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力を求めて
炭鉱の中は
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ストーンバックは何がしたいのかわからない。
しばらく剣や鎧を食っていたのだが、今はただの積み上がった岩に見える。
人工的に掘られた穴に向かう。
中は落盤に備えて木が組まれ、移動はしやすい。
ランプも所々にかかっているが、暗闇に安らぐ俺には不要だ。
しかし、炭鉱内は広く、入り組んでいる。
細い通路をしばらく徘徊する。
僅かに小動物の赤く蠢く姿しか見えない。
この地中は居心地は良いが、ネクロマンサーや他の生者などがいる気配はない。
何日潜っていたのかは不明だが、外に出よう。
どこに向かうか。
港町か、まだ連なる山脈の先か。
何か、見落としているような気もする。
炭鉱から出ると、入り口の前にはストーンバックが佇んでいた。
俺をまっていたのか?
俺の姿を確認したのか、ストーンバックは四足歩行で動きだした。
「ドライアド、わからないのだよな?」
「正確な理解は不可能ですが、ついてこい、と言うことかと…」
「うばー」
重低音の奇声を上げるストーンバックは、来た方とは反対側の森に、ゆっくりと移動していた。
「…行くか」
俺はついていく事にした。
ストーンバックは森を掻き分け、時に巨木を薙ぎ倒し、進む。
どこに向かっているのか。
何を目指しているのか。
何かに導かれているのか。
迷いなく進んでいるような動きだ。
無言で後をついてゆく。
突然、視界が赤く染まる。
なんだと
生者が潜んでいるのか。
見つけた
そこか
二つ…
ストーンバックは、変わらず森を進んでいる。
俺はストーンバックの背後に隠れる。
木の上、そして近くの岩の影。
何故こんな深い森に人間が…情報が欲しい。
一人は捕えよう。
一人は殺す。
「捕らえました」
突如、右手から声が響く。
「何」
「二人捕えました。拘束しています」
ドライアド、こいつ、有能なのか。
ストーンバックを放置して、まずは岩陰の方へ向かう。
茶色いピタっとした衣服に、くの字に曲がったような長剣を背負っている。実用的なマチェーテか。
地面から生えた、茶色い鋭く細い木の根のようなもの。
その生者の足元にのみ、びっしりと生えている。
足の裏を貫通し、見事に動きを止めていた。
膝の上や、ふくらはぎあたりから、血の滴る先端が数本飛び出していた。
岩にしがみつき、苦痛に喘いでいるが、背後に立つ俺に気づいたようだ。
荒い息で、うめき声と短い悲鳴をあげている。
赤い血、涙とよだれ、その声に、怒りを感じ、手が震える。
「答えろ。ここで何をしている」
俺の質問に、顔だけで振り向いて「スケルトン!?」と驚愕している。
右手の「この無礼者は殺害しましょう」の言葉を無視し、再度問う。
「最後だ。何者だ?何をしている?」
汗と涙を流し、生者は答えた。
「た、助けてくれ」
俺はその生者を蹴り倒した。
足が固定された生者の両膝は、倒れる自重で砕けたようだ。
甲高い悲鳴を無視して、頭を掴み上げ、近くの岩に何度も、何度も叩きつけた。
砕けた頭蓋骨と、飛び散る脳漿に、僅かに溜飲が下がる。
次に向かう。
もう一人の生者は、大木に逆さまに吊るされていた。
大量の蔓草に巻きつかれ、青いミノムシのようだ。
顔の高さは同じくらいか。逆さだが。
俺が近づくと、草がモゾモゾと動き、口だけが見えた。
その赤い唇に、拳を叩き込みたい衝動が湧き上がる。
「答えろ。何者だ」
そいつは荒い息を吐き、うめく。
「ま、待ってくれ。取り引きしよう、森の主」
俺は我慢ならず、右手を振り上げた。
「ケイ様、わたくしに任せてみませんか?」
怒りに震えながらも、俺は手を下ろす。
勇者、聖女を倒す為だ。情報だ。間違えるな。
増悪に怒りを押し込み、ドライアドに答える。
「捕らえたのはお前だ、ドライアド」
「お任せください。右手を草に添えてください」
俺がミノムシに触れると、ミノムシの口の中目掛け、蔓草の先端が押し寄せる。
口をこじ開け、多数の蔓草がねじ込まれる。
このまま窒素か、体の内側から蔓草に侵食させたり、突き破るのもいいな。
この生者は、大した情報など持っていないだろう。
しかし、蔓草は一斉に引き抜かれた。
「答えなさい。あなたは何者ですか」
隣の木から声が発せられた。
生者はうめいていたが、ゆっくりと答えた。
「俺は…冒険者…だ。名はラゲン」
「では、冒険者ラゲン。あなたはここで何をしていたのですか?依頼内容は?」
「うう…俺とヒュウイは依頼で、ストーンバックの動向を探ろうと、行先…先回り…見張りと…罠を…位置を知るために」
俺は僅かに衝撃を受けた。
ドライアドは何をしたのだ。何故こんなに聞き出せる。
「他に仲間は?」
「ストーンバックの…討伐隊…救援…」
景色は色彩を取り戻す。右手から思念が伝わる。
「申し訳ありません。死んでしまいました」
「いや、十分だ。今のはスキルか?」
「森の中だけですが、わたくしの能力です」
よく考えたら、この辺り一体は、こいつの縄張りではないか。
「この森の生者の位置など、わかるのではないのか?」
「わたくしは、ケイ様に全て取り入ってしまい、もう森の把握はできません。このビュル、常にケイ様のおそばに全てがおります」
「そうか」
森の掌握は逃したが、ドライアドは使えるな。
ドロシーが「交渉で役立つ」と言っていたのは真実だろう。
しかし
油断するな。
依存するな。
信用しきるな。
いつ、誰が裏切るか。
俺に仲間は、もういない。
誰も信じるな。
俺は、一人でやる。
待っていろよ…
しばらく剣や鎧を食っていたのだが、今はただの積み上がった岩に見える。
人工的に掘られた穴に向かう。
中は落盤に備えて木が組まれ、移動はしやすい。
ランプも所々にかかっているが、暗闇に安らぐ俺には不要だ。
しかし、炭鉱内は広く、入り組んでいる。
細い通路をしばらく徘徊する。
僅かに小動物の赤く蠢く姿しか見えない。
この地中は居心地は良いが、ネクロマンサーや他の生者などがいる気配はない。
何日潜っていたのかは不明だが、外に出よう。
どこに向かうか。
港町か、まだ連なる山脈の先か。
何か、見落としているような気もする。
炭鉱から出ると、入り口の前にはストーンバックが佇んでいた。
俺をまっていたのか?
俺の姿を確認したのか、ストーンバックは四足歩行で動きだした。
「ドライアド、わからないのだよな?」
「正確な理解は不可能ですが、ついてこい、と言うことかと…」
「うばー」
重低音の奇声を上げるストーンバックは、来た方とは反対側の森に、ゆっくりと移動していた。
「…行くか」
俺はついていく事にした。
ストーンバックは森を掻き分け、時に巨木を薙ぎ倒し、進む。
どこに向かっているのか。
何を目指しているのか。
何かに導かれているのか。
迷いなく進んでいるような動きだ。
無言で後をついてゆく。
突然、視界が赤く染まる。
なんだと
生者が潜んでいるのか。
見つけた
そこか
二つ…
ストーンバックは、変わらず森を進んでいる。
俺はストーンバックの背後に隠れる。
木の上、そして近くの岩の影。
何故こんな深い森に人間が…情報が欲しい。
一人は捕えよう。
一人は殺す。
「捕らえました」
突如、右手から声が響く。
「何」
「二人捕えました。拘束しています」
ドライアド、こいつ、有能なのか。
ストーンバックを放置して、まずは岩陰の方へ向かう。
茶色いピタっとした衣服に、くの字に曲がったような長剣を背負っている。実用的なマチェーテか。
地面から生えた、茶色い鋭く細い木の根のようなもの。
その生者の足元にのみ、びっしりと生えている。
足の裏を貫通し、見事に動きを止めていた。
膝の上や、ふくらはぎあたりから、血の滴る先端が数本飛び出していた。
岩にしがみつき、苦痛に喘いでいるが、背後に立つ俺に気づいたようだ。
荒い息で、うめき声と短い悲鳴をあげている。
赤い血、涙とよだれ、その声に、怒りを感じ、手が震える。
「答えろ。ここで何をしている」
俺の質問に、顔だけで振り向いて「スケルトン!?」と驚愕している。
右手の「この無礼者は殺害しましょう」の言葉を無視し、再度問う。
「最後だ。何者だ?何をしている?」
汗と涙を流し、生者は答えた。
「た、助けてくれ」
俺はその生者を蹴り倒した。
足が固定された生者の両膝は、倒れる自重で砕けたようだ。
甲高い悲鳴を無視して、頭を掴み上げ、近くの岩に何度も、何度も叩きつけた。
砕けた頭蓋骨と、飛び散る脳漿に、僅かに溜飲が下がる。
次に向かう。
もう一人の生者は、大木に逆さまに吊るされていた。
大量の蔓草に巻きつかれ、青いミノムシのようだ。
顔の高さは同じくらいか。逆さだが。
俺が近づくと、草がモゾモゾと動き、口だけが見えた。
その赤い唇に、拳を叩き込みたい衝動が湧き上がる。
「答えろ。何者だ」
そいつは荒い息を吐き、うめく。
「ま、待ってくれ。取り引きしよう、森の主」
俺は我慢ならず、右手を振り上げた。
「ケイ様、わたくしに任せてみませんか?」
怒りに震えながらも、俺は手を下ろす。
勇者、聖女を倒す為だ。情報だ。間違えるな。
増悪に怒りを押し込み、ドライアドに答える。
「捕らえたのはお前だ、ドライアド」
「お任せください。右手を草に添えてください」
俺がミノムシに触れると、ミノムシの口の中目掛け、蔓草の先端が押し寄せる。
口をこじ開け、多数の蔓草がねじ込まれる。
このまま窒素か、体の内側から蔓草に侵食させたり、突き破るのもいいな。
この生者は、大した情報など持っていないだろう。
しかし、蔓草は一斉に引き抜かれた。
「答えなさい。あなたは何者ですか」
隣の木から声が発せられた。
生者はうめいていたが、ゆっくりと答えた。
「俺は…冒険者…だ。名はラゲン」
「では、冒険者ラゲン。あなたはここで何をしていたのですか?依頼内容は?」
「うう…俺とヒュウイは依頼で、ストーンバックの動向を探ろうと、行先…先回り…見張りと…罠を…位置を知るために」
俺は僅かに衝撃を受けた。
ドライアドは何をしたのだ。何故こんなに聞き出せる。
「他に仲間は?」
「ストーンバックの…討伐隊…救援…」
景色は色彩を取り戻す。右手から思念が伝わる。
「申し訳ありません。死んでしまいました」
「いや、十分だ。今のはスキルか?」
「森の中だけですが、わたくしの能力です」
よく考えたら、この辺り一体は、こいつの縄張りではないか。
「この森の生者の位置など、わかるのではないのか?」
「わたくしは、ケイ様に全て取り入ってしまい、もう森の把握はできません。このビュル、常にケイ様のおそばに全てがおります」
「そうか」
森の掌握は逃したが、ドライアドは使えるな。
ドロシーが「交渉で役立つ」と言っていたのは真実だろう。
しかし
油断するな。
依存するな。
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