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第三十二話『究極の露天風呂計画と、鉄鍋の初仕事』
しおりを挟む行商人バロンが残してくれた新しい仲間たち――岩塩の塊、小麦の袋、そして黒光りする鉄の大鍋を前に、俺たちの次なる目標は、かつてないほど明確だった。
「よし、みんな!史上最高の『露天風呂』を作るぞ!」
俺の宣言に、シラタマが「キュイ!」と賛同の声を上げ、リディアも「うむ!任せろ!」と力強く頷いた。
翌朝、俺は温泉が湧き出る岩盤のそばに、木の枝で壮大な設計図を描き出した。それは、ただ穴を掘っただけの風呂ではない。湯船は肌触りの良い木で作り、その周りを保温性の高い石で囲む、本格的な岩風呂風の設計だ。源泉から清潔なお湯を引くための「湯路(ゆのみち)」まで緻密に計算されている。
「ユウキ殿……これはもはや、建築術の域だな。貴殿の頭の中には、一体どれだけの知識が詰まっているのだ」
「はは、ただの受け売りですよ。さあ、始めましょうか!」
プロジェクトは、三人と一匹、それぞれの得意分野を活かした完璧なチームワークで進められた。
まず、土木・運搬担当のリディアが、その怪力を存分に発揮する。露天風呂の土台となる巨大な平たい石を、森の奥から「よいしょ、よいしょ」と鼻歌交じりで運んでくる。俺が100均の『水平器』を当てながら「リディアさん、右をあと5ミリ……OKです!」と指示を出すと、彼女はミリ単位の精度で、ピタリと石を設置してくれた。
その間、俺は設計・加工担当として、木工に集中する。森から手頃な太さの木を切り出すと、スキルで召喚した『カンナ』をかけた。シュッ、シュッ、という心地よい音と共に、無骨な丸太が、湯船の材料となる、つるりとした美しい板へと生まれ変わっていく。
シラタマは、俺が削り出したカンナ屑の山がいたく気に入ったようで、その中にダイブしては、ふかふかのベッドのように丸まって寝息を立て始めた。最高の現場監督だ。
時折、畑からやってきたつちのこが、俺たちが掘った地面を、その不思議な力でキュッと固く締め、安定させてくれるのも、心強かった。
昼時、汗を流して腹を空かせた俺たちのために、ついにあの新しい仲間が初仕事を迎える。
バロンから譲り受けた『鉄製の大鍋』だ。
かまどにずしりと設置された大鍋は、これまでの土鍋とは比較にならないほどの存在感がある。俺はそこに、キバいのししの骨から取った出汁と、森で採れたキノコや根菜をたっぷりと投入した。岩塩を少し削り入れ、コトコトと煮込んでいく。やがて、拠点一体に、食欲を猛烈に刺激する、深く優しい香りが立ち込めた。
「すごい……大鍋一つで、これほどの量が。これが、部隊の炊き出しか……」
「さあ、最高のポトフができましたよ。たくさん食べて、午後も頑張りましょう!」
熱々のポトフは、労働で疲れた体に染み渡る、最高の御馳走だった。
午後の作業も順調に進み、ついに木製の浴槽がその形を現した。
そして、プロジェクトの仕上げは、バロンが残してくれたもう一つの宝物。
俺は、壺に入った『防水用の木タール』を、木の板の繋ぎ目に、丁寧に、慎重に塗り込んでいく。これで、水が漏れる心配は一切ない。100均スキルだけでは決して辿り着けなかった、完璧な防水加工だ。
陽が傾き、森がオレンジ色に染まる頃。
俺たちの前には、まだお湯は張られていないものの、誰が見ても立派な、石と木の露天風呂が、堂々と完成していた。
自分たちの手で、ゼロから作り上げた、最高の癒やしの城。
俺は、その美しい湯船を眺めながら、隣に立つ最高の仲間たちに微笑みかけた。
「明日が、楽しみですね」
その言葉に、リディアとシラタマは、今日一番の笑顔で、力強く頷いた。
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