おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。

はぶさん

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第二十四話『騎士の新しい任務』

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リディアとの、奇妙な共同生活が始まってから、数日が過ぎた。
騎士として叩き込まれた習慣なのだろう。彼女は、夜明けと共に目を覚まし、拠点の前で剣の素振りを始めるのが日課だった。
一方の俺は、と言えば。

「ふあぁ……。おはよう、シラタマ、つちのこ」

大きく伸びをしながら、畑の様子を見に行く。つちのこに挨拶をし、作物の成長を確認するのが、俺の朝の習慣だ。シラタマは、その俺の足元でゴロゴロと転げ回っている。
あまりにも平和で、締まりのない光景。
それを見ながら、リディアが、いつも困惑したように眉をひそめているのが、少し面白かった。

「ユウキ殿。朝食の準備は、私がやろう」

その日、素振りを終えたリディアが、真剣な顔で申し出てきた。
「食客の身でありながら、何もしないのは性に合わん」
「はは、気持ちは嬉しいですけど、いいですよ。今日の朝食は、特別なんで」

俺は、かまどに火を熾すと、調理を始めた。
使うのは、森で採れたクルミに似た木の実を、石で潰して作った「ナッツフラワー」。それに、森の鳥の卵と、少しだけ召喚した『ベーキングパウダー』を混ぜ合わせる。
土鍋を改造したフライパンの上で、生地を焼くと、ぷうっと膨らみ、香ばしい匂いが立ち上った。
仕上げに、先日収穫したベリーで作ったソースをかければ、完成だ。

「さあ、どうぞ。『特製ナッツフラワー・パンケーキ』です」
「ぱん……けぇき……?」

干し肉と堅パンが常食だったリディアは、その、生まれて初めて見る料理に、目を白黒させている。
だが、一口食べると、その表情は驚愕に変わった。
ふわふわで、ナッツの香ばしい風味と、ベリーソースの甘酸っぱさが口いっぱいに広がる。

「こ、これが……野営の食事だというのか……!?毎日、このようなものを……?」
「まあ、食は、生活の基本ですから」

俺の言葉に、リディアは何か、途方もないものを見るような目で、ただ黙々とパンケーキを頬張っていた。

その日の午後。
リディアが、拠点の前で、自分のボロボロの鎧を並べて、深いため息をついていた。
いくつかのパーツは歪み、革のベルトは切れかけている。これでは、まともな戦闘は望めない。

「どうしたんですか?」
「……いや。この鎧も、もはやこれまでか、と思ってな」
「ちょっと、見せてもらえますか?」

俺は、彼女の鎧を手に取り、じっくりと観察する。
プロの鍛冶師ではない。だが、ブッシュクラフトとDIYの知識があれば、やれることはある。

俺は、スキルで、いくつかの道具を召喚した。

「(鎧を傷つけないように……**『小さなゴムハンマー』**と**『当て木』**。それから、革ベルトを縫うための**『革細工用の針と太い糸』**!)」

**ポンッ!ポンッ!ポンッ!**

**【創造力:120/120 → 95/120】**

Cランク相当の道具三つ。称号効果があっても、25消費は痛い。
だが、その価値はあった。
俺は、当て木をしながら、鎧の凹みを、内側から慎重に、コンコンと叩いていく。
そして、革細工用の太い針と糸で、切れたベルトを、驚くほど頑丈に縫い合わせていく。

「……ユウキ殿。貴様、一体何者なのだ……」

リディアが、唖然とした表情で俺の作業を見つめている。
「ただの、元フードコーディネーターですよ。刃物も、こういう道具も、仕事で多少は使ってましたから」

全ての修復を終え、最後に『金属磨きクロス』で鎧をピカピカに磨き上げる。
そこにあったのは、もはやボロボロの鎧ではなかった。新品同様の輝きを取り戻した、美しい騎士の鎧だ。

その夜。
体は全快し、鎧も修復された。リディアにとって、ここに留まる理由は、もうないはずだった。
彼女は、俺の前に、騎士として正式に、片膝をついた。

「ユウキ殿。私の身も、装備も、万全の状態に戻った。この御恩、もはや言葉では言い尽くせぬ。改めて問う。貴殿の望みを言え。これより私は、貴殿の望みを叶えるため、この剣を振るおう」

その真剣な申し出に、俺は本気で困惑した。
「いや、だから、そういうのは本当にいいって……!」
「そうはいかん!騎士は、受けた恩義に報いてこそ騎士!さあ、望みを!」

追い詰められた俺は、つい、心の奥にあった本音を漏らしてしまった。
**「の、望み、ですか……?ええと……それじゃあ、強いて言うなら……そろそろ**『石窯』**を作って、パンとかピザを焼いてみたいんですよねぇ……。でも、一人じゃ、窯に使う石とか粘土を運ぶのが、すごく大変で……」**

その言葉を聞いた瞬間、リディアは、雷に打たれたように固まった。
そして、数秒の沈黙の後、ゆっくりと顔を上げる。
その瞳には、今までにない、決意と、そして、どこか吹っ切れたような、明るい光が宿っていた。

彼女は、すっくと立ち上がると、剣を胸に当て、今までにないほど晴れやかな顔で、高らかに宣言した。

**「承知した、ユウキ殿!貴殿の望み、しかと拝命した!このリディア、貴殿への恩義に報いるため、その『石窯建造』という崇高なる任務が完遂されるまで、この剣と、この肉体を捧げることを、ここに誓おう!」**
「え、あ、はい……?じゃあ、とりあえず、そこの石運びから……?」

こうして、誇り高き騎士リディアの、**「ユウキのスローライフお助け隊」**としての、新たな任務が始まった。
俺たちの毎日は、これから、もっと騒がしく、そして、もっと楽しくなりそうだった。
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