい。
何故かよくわからないけど、そう思った。
本来ならまず人目に晒されぬところまでも出来すぎのように整っていて非の打ち所が無いことが証明された我が妻が誇らしく感動すると共に、彼女に沸き立つ複雑な思い。
夫たる男を置いて、自分だけどこまでも崇高で美しいなんて。
愛しさと不可分の憎たらしさ、苛立ちのようなものがムラムラと生まれてくる。
そんなある種の嫉妬や怒り、己が持たぬものに対する羨望と恨みのような気持が一つの衝動を結実した。
犯したい。
犯してやりたい。
今初めて発見した、愛する女の魅惑的な器官を蹂躙してやりたい。
ゆっくりと傷つけないように、それでいて何らの予兆的な挙動もなくいきなり半ばまで突っ込んだ人指し指が肉壁を拡充し体毛を掻き分けていく感触。
「ふがっ!」っと綺麗な顔に似つかわしくない声が出た。
みっちりと狭い穴を充満して包まれるなんともいえない感覚に酔いしれる。
クニクニと内部を確認するように指先を動かすと、やはりとても上品とはいえない家畜の鳴き声のようなものを出しながらビクッビクッと身体を震わせる妻の、その顔に浮かんだものに見入ってしまう。
眉根を寄せて、苦しそうで切なそう。
それでいて口元にはなんだか諦めたような馬鹿馬鹿しいような皮肉な笑み。
なんとも妖艶で美麗。
エロティックな表情。
自分の内部にある本能的な器官が激しく励起させられるのを感じる。
しばらく指先で感触を堪能したら、もう我慢ができなくなった。
もはや触覚だけでは飽き足らない、凶暴な欲求が生まれて暴走し始めている。
ずぽっと音がするかのように抜き出すと、間髪いれずそのままぬるりと舌先を突っ込んだ。
またもや「んがぁっ!」みたいなムードとは全く無縁の間抜けな声を出す妻は置いて、自分の体で唯一味覚を司る受容器官から伝わってくるものを一つも漏れ零さぬように全ての意識を集中した。
少しぬるっとしてざらざらした毛の感触がするのは外観からある程度予想がついていたからさほどの驚きも無い。
だが、初めて味わう匂いと旨み、苦味と酸っぱみのない混じったような複雑な味が自分の脳髄を貫いて激しいショックに襲われる。
それはかつて経験したことのないものだった。
これまでの少なくない人生で見知ってきたもの、そのいずれとも同じものなどない、勿論彼女の身体のほかの場所、口や頬、手足に肌、肛門や性器とも全然違う。
決して美味しくは無い。
というより味気がないくらいで塩分が強めであること意外にはほとんど僅かな「匂い」程度のものしかない。
でもそこにごくごく微かに隠喩的に含まれたものの芳醇さ。
気がつかない粗忽な愚か者を嘲笑うような隠された神秘。
なんとも幽玄かつ不可解な。
深遠で哲学的な味。
すっかり理解して知り尽くしたと思い込んでいた存在が隠し持っていたものにただ圧倒されて。
しばらくずっと気が済むまでひたすら舌を突っ込んだまま味わいつくすように中で動かし続けた。
彼女がどれだけ呻いて震え、涎でべとべとになっても気にもしなかった。
………
気が済んだ?
ようやくある種の恍惚から解放されて舌を抜くと、彼女は言った。
少し涙目で、少し面白がっているような、呆れたような諦めたようななんともいえない顔。
とりあえず気が済んだのは事実だからそう告げると、脱力したように「よかったね」と笑いかけてくる。
そこには何故か同情とか憐憫と言われるような感情が色濃くあるような気がしたけど、それ以上に深い愛情を感じることが出来た。
自分もまたより一層愛しくなったのは言うまでも無い。
そして洗面所に向かうために彼女が立ち上がり、目の前を横切ろうとした一瞬。
耳の穴の存在に気がついた。
了
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