おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。

はぶさん

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第五十六話『回転式石臼と、恵みの香り』

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山と積まれた黄金色の小麦の粒を前に、リディアが不思議そうに尋ねた。
「ユキ殿、この硬い粒をどうやって、あのパンの粉にするのだ?石で叩き潰すのでは、日が暮れてしまうぞ」

俺は、地面に木の枝で壮大な設計図を描きながら、にやりと笑った。
「ええ、だからこれから、俺たちの『製粉工房』を作ります。ただの石臼じゃありません。人類の食の歴史が生んだ偉大な発明…最高の『回転式石臼』です」
俺は、石の表面に刻む放射状の溝が、穀物を効率よく外側へと運びながら、すり潰していく重要な役割を果たすことを熱弁した。

最高の石臼には、最高の石が必要だ。俺たちは、硬く、きめ細かい岩石を探しに、川の上流へと向かった。
川辺の岩を一つ一つ検分していく俺の肩の上で、いつの間にかついてきていたつちのこが、「あっち、あっち!」とでも言うように、小さな手である一点を指し示した。そこを掘ってみると、驚くほどきめ細かく、石臼に最適な、青みがかった美しい岩盤が眠っていた。

「頼みます、リディアさん!」
「うむ、任せろ!」
リディアがその怪力で切り出した巨大な岩を、俺は数日かけて、拠点の前で『タガネ』を使い、少しずつ、慎重に美しい円盤状へと加工していく。

そして、石臼の魂を刻む作業が始まった。俺はタガネを手に、円盤状に切り出した石の表面に、一本一本、祈るように溝を刻んでいく。それは、ただの模様じゃない。小麦に命を吹き込むための、魂を込めた作業だ。
だが、心臓部である『軸受け』の構造で、俺は腕を組んだ。石同士が直接擦れては、回転が重すぎる。

「(何か、滑りを良くする金属のパーツがあれば…そうだ!)」
ポンッ!
【創造力:140/150 → 135/150】
俺はDランクの建材、『金属製のドアノブ』を召喚した。そのパーツを上下の石臼の中心に埋め込むことで、驚くほど滑らかに回転する、高性能な軸受けを完成させた。

ついに、俺たちの製粉工房が完成した。
リディアが、初めて石臼の取っ手に手をかけ、ゆっくりと回し始める。
石と石が擦れるゴリゴリという重い音ではない。「スゥ…」という、ほとんど無音で、驚くほど滑らかな回転。
「な…!石が、まるで氷の上を滑るようだ…!」
リディアの驚きが、俺の発明の成功を証明していた。

俺は、石臼の上部の穴から、黄金色の小麦の粒をサラサラと流し込む。
リディアが石臼を回すと、その隙間から、ふわりと香ばしい香りと共に、栄養価の高い挽きたての『全粒粉』が流れ出してきた。

「さらに、最高の粉も作れますよ」
ポンッ!
【創造力:135/150 → 134/150】
俺はEランクの女性用の『ストッキング』を召喚。リディアが「ユキ殿、それは…脚に履くものではないのか…?」と真っ赤になる中、俺はそれを木の枠に張り、即席の『ふるい』を作った。
「これが…本当にあの粒と同じものなのか…?」
ふるいを通した粉は、ザラザラした全粒粉とは全く違う、指からこぼれ落ちるほどサラサラで、シルクのような手触り。その未知の感触に、リディアは言葉を失っていた。

その日の夕方。俺たちの前には、自分たちの手で育て、収穫し、そして挽いた、大量の小麦粉の山ができていた。
俺は、その真っ白な粉を一つまみ指に取り、香りを確かめる。それは、ただ香ばしいだけじゃない。俺たちの畑の土の匂い、夏の太陽の光、そして、仲間たちの汗が染み込んだ、生命力に満ちた、甘く、豊かな香りだった。

「これだけあれば、いつでも最高のパンが焼けますね」

最高のチーズが熟成する、その日まで。俺たちの食卓は、この挽きたての小麦粉が主役になるだろう。俺たちの未来が、どこまでも豊かに広がっていくのが、確かに見えた。
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