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第六十話『聖域に昇る、最初の煙』
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暖炉の基礎工事が完了した翌朝、俺たちの拠点には、秋の澄んだ空気と、心地よい緊張感が漂っていた。いよいよ、家の心臓を形作る、レンガ積みの工程が始まる。
「お願いします、リディアさん」
「うむ、任せろ!」
俺が自作のモルタルをレンガに塗り、リディアがそれを最高のタイミングで差し出す。俺は100均の**『水平器』**を片手に、ミリ単位の精度でレンガを積み上げていく。重いレンガを運び、モルタルを練る重労働はリディアが、精密な設置は俺が。二人の息の合った共同作業で、家の壁際に、美しい緋色の暖炉が少しずつ姿を現していった。
最大の難関は、煙突を屋根から貫通させる工事だった。俺は、俺たちの城の天井に、慎重にノコギリを入れる。火事にならないよう、熱対策には万全を期す必要がある。
ポンッ!
【創造力:150/150 → 135/150】
俺は、Cランクの専門的なアイテム、『耐火パテ』を召喚。煙突と屋根の木材の隙間を、この粘土のようなパテで完璧に塞ぎ、断熱と防水を両立させた。
数日後、ついに暖炉と煙突が完成した。俺が「よし、火入れ式をしますか」とライターを取り出し、最初の火を灯そうとした、その時だ。
「待て、ユキ殿!」
リディアが、いつになく真剣な顔で俺を制止した。
「家の心臓に魂を吹き込む、重要な儀式だ。もっと荘厳に行うべきだ!」
彼女が提案したのは、騎士の叙任式を模した、『聖火リレーの儀』だった。
まず、つちのこがどこからか持ってきた可愛らしい葉っぱで飾られたシラタмаが、「聖獣」として、焚き火から熾した火種を木の器に入れて運んでくる。シラタマは、その大役に緊張しているのか、いつもより心なしか歩き方がぎこちない。
そして、リディアがその器を恭しく受け取ると、俺の前に跪き、それを俺に「託す」のだ。その、どこまでも真面目で、少しズレた、しかし愛情に満ちた儀式に、拠点全体が温かい笑いに包まれた。
儀式を経て、俺は託された火種を、荘厳に(?)暖炉の中へ置いた。
小さな火は、丁寧に組んだ薪へと燃え移り、やがてゴウッと音を立てて、力強い炎となる。
「外へ!」
俺の合図で、一同は息をのんで、家の外の煙突を見守った。
一瞬の沈黙の後。
煙突の先から、まっすぐで、美しい一本の白煙が、秋の澄み切った空へと昇っていった。大成功の瞬間だ。
その夜、俺たちは初めて、自分たちの家の中で、揺れる炎を囲んでいた。
パチパチと薪がはぜる音。壁に映る、オレンジ色の優しい光。そして、じんわりと部屋全体に広がっていく、柔らかな暖かさ。
リディアが、うっとりとその炎を見つめながら、ぽつりと呟いた。
「…これが、『暖炉』か。私の知る、野営の焚き火とは全く違う。危険ではなく、ただ、温かい…」
その言葉に、俺は静かに頷いた。
それは、俺たちの家の心臓が、確かに鼓動を始めた証だった。
「お願いします、リディアさん」
「うむ、任せろ!」
俺が自作のモルタルをレンガに塗り、リディアがそれを最高のタイミングで差し出す。俺は100均の**『水平器』**を片手に、ミリ単位の精度でレンガを積み上げていく。重いレンガを運び、モルタルを練る重労働はリディアが、精密な設置は俺が。二人の息の合った共同作業で、家の壁際に、美しい緋色の暖炉が少しずつ姿を現していった。
最大の難関は、煙突を屋根から貫通させる工事だった。俺は、俺たちの城の天井に、慎重にノコギリを入れる。火事にならないよう、熱対策には万全を期す必要がある。
ポンッ!
【創造力:150/150 → 135/150】
俺は、Cランクの専門的なアイテム、『耐火パテ』を召喚。煙突と屋根の木材の隙間を、この粘土のようなパテで完璧に塞ぎ、断熱と防水を両立させた。
数日後、ついに暖炉と煙突が完成した。俺が「よし、火入れ式をしますか」とライターを取り出し、最初の火を灯そうとした、その時だ。
「待て、ユキ殿!」
リディアが、いつになく真剣な顔で俺を制止した。
「家の心臓に魂を吹き込む、重要な儀式だ。もっと荘厳に行うべきだ!」
彼女が提案したのは、騎士の叙任式を模した、『聖火リレーの儀』だった。
まず、つちのこがどこからか持ってきた可愛らしい葉っぱで飾られたシラタмаが、「聖獣」として、焚き火から熾した火種を木の器に入れて運んでくる。シラタマは、その大役に緊張しているのか、いつもより心なしか歩き方がぎこちない。
そして、リディアがその器を恭しく受け取ると、俺の前に跪き、それを俺に「託す」のだ。その、どこまでも真面目で、少しズレた、しかし愛情に満ちた儀式に、拠点全体が温かい笑いに包まれた。
儀式を経て、俺は託された火種を、荘厳に(?)暖炉の中へ置いた。
小さな火は、丁寧に組んだ薪へと燃え移り、やがてゴウッと音を立てて、力強い炎となる。
「外へ!」
俺の合図で、一同は息をのんで、家の外の煙突を見守った。
一瞬の沈黙の後。
煙突の先から、まっすぐで、美しい一本の白煙が、秋の澄み切った空へと昇っていった。大成功の瞬間だ。
その夜、俺たちは初めて、自分たちの家の中で、揺れる炎を囲んでいた。
パチパチと薪がはぜる音。壁に映る、オレンジ色の優しい光。そして、じんわりと部屋全体に広がっていく、柔らかな暖かさ。
リディアが、うっとりとその炎を見つめながら、ぽつりと呟いた。
「…これが、『暖炉』か。私の知る、野営の焚き火とは全く違う。危険ではなく、ただ、温かい…」
その言葉に、俺は静かに頷いた。
それは、俺たちの家の心臓が、確かに鼓動を始めた証だった。
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