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第四十話『未来を焼く窯と、新たなる計画』
しおりを挟む「ユキ殿…我々の城は、この一つのレンガから始まるのだな!」
リディアの言葉に、俺の創造力は翼を得た。そうだ、この奇跡の建材があれば、燻製小屋だって夢じゃない。俺は興奮のままに地面に詳細な設計図を描き、フードコーディネーターとしての知識を総動員して、理想の燻製小屋の構造を彼女に熱弁した。
だが、その熱が少しだけ冷めた頃、俺は現実に直面する。
設計図の傍らで、指を折りながら、必要なレンガの数を計算していた俺は、思わず「うわ…」と声を漏らした。
「どうしたのだ、ユキ殿?」
「いえ…この設計だと、火に直接触れる火室と煙道だけで、最低でも二百個はレンガが必要になりますね。俺たちのあの小さな窯で一個ずつ焼いていたら、燻製小屋が完成する前に、冬が来てしまいます」
最強の建材は手に入れた。だが、それを量産する『生産設備』が、圧倒的に不足している。
リディアが「なんと…」と息を呑む。
だが、俺はすぐに顔を上げた。問題があるなら、解決すればいい。いつだって、そうやってきたのだから。
「計画を変更します。燻製小屋を建てる前に、まず、俺たちの『工場』を作りましょう」
「工場…?」
「ええ。レンガを、効率よく、一度にたくさん焼くための、『レンガ焼成専用窯』です!」
俺たちの新たなプロジェクトは、目的を達成するための「道具作り」から始まった。
しかし、問題がある。レンガを焼くための窯を作るのに、肝心のレンガが足りないのだ。
だが、俺には、これまでの経験で培った技術があった。
「またハイブリッド構造です。心臓部だけを、俺たちの作った最高のレンガで。本体は、得意の石と土で作ります」
俺は地面に、今度はレンガ窯の設計図を描き始めた。熱が効率よく循環するように計算された、シンプルな角窯だ。
作業はすぐに始まった。
リディアが基礎となる石を運び、俺がその上に、つちのこ印の粘土を藁と混ぜて、分厚い土壁を積み上げていく。
そして、窯の最も重要な心臓部、すなわち、薪を燃やす燃焼室と、その熱を直接受ける床の部分に、俺は先日試作した『珪藻土入りレンガ』を、一つ一つ、祈るように丁寧に埋め込んでいった。
自分たちが生み出した最高の道具で、さらに優れた道具を生み出す。この、文明が発展していく過程そのものの作業に、俺はたまらない興奮を覚えていた。
数日後。
俺たちの前には、まだ湿ってはいるものの、石と土の壁の中に、美しい緋色のレンガが心臓部として輝く、新しい窯が完成していた。
それは、まだ火も入っていない、ただの土の塊だ。
だが、俺たちの目には、ここから生み出される無数のレンガが、未来の家を、パン窯を、そして燻製小屋を、形作っていく光景が見えていた。
俺は、誇らしげにそびえ立つ窯を見上げ、仲間たちに微笑みかけた。
「この窯が、俺たちの未来を焼き上げるんです」
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