おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。

はぶさん

文字の大きさ
7 / 185

第七話『露天風呂(ごえもんぶろ)を作ろう!』

しおりを挟む

拠点が完成してからというもの、俺たちの生活は劇的に安定した。
雨風をしのげる壁と屋根。夜の闇を照らす灯り。そして何より、隣で眠る温かい毛玉の相棒。
日中は森を探検して新しい食材を見つけ、夜はそれを調理して舌鼓を打つ。
満ち足りていた。満ち足りては、いたのだが……ただ一つ、どうしても我慢ならない問題があった。

「(……体、ベタベタする……!)」

その日も、俺は食料探しの成果を背負って拠点に戻ってきた。汗と、土埃と、よく分からない木の蜜で、全身が不快指数の塊と化している。
近くの川で体を拭くのが日課になってはいるが、気休めにしかならない。

「(ああ……湯船に浸かりたい……!足を伸ばして、肩までどっぷり……熱いお湯に……!)」

前世では、毎日当たり前のように享受していた文明の利器。それが今、どんなご馳走よりも魅力的に思えた。
腕の中で「キュ?」と首を傾げるシラタマの頭を撫でながら、俺は決意を固めた。

「なあ、シラタマ。俺たち、風呂を作らないか?」
「キュイ?」
「風呂だ、フロ!熱いお湯にザブンと入って、一日の疲れを洗い流す、最高に気持ちいいやつだ!」

俺は、昔テレビのサバイバル番組で見た、原始的な風呂の作り方を思い出していた。
地面に穴を掘って、そこに水を溜め、焚き火でカンカンに熱した石を放り込んで、お湯を作る。いわゆる「焼き石風呂」だ。

「よし、やろう!」

俺はシラタマに壮大な計画をプレゼンしながら、さっそく準備に取り掛かった。
まずは、湯船の材料だ。穴を掘るだけでは、水が地面に吸い込まれてしまう。防水のためのシートが必要だ。

「(これは、ケチってられないな……一番大きくて、一番丈夫なやつを……!)」

俺は、100均のレジャーコーナーで、ひときわ異彩を放っていた商品をイメージする。
コストは最大級になるはずだ。覚悟を決め、スキルを発動した。

**ポンッ!**

**【創造力:100/100 → 60/100】**

「うぉっ……!」

Aランク!一気に40も持っていかれた!
立っているのがやっとなくらいの、強烈な疲労感が全身を襲う。
だが、その代償は大きかった。目の前には、鮮やかな青色をした、巨大な『ブルーシート(3.6×3.6m)』が折り畳まれている。

「(……これさえあれば、なんとかなる)」

ふらつく足で、家の近くの、日当たりの良い平らな場所を選ぶ。
そして、召喚した『シャベル』で、ひたすら穴を掘り始めた。シラタマが「手伝う!」とばかりに、その小さな前足で土をカキカキしているのが、微笑ましくて疲れが和らぐ。

数時間後。そこには、大人が足を伸ばして入れるくらいの、楕円形の穴が完成していた。
その穴に、先ほどのブルーシートを丁寧に敷き詰め、石で縁を固定する。
 「(待てよ。熱した石を直接入れたら、さすがにシートが溶けるか……)」
俺は念のため、川から拾ってきた平たい石をいくつか選び、湯船の底に丁寧に敷き詰めた。これで直接焼き石がシートに触れることはない。断熱も完璧だろう。
これで、立派な湯船の原型が出来上がった。
「よし、次は水運びだ!」

俺はBランクの『折りたたみバケツ』を二つ召喚し、川と湯船を何往復もした。
重労働だが、湯船に少しずつ水が溜まっていく光景は、何物にも代えがたい達成感があった。

そして、最後の工程。お湯を沸かすための「焼き石」の準備だ。
どうやって、真っ赤に熱した石を安全に運ぶか。
俺の視線は、拠点の中で大切な存在感を放つ、あの黒い相棒に向けられた。

「(……そうだ。わざわざ新しい鍋を召喚するまでもない。こいつがあるじゃないか)」

俺は、先日ご飯を炊いた『一人用土鍋』を焚き火のそばに置くと、その中に川から拾ってきた、こぶし大の石をいくつも詰めた。土鍋は熱に強い。この中で直接石を熱して、そのまま運べばいい。

「(あとは、これをどうやって運ぶか、だな)」

熱々の土鍋を、素手で持つわけにはいかない。
俺は、調理器具コーナーの、分厚い布でできた商品をイメージした。

**ポンッ!**

**【創造力:60/100 → 50/100】**

Dランク。10消費。
手の中に、可愛らしいチェック柄の『鍋つかみ(ミトンタイプ)』が一組現れた。

「よし、これで完璧だ」

俺は、石の入った土鍋を焚き火の中に設置し、薪をくべて火力を上げていく。
湯船の準備はできた。水を沸かす道具も揃った。
パチパチと音を立てる焚き火の中で、土鍋の中の石たちが、少しずつ、しかし確実に、熱を帯びて赤く染まっていく。

その光景を、俺は完成したばかりの湯船の縁に腰掛けて、満足げに眺めていた。
その傍らには、出番を待つ鍋つかみが置かれている。

「よし、シラタマ」

俺は、隣で同じように焚き火を見つめている相棒の頭を撫でて、笑いかけた。
「明日、俺たちの初めての『お風呂』が完成するぞ!楽しみだな!」
「キュイ!」

シラタマの、期待に満ちた声が、穏やかな森の夕暮れに響き渡った。

(つづく)
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

DIYと異世界建築生活〜ギャル娘たちとパパの腰袋チート

みーくん
ファンタジー
気づいたら異世界に飛ばされていた、おっさん大工。 唯一の武器は、腰につけた工具袋—— …って、これ中身無限!?釘も木材もコンクリも出てくるんだけど!? 戸惑いながらも、拾った(?)ギャル魔法少女や謎の娘たちと家づくりを始めたおっさん。 土木工事からリゾート開発、果てはダンジョン探索まで!? 「異世界に家がないなら、建てればいいじゃない」 今日もおっさんはハンマー片手に、愛とユーモアと魔法で暮らしをDIY! 建築×育児×チート×ギャル “腰袋チート”で異世界を住みよく変える、大人の冒険がここに始まる! 腰活(こしかつっ!)よろしくお願いします

異世界に転生したら?(改)

まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。 そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。 物語はまさに、その時に起きる! 横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。 そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。 ◇ 5年前の作品の改稿板になります。 少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。 生暖かい目で見て下されば幸いです。

精霊さんと一緒にスローライフ ~異世界でも現代知識とチートな精霊さんがいれば安心です~

ファンタジー
かわいい精霊さんと送る、スローライフ。 異世界に送り込まれたおっさんは、精霊さんと手を取り、スローライフをおくる。 夢は優しい国づくり。 『くに、つくりますか?』 『あめのぬぼこ、ぐるぐる』 『みぎまわりか、ひだりまわりか。それがもんだいなの』 いや、それはもう過ぎてますから。

町工場の専務が異世界に転生しました。辺境伯の嫡男として生きて行きます!

トリガー
ファンタジー
町工場の専務が女神の力で異世界に転生します。剣や魔法を使い成長していく異世界ファンタジー

子育てスキルで異世界生活 ~かわいい子供たち(人外含む)と楽しく暮らしてます~

九頭七尾
ファンタジー
 子供を庇って死んだアラサー女子の私、新川沙織。  女神様が異世界に転生させてくれるというので、ダメもとで願ってみた。 「働かないで毎日毎日ただただ可愛い子供と遊んでのんびり暮らしたい」 「その願い叶えて差し上げましょう!」 「えっ、いいの?」  転生特典として与えられたのは〈子育て〉スキル。それは子供がどんどん集まってきて、どんどん私に懐き、どんどん成長していくというもので――。 「いやいやさすがに育ち過ぎでしょ!?」  思ってたよりちょっと性能がぶっ壊れてるけど、お陰で楽しく暮らしてます。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

小さいぼくは最強魔術師一族!目指せ!もふもふスローライフ!

ひより のどか
ファンタジー
ねぇたまと、妹と、もふもふな家族と幸せに暮らしていたフィリー。そんな日常が崩れ去った。 一見、まだ小さな子どもたち。実は国が支配したがる程の大きな力を持っていて? 主人公フィリーは、実は違う世界で生きた記憶を持っていて?前世の記憶を活かして魔法の世界で代活躍? 「ねぇたまたちは、ぼくがまもりゅのら!」 『わふっ』 もふもふな家族も一緒にたくましく楽しく生きてくぞ!

処理中です...