14 Glück【フィアツェーン グリュック】

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ショコラーデと紅茶。

152話

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 目の前に、今話題のショコラティエがいる。一瞬で緊張がマックスになり、ウルスラは臓器がキュッと、レモンのように絞られたかと震える。

「……えぇ……」

 しかし、当然アニーは「ほえー」と頷いて、喜びを見せる。

「ご本人スか? 道理で詳しいと思いました」

 よろしくっス、ととりあえずクルトの両手を握ってブンブンと振る。よくわかっていないが、なにやらやっぱりすごい人のようで、改良を引き受けてくれたことと捉えた。

 ソファーに深く体重を預けつつ、マクシミリアンはリラックスしだす。

「結構あっさりしてるねぇ。一応結構すごいヤツなんだけど」

 ニヤニヤと悪人の面構えで、クルトをサングラス越しに見流す。でかくなったもんだ、と小さい頃から見てきた青年の成長を、再度噛み締めた。

 口元に人差し指を当て、アニーは深く考え込む。

「いや、驚いてますけど、あんまりピンとこないっス。誰がお客様でもやることは一緒なので」

 結局は笑顔。難しくは考えることは、やはりできない。目の前に集中するだけ。

 クルトは目を閉じ、耳を澄ませる。森の風を感じる。いないはずのウタツグミの声が聞こえる。魂の花が、咲く。

「……こちらのお店のオーナーさんはいらっしゃいますか? お話が」

 時計の針が、動く。

「そこにいるよ。ユリアーネちゃん、ちょっと」

 見えないが、音で位置がわかっていたマクシミリアンが、オーナーであるユリアーネを呼んだ。

「? はい」

 振り向いてその声に反応したユリアーネ。ちょうど接客を終えたタイミングだったので、ゆったりとした足取りで座席に近づく。

「……どうされましたか?」

 呼ばれた理由もよくわからないが、緊張はする。なんといっても憧れのショコラティエ。アニーさんがもしや失礼なことを……心臓と頭が痛い。

 しかし、当のクルトは、目の前に現れた少女を目にすると、頭を抱えて状況を整理しようとする。

「……え、いや、ちょっと待って……オーナー、って言ったよね、自分……」

 自身にブツブツと言い聞かせる。なにか言葉を間違ったかもしれない。思い返すが、やはりオーナーを呼んでくれと言ったはず。が、目の前には若い少女。え?

「……?」

 その姿にユリアーネも眉を寄せる。一体どうしたことだろうか。

 クルトがなにを脳内で反芻しているのかわかるマクシミリアンは、疑問に答えてみせる。
 
「ほら、オーナーさんだよ。アニーちゃんと同じ年齢の。ユリアーネちゃん」

 たしかに、店長以上の衝撃かもしれない。普通はまさか一六歳程度の少女がオーナーだとは思わないだろう。
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