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第四十二話『土台作りと、初めてのセメント』
しおりを挟む燻製小屋の建設、その第一歩は、何よりも重要な『基礎工事』から始まった。
「頑丈な建物には、頑丈な土台が必要です。そして、頑丈な土台には、石と石を繋ぐ、強力な接着剤が要ります」
俺はそう言って、次なる挑戦を宣言した。『セメント』作りだ。
俺の知識によれば、この森のどこかにあるはずの石灰石を高温で焼けば、セメントの主原料である『石灰』が作れる。俺たちは、川の上流を目指して、材料探しのための小さな探検に出た。
「ユキ殿、この白っぽい石はそうではないか?」
リディアが指さした、きめ細かな白い岩石。間違いなく、極上の石灰石だった。
拠点に石灰石を持ち帰り、俺は先日完成したばかりのレンガ窯に火を入れた。
石灰石を高温で熱し、焼き上がったそれに、慎重に水を加える。すると、ジュウッという音と共に、石が崩れ、白い粉末へと変化した。まさに、大人の化学実験だ。
「安全第一ですからね」
俺は念のため、100均の『保護メガネ』と『厚手のゴム手袋』を召喚して、作業を進めた。
ポンッ!ポンッ!
【創造力:150/150 → 148/150】
こうして完成した自家製セメントに、砂と水を混ぜて『モルタル』を作る。
リディアが運んできた基礎石の間に、俺がモルタルを塗り込み、水平器を当てながら、完璧な土台を作り上げていった。
そして、土台が固まるのを待つ間、いよいよレンガ積みだ。
先日大量生産したレンガを、自作のモルタルで一段、また一段と積み上げていく。設計図通りに、火室と煙道の美しいアーチ構造が姿を現していく様は、圧巻だった。
夏の強い日差しの下での重労働。俺は、仲間たちのために、最高の夏の飲み物を用意した。
森で採れる酸っぱい果実を搾り、蜂蜜と水を加え、そこに育てていた『天然酵母』をほんの少しだけ。数時間置くだけで、酵母が糖分を分解し、シュワシュワと心地よい泡を生み出してくれる。
川の水で冷やした『森のレモンスカッシュ』の完成だ。
「うむ!この甘酸っぱさと、喉を弾ける泡が、労働の疲れを忘れさせてくれるな!」
リディアも、シラタマも、初めて飲む天然の炭酸飲料の虜になったようだった。
その日の作業終わり。
俺たちの前には、がっしりとした石の土台と、そこから力強く立ち上がる、緋色のレンガで作られた火室と煙道が完成していた。
まだ小屋の形にはなっていない。だが、それは俺たちの食生活に革命を起こす、工房の、力強い心臓部だった。
俺たちは、レモンスカッシュを飲みながら、夕日に照らされるその光景を、大きな満足感と共に眺めていた。
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