おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。

はぶさん

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第二十六話『植木鉢を砕く音と、新しい土の誕生』

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「これから、この植木鉢を、全部粉々に砕きます」

俺の宣言に、リディアは、まだ状況が飲み込めていないようだった。
俺はまず、手本を見せるように、金槌を手に取り、植木鉢の一つを力任せに叩き割る。
ガシャン!という音と共に、鉢はいくつかの破片になった。だが、これを粉々にするのは、骨の折れる作業だ。

「(……思ったより、硬いな)」

俺が、二つ目の鉢に悪戦苦闘していると、背後から、もどかしそうな声が飛んできた。

「ユウキ殿、代われ」
「え?」
「その任務の目的が、この陶器の『破壊』であるならば、私の方が適任のはずだ」

リディアは、俺から金槌をひったくると、それをまるで玩具のように軽々と構えた。
いや、違う。彼女は金槌を置くと、地面に転がっていた、俺の腕ほどもある太い木の枝を、棍棒のように握りしめた。

「はっ!」

短い気合と共に、彼女の一撃が、植木鉢の山へと叩き込まれる!

**ガッシャアアアアアアン!!**

森の静寂を切り裂く、凄まจい破壊音。
俺が数分かけてやっていた作業を、彼女は、たったの一撃で終わらせてしまった。
山だったはずの植木鉢は、見事なまでに粉々になっている。

その破壊音に驚いたシラタマが、舞い上がったオレンジ色の粉塵を浴びて、真っ白な毛皮を**「真っ茶色」**にして、目を回していた。

「……ふん。次なる指示を!」

リディアは、汗一つかかずに、誇らしげな顔で胸を張る。
彼女にとって、これもまた、ユウキの役に立つ、誇り高き「任務」なのだ。

「(……最強すぎるだろ、この土木作業員)」

植木鉢の粉末(グロッグ)が完成し、次はいよいよ、川で採ってきた粘土と混ぜ合わせる工程だ。
これもまた、大変な重労働。
リディアが、その怪力で、バケツの中の粘土を、まるでパン生地でもこねるかのように力強くこねていく。

「ユウキ殿!これでよいか!」
「あ、はい!じゃあ、もう少し水を足して……それから、そこの砂をひとつかみお願いします!」

俺は、フードコーディネーターのように、的確な指示を出していく。
その時、俺たちの足元にいた、つちのこが、そっとその粘土に小さな手を触れた。
すると、不思議なことに、粘土がより滑らかに、扱いやすくなっていくのが分かった。

「(……つちのこも、手伝ってくれてるのか)」

三人と一匹の、最高の共同作業。
やがて、俺たちの前には、今までにない、ざらりとした、しかし力強い質感の**『自家製・耐火粘土』**が、山のように出来上がった。

「よし、いよいよ、窯の心臓部、『ドーム』を作りますよ!」

だが、どうやって、綺麗な半球の形を作るのか。
リディアが「また私の力が必要か?」と腕まくりをするのを、俺は笑って制した。

「いえ、ここからは、力より、知恵の時間です」

俺は、石窯の土台の上に、まず、川で採ってきた**濡れた砂**を運び、それを手で固めながら、完璧な半球の「型」を作っていった。
そして、その砂の型の上に、完成したばかりの耐火粘土を、左官ごてで丁寧に、均一な厚さになるように塗り固めていく。

「……なるほど」

俺の作業を見て、リディアが感心したように呟いた。
「粘土が乾いたら、中の砂を掻き出す。そうすれば、完璧なドームだけが残る、というわけか……。ユウキ殿、貴様の知恵は、どこまで深いのだ」

その、あまりにも合理的で、賢い方法に、リディアはただただ感心するしかない。
数時間後。
俺たちの協力の末、美しい半球状の粘土のドームが、ついにその姿を現した。

俺は、その濡れた粘土のドームを、我が子のように愛おしく、そして満足げに眺めながら言った。

「よし、最高の形はできた」
「キュイ!(これでピザか!)」
「いや、まだだ、シラタマ。こいつが本当の『石窯』になるには、ここから、じっくりと乾かして、最後に、魂を吹き込むための**『火入れ式』**が必要なんだ」

最高のピザを食べるための、最後の、そして最も重要な我慢の時間。
俺たちの期待は、ゆっくりと乾燥していく粘土と共に、どこまでも高まっていく。
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