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第五十八話『チーズの王、誕生。そして約束の味』
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秋の穏やかな日差しが、俺たちの食卓を照らす朝。リディアが、いつになく緊張した面持ちで『温湿度管理日誌』を閉じた。
「ユキ殿…日誌によれば、チーズを仕込んでから、今日でちょうど三週間目だ」
俺は、静かに頷いた。「ついに、審判の時です」。俺のその一言に、拠点全体の空気が、期待と緊張で張り詰める。一同は固唾をのみ、俺に続いて気化熱式冷蔵庫へと向かった。
中から取り出したチーズの塊は、もはや仕込んだ時の瑞々しい白い塊ではなかった。水分が抜け、一回り小さく、硬くなり、表面は美しい象牙色に。そして、あたりには、ナッツのような、芳醇で、複雑な『熟成香』が漂い、一同は息をのんだ。
俺はナイフを手に取り、そのチーズに初めて刃を入れる。サクッ、という手応えの後に現れた断面は、見事なまでに緻密で、美しいクリーム色だった。
俺は、ひとかけらを口に含み、プロの顔で、その味を確かめる。舌の上でほろりと崩れると、凝縮されたミルクの旨味と、ナッツのようなコク、そして熟成によって生まれた、心地よい塩の結晶が弾けた。俺はゆっくりと目を開き、頷いた。
「…うん、最高の出来です。最高の『王様』が、生まれました」
この『味見の儀式』で、主役の登場を確信した。
最高の主役には、最高の脇役が必要だ。俺は畑で採れた新鮮な葉野菜で、サラダの準備を始めた。
ポンッ!
【創造力:129/150 → 128/150】
Eランクの『ドレッシングシェーカー』を召喚し、自家製の果実酢とナッツオイルで、完璧に乳化したドレッシングを作る。
「カルボナーラはとても濃厚ですからね。先に、このお酢の酸味で口の中をさっぱりさせておきましょう。主役を最高に味わうための、最高の準備です」
料理単体でなく、食事全体の流れを設計する。それが、俺の流儀だった。
そして、ついに、約束の時が来た。
食卓の上に、四つの食材が並ぶ。『自家製生パスタ』『自家製ベーコン』『森の卵』、そして、今完成したばかりの『自家製熟成チーズ』。
「リディアさん、本物のカルボナーラに、生クリームは使いません」
俺は、ベーコンを炒めた脂の旨味、パスタの茹で汁の塩分、そして卵黄と、惜しげもなくすりおろしたチーズが混ざり合う『乳化』こそが、最高のソースを生み出すのだと熱弁した。
鉄鍋の上で、次々と魔法のように組み合わさっていく食材たち。茹で上がったパスタが、卵とチーズの黄金色のソースをまとっていく。
完成したカルボナーラが、俺たちの作った陶器の皿に盛られる。立ち上る湯気、ベーコンの香ばしい香り、そして、チーズの王様の、豊かで深い香り。
一同は、フォークでパスタを巻き取り、最初の一口を、同時に口に運んだ。
次の瞬間、時が止まった。
あまりの美味さに、誰も言葉を発せない。濃厚なソース、ベーコンの塩気、そして、全てをまとめ上げるチーズの深いコク。ヤギを助けたあの日から始まった、数ヶ月にわたる俺たちの旅路そのものが、この一皿に凝縮されていた。
ただ、夢中でパスタをすする音だけが響く、幸福な「沈黙」の時間。
やがて、その沈黙を破ったのは、リディアの、震えるような呟きだった。
瞳に、うっすらと涙を浮かべながら。
「……これが…ユキ殿が言っていた、『約束』の味か…」
その一言に、全ての苦労が報われ、俺たちの心は、これ以上ないほどの幸福感に包まれるのだった。
「ユキ殿…日誌によれば、チーズを仕込んでから、今日でちょうど三週間目だ」
俺は、静かに頷いた。「ついに、審判の時です」。俺のその一言に、拠点全体の空気が、期待と緊張で張り詰める。一同は固唾をのみ、俺に続いて気化熱式冷蔵庫へと向かった。
中から取り出したチーズの塊は、もはや仕込んだ時の瑞々しい白い塊ではなかった。水分が抜け、一回り小さく、硬くなり、表面は美しい象牙色に。そして、あたりには、ナッツのような、芳醇で、複雑な『熟成香』が漂い、一同は息をのんだ。
俺はナイフを手に取り、そのチーズに初めて刃を入れる。サクッ、という手応えの後に現れた断面は、見事なまでに緻密で、美しいクリーム色だった。
俺は、ひとかけらを口に含み、プロの顔で、その味を確かめる。舌の上でほろりと崩れると、凝縮されたミルクの旨味と、ナッツのようなコク、そして熟成によって生まれた、心地よい塩の結晶が弾けた。俺はゆっくりと目を開き、頷いた。
「…うん、最高の出来です。最高の『王様』が、生まれました」
この『味見の儀式』で、主役の登場を確信した。
最高の主役には、最高の脇役が必要だ。俺は畑で採れた新鮮な葉野菜で、サラダの準備を始めた。
ポンッ!
【創造力:129/150 → 128/150】
Eランクの『ドレッシングシェーカー』を召喚し、自家製の果実酢とナッツオイルで、完璧に乳化したドレッシングを作る。
「カルボナーラはとても濃厚ですからね。先に、このお酢の酸味で口の中をさっぱりさせておきましょう。主役を最高に味わうための、最高の準備です」
料理単体でなく、食事全体の流れを設計する。それが、俺の流儀だった。
そして、ついに、約束の時が来た。
食卓の上に、四つの食材が並ぶ。『自家製生パスタ』『自家製ベーコン』『森の卵』、そして、今完成したばかりの『自家製熟成チーズ』。
「リディアさん、本物のカルボナーラに、生クリームは使いません」
俺は、ベーコンを炒めた脂の旨味、パスタの茹で汁の塩分、そして卵黄と、惜しげもなくすりおろしたチーズが混ざり合う『乳化』こそが、最高のソースを生み出すのだと熱弁した。
鉄鍋の上で、次々と魔法のように組み合わさっていく食材たち。茹で上がったパスタが、卵とチーズの黄金色のソースをまとっていく。
完成したカルボナーラが、俺たちの作った陶器の皿に盛られる。立ち上る湯気、ベーコンの香ばしい香り、そして、チーズの王様の、豊かで深い香り。
一同は、フォークでパスタを巻き取り、最初の一口を、同時に口に運んだ。
次の瞬間、時が止まった。
あまりの美味さに、誰も言葉を発せない。濃厚なソース、ベーコンの塩気、そして、全てをまとめ上げるチーズの深いコク。ヤギを助けたあの日から始まった、数ヶ月にわたる俺たちの旅路そのものが、この一皿に凝縮されていた。
ただ、夢中でパスタをすする音だけが響く、幸福な「沈黙」の時間。
やがて、その沈黙を破ったのは、リディアの、震えるような呟きだった。
瞳に、うっすらと涙を浮かべながら。
「……これが…ユキ殿が言っていた、『約束』の味か…」
その一言に、全ての苦労が報われ、俺たちの心は、これ以上ないほどの幸福感に包まれるのだった。
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