おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。

はぶさん

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第五十九話『家の心臓と、煙突の科学』

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秋が深まり、森の木々が燃えるような赤や黄色に色づき始めた。日中の日差しは穏やかで心地よいが、朝晩の空気は、もはや肌寒いというより、肌を鋭く刺すように冷たい。朝、水桶に薄い氷が張っているのを見つけた時、俺は冬がすぐそこまで来ていることを実感した。

日に日に毛の密度を増していくシラタマが、俺の膝の上で丸くなる時間も長くなった。俺たちの家は、雨風をしのぐには十分だ。だが、このままでは、厳しい冬の寒さを乗り切ることはできない。

その日の夜、俺は仲間たちを母屋のダイニングテーブルに集めた。まるで、作戦会議を開く騎士団のように。そして、壁の一角を指さしながら、次なる計画を発表した。
「ここに、俺たちの家の『心臓』を作ります。冬の間、俺たちを寒さから守ってくれる、常設の『室内暖炉』です」
「暖炉…!家の中に、火をか!」
リディアが驚きの声を上げる。彼女の知る焚き火は、常に屋外にある危険で、気まぐれなものだった。

「ええ。ですが、ただ火を焚くだけでは、家の中が煙だらけになってしまいます。重要なのは、この『煙突』の設計です」
俺は、地面に、暖炉と煙突の詳細な断面図を描き始めた。より正確な図面を引くため、スキルを発動する。

ポンッ!
【創造力:150/150 → 149/150】
Eランクの文房具セットから、『分度器』と『コンパス』を取り出した。
「煙は、暖かい空気に乗って上に昇ります。この上昇気流を、いかに効率よく、そして逆流させずに外へ逃がすかが、煙突の科学なんですよ」
俺は、熱効率を高めるための火室の形、そして、煙の逆流を防ぐための煙道内部に設ける「スモークチャンバー」というわずかな段差の重要性を、リディアに熱弁した。

「なるほど…煙の流れを、計算で制御するのか…!」
「基本は、先日作った『レンガ焼成専用窯』と同じです。あの時の熱循環の応用ですよ」
俺の言葉に、リディアは深く頷いた。これまでの経験が、着実に未来に繋がっている。その事実が、俺たちの自信になっていた。

シラタマは、俺が「この辺りが一番暖かくなりますよ」と示した暖炉の前の床に、すでに陣取り、完成後の特等席で幸せそうに丸くなっている。
リディアは、俺が描いた、まるで城の設計図のように緻密な図面を、畏敬の念を込めて見つめていた。

「計画は、ただの絵図では意味がない」
俺は立ち上がり、仲間たちに言った。
「最初の仕事を、始めましょう」

俺たちは、暖炉を設置する場所の床板を剥がし、土を固める。そして、リディアがその怪力で運んできた、巨大で、美しい平らな石を、暖炉の基礎となる最初の一個として、そこに静かに据え付けた。
最高のレンガ、最高のセメント、そして、最高の仲間。
冬を越すための、俺たちの最も重要で、最も野心的なプロジェクトの、最初の一歩が、今、確かに記されたのだった。
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