おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。

はぶさん

文字の大きさ
54 / 185

第五十四話『秋支度と、薪小屋の壁』

しおりを挟む

俺たちの日常に、新しい仕事が加わった。
朝一番、リディアが気化熱式冷蔵庫の中を覗き込み、先日仕込んだチーズの様子を『温湿度管理日誌』に記録する。そして、俺の元へやってくると、ピシッと背筋を伸ばして報告するのだ。
「ユキ殿、チーズは今日も健在だ! 異常なし!」
その、どこまでも真面目で、少しだけズレた報告を聞くのが、俺のささやかな楽しみになっていた。

報告を受けながら、俺は朝の空気に混じる、澄んだ涼しさに秋の訪れを感じ取っていた。空はどこまでも高く、夏の湿った土の匂いは、乾いた落ち葉の香ばしい香りへと変わっている。
「リディアさん、そろそろ本格的な『秋支度』を始めましょう。まずは、冬を越すための薪集めです」

「任せろ!」と、リディアは森で集めてきた巨大な丸太を前に、自信満々に腕を組んだ。だが、斧はない。彼女は、騎士としての身体能力で、この問題を解決しようとした。
「ふんっ!」
気合一閃、彼女の渾身の蹴りが丸太に叩き込まれる。だが、丸太はびくともしない。
「むぅ…!私の力が、ただの木に劣るというのか!」

悔しがる彼女に、俺は笑いながら言った。
「力だけじゃダメなんですよ、リディアさん。薪作りには、乾燥という大事な工程があります。切ったばかりの生木は水分が多くて、煙ばかりで暖かくならないんです。それに、こういう時は、技を使います」

ポンッ!
【創造力:95/150 → 90/150】
俺が召喚したのは、Dランクの工具『スチールたがね』。金属製の、頑丈なクサビだ。
俺は丸太の亀裂にタガネを当て、自作の巨大な木槌を振り下ろす。カン、カン、という澄んだ金属音と共に、タガネは少しずつ丸太に食い込んでいき、やがて、パキーン!という心地よい音を立てて、巨大な丸太が綺麗に二つに割れた。
力よりも技が勝る。その光景に、リディアは「そうだったのか…!」と目から鱗が落ちたようだった。

薪を効率よく乾燥させるには、雨に濡らさず、風通し良く保管する専用の場所が必要だ。
「よし、『薪小屋』を作りましょう」

俺たちの新たなプロジェクトが始まった。リディアが柱となる木を運び、俺がそれを組んでいく。問題は、大量の薪を地面に直接置かないための土台だ。

ポンッ!
【創造力:90/150 → 70/150】
俺が召喚したのは、Cランクの丈夫な『プラスチック製のコンテナ』を数個。これを地面に逆さにして並べることで、地面からの湿気を防ぎ、下からの風通しも確保できる、完璧な土台を作り上げた。

その日から数日間、俺たちの拠点には新しいリズムが生まれた。
リディアが丸太を押さえ、俺がタガネを当てて木槌を振り下ろす。カン!パキーン!という小気味よい音が、秋の森に響き渡る。飛び散る木片を、シラタマが獲物のように追いかけてじゃれついている。最高の現場監督だ。
割った薪を、完成した薪小屋に、リディアが壁のように高く、美しく積み上げていく。

そして、全ての作業を終えた日の夕暮れ。
俺たちの前には、自分たちの手で作り上げた、冬を越すための熱量を象徴する「薪の壁」が、堂々とそびえ立っていた。
棚には瓶詰めの保存食、冷蔵庫ではチーズが静かに熟成し、そして庭には、山と積まれた薪。俺たちの冬への備えは、万全だった。

リディアはその壁を、感慨深げに見上げ、ぽつりと呟いた。
「…不思議だな。どんな城壁よりも、この薪の壁の方が、私にはずっと心強く、温かく見える」

その横顔は、俺が今まで見た中で、一番穏やかで、幸せそうだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

DIYと異世界建築生活〜ギャル娘たちとパパの腰袋チート

みーくん
ファンタジー
気づいたら異世界に飛ばされていた、おっさん大工。 唯一の武器は、腰につけた工具袋—— …って、これ中身無限!?釘も木材もコンクリも出てくるんだけど!? 戸惑いながらも、拾った(?)ギャル魔法少女や謎の娘たちと家づくりを始めたおっさん。 土木工事からリゾート開発、果てはダンジョン探索まで!? 「異世界に家がないなら、建てればいいじゃない」 今日もおっさんはハンマー片手に、愛とユーモアと魔法で暮らしをDIY! 建築×育児×チート×ギャル “腰袋チート”で異世界を住みよく変える、大人の冒険がここに始まる! 腰活(こしかつっ!)よろしくお願いします

精霊さんと一緒にスローライフ ~異世界でも現代知識とチートな精霊さんがいれば安心です~

ファンタジー
かわいい精霊さんと送る、スローライフ。 異世界に送り込まれたおっさんは、精霊さんと手を取り、スローライフをおくる。 夢は優しい国づくり。 『くに、つくりますか?』 『あめのぬぼこ、ぐるぐる』 『みぎまわりか、ひだりまわりか。それがもんだいなの』 いや、それはもう過ぎてますから。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

異世界に転生したら?(改)

まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。 そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。 物語はまさに、その時に起きる! 横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。 そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。 ◇ 5年前の作品の改稿板になります。 少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。 生暖かい目で見て下されば幸いです。

町工場の専務が異世界に転生しました。辺境伯の嫡男として生きて行きます!

トリガー
ファンタジー
町工場の専務が女神の力で異世界に転生します。剣や魔法を使い成長していく異世界ファンタジー

子育てスキルで異世界生活 ~かわいい子供たち(人外含む)と楽しく暮らしてます~

九頭七尾
ファンタジー
 子供を庇って死んだアラサー女子の私、新川沙織。  女神様が異世界に転生させてくれるというので、ダメもとで願ってみた。 「働かないで毎日毎日ただただ可愛い子供と遊んでのんびり暮らしたい」 「その願い叶えて差し上げましょう!」 「えっ、いいの?」  転生特典として与えられたのは〈子育て〉スキル。それは子供がどんどん集まってきて、どんどん私に懐き、どんどん成長していくというもので――。 「いやいやさすがに育ち過ぎでしょ!?」  思ってたよりちょっと性能がぶっ壊れてるけど、お陰で楽しく暮らしてます。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

小さいぼくは最強魔術師一族!目指せ!もふもふスローライフ!

ひより のどか
ファンタジー
ねぇたまと、妹と、もふもふな家族と幸せに暮らしていたフィリー。そんな日常が崩れ去った。 一見、まだ小さな子どもたち。実は国が支配したがる程の大きな力を持っていて? 主人公フィリーは、実は違う世界で生きた記憶を持っていて?前世の記憶を活かして魔法の世界で代活躍? 「ねぇたまたちは、ぼくがまもりゅのら!」 『わふっ』 もふもふな家族も一緒にたくましく楽しく生きてくぞ!

処理中です...