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第二十五話『石窯設計と、最強の土木作業員』
しおりを挟むリディアが俺たちの仲間になってから、数日が過ぎた。
彼女は、自らに課した「スローライフお助け隊」の任務を、騎士の誓いにかけて、忠実に遂行していた。
つまり、朝は俺よりも早く起きて拠点の周りを警備し、日中は俺の森の探索に護衛として付き従い、そして、俺が作る食事を、誰よりも幸せそうに、そして大量に食べる、という毎日だ。
その日、俺は彼女に、新たな「任務」を与えることにした。
「ユウキ殿、それは何の陣形図だ?」
俺が地面に木の枝で描いていた、複雑な円と四角の図面を見て、リディアが不思議そうに尋ねる。
「これは、俺たちの食生活に革命を起こす、魔法の窯……**『石窯』**の設計図です!」
俺は、目を輝かせながら答えた。
ドーム状の天井がいかに熱を効率よく反射させるか、頑丈な土台がいかに重要か。そして、その窯が完成した暁に食べられる、究極の料理――「外はカリカリ、中はもちもち、チーズがとろーりとのびる、最高の**『ピザ』**」の存在を、フードコーディネーターの技術を駆使して、熱くプレゼンした。
「ぴざ……?」
「キュイ?(ぴざ!)」
リディアは未知の単語に首を傾げ、シラタマは、なぜかその響きだけで、最高に美味しいものであることを察知している。
「よし、決まりだ!リディアさん、シラタマ!第一回・石窯建造プロジェクト、開始します!」
俺は、まず必要な道具をリストアップし、召喚していく。
「(土台を完璧に作るための**『水平器』**と、粘土をこねる**『左官ごて』**!)」
**ポンッ!ポンッ!**
**【創造力:120/120 → 100/120】**
二つともDランク。称号効果もあって、合計20の消費で済んだ。
そして、ここからが、リディアの出番だ。
「まず、この窯の土台になる、大きくて平らな石が、たくさん必要です。川の上流に、いい石がたくさんあったんですが……」
俺が言い終わるか、終わらないかのうちに、リディアは「承知した!」と一つ返事。
森の奥へと駆け出していく。
数分後。
「ユウキ殿!この神殿の礎(いしずえ)は、どこに運べばよいか!」
リディアは、屈強な男でも一人では運べないであろう、巨大な石を、**まるで小石のように軽々と**抱えて戻ってきた。
「あ、はい、その辺にゴロンと置いといてください……」
俺の呆気にとられた返事に、彼女は満足げに頷くと、再び森へと駆け出していった。
最強の土木作業員、爆誕の瞬間だった。
シラタマは、リディアが運んできた石の上によじ登り、「きゅいきゅい!」と凱歌をあげている。
リディアが石を運び、俺がそれを『水平器』を使って、ミリ単位の精度で組み上げていく。
「なぜ、それほど完璧に平らにする必要があるのだ?多少の傾きなど、戦場では日常だぞ」
「頑丈な建物は、完璧な土台から作られるんですよ。料理も、建築も、基礎が一番大事なんです」
俺の言葉に、リディアは何かを学ぶように、深く頷いていた。
半日後。
俺たちの前には、完璧に水平で、頑丈な石の土台が完成していた。
「よし、第一段階はクリアだ。次は、窯の本体になる、粘土だな」
リディアが、再び「任せろ!」と森へ駆け出そうとするのを、俺は手で制した。
「待ってください、リディアさん。ただの粘土じゃダメなんです」
「む?」
俺は、設計図の「窯の心臓部」を指さした。
「普通の石や、この辺の粘土だけじゃ、ピザを焼くほどの高温には耐えられない。すぐにひび割れて、崩れてしまうんです。本当なら、専門の『耐火レンガ』が必要なんですが……」
「たいかれんが……?私の知らない素材だな。召喚はできんのか?」
「ええ。そんなものが、100均で買えるわけがありません」
絶望するリディア。
だが、俺は、不敵に笑った。
「でも、作ればいいんですよ。この世界で一番頑丈な、**『耐火粘土』**をね」
「作る……?粘土を、か?」
俺は、その問いには答えず、創造力を集中させた。
俺がイメージしたのは、完成品ではない。最高の建材を生み出すための、最高の**「素材」**だ。
**ポンッ!ポンッ!ポンッ!ポンッ!……**
**【創造力:100/120 → 40/120】**
Dランクのアイテムを、30個連続で召喚。合計60という、Aランク召喚を上回るコストを一気に消費し、俺の目の前には、オレンジ色の山が出来上がった。
それは、なんの変哲もない、**『素焼きの植木鉢』**の山だった。
「……ユウキ殿?貴殿は、石窯ではなく、花壇を作るつもりなのか……?」
混乱するリディアに、俺は金槌を手に取り、宣言した。
「いいえ、リディアさん。これから、この植木鉢を、全部粉々に砕きます」
「は……?」
「そして、この粉を、川の粘土に混ぜ込む。そうすれば、この世界で一番頑丈な、俺たちだけの『自家製・耐火粘土』が完成するんですよ」
俺の言葉に、リディアは、目の前で起きていることが信じられない、という顔で、ただ、植木鉢の山と、俺の顔を、交互に見つめるだけだった。
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