おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。

はぶさん

文字の大きさ
60 / 185

第六十話『聖域に昇る、最初の煙』

しおりを挟む
暖炉の基礎工事が完了した翌朝、俺たちの拠点には、秋の澄んだ空気と、心地よい緊張感が漂っていた。いよいよ、家の心臓を形作る、レンガ積みの工程が始まる。

「お願いします、リディアさん」
「うむ、任せろ!」

俺が自作のモルタルをレンガに塗り、リディアがそれを最高のタイミングで差し出す。俺は100均の**『水平器』**を片手に、ミリ単位の精度でレンガを積み上げていく。重いレンガを運び、モルタルを練る重労働はリディアが、精密な設置は俺が。二人の息の合った共同作業で、家の壁際に、美しい緋色の暖炉が少しずつ姿を現していった。

最大の難関は、煙突を屋根から貫通させる工事だった。俺は、俺たちの城の天井に、慎重にノコギリを入れる。火事にならないよう、熱対策には万全を期す必要がある。

ポンッ!
【創造力:150/150 → 135/150】
俺は、Cランクの専門的なアイテム、『耐火パテ』を召喚。煙突と屋根の木材の隙間を、この粘土のようなパテで完璧に塞ぎ、断熱と防水を両立させた。

数日後、ついに暖炉と煙突が完成した。俺が「よし、火入れ式をしますか」とライターを取り出し、最初の火を灯そうとした、その時だ。
「待て、ユキ殿!」
リディアが、いつになく真剣な顔で俺を制止した。
「家の心臓に魂を吹き込む、重要な儀式だ。もっと荘厳に行うべきだ!」

彼女が提案したのは、騎士の叙任式を模した、『聖火リレーの儀』だった。
まず、つちのこがどこからか持ってきた可愛らしい葉っぱで飾られたシラタмаが、「聖獣」として、焚き火から熾した火種を木の器に入れて運んでくる。シラタマは、その大役に緊張しているのか、いつもより心なしか歩き方がぎこちない。
そして、リディアがその器を恭しく受け取ると、俺の前に跪き、それを俺に「託す」のだ。その、どこまでも真面目で、少しズレた、しかし愛情に満ちた儀式に、拠点全体が温かい笑いに包まれた。

儀式を経て、俺は託された火種を、荘厳に(?)暖炉の中へ置いた。
小さな火は、丁寧に組んだ薪へと燃え移り、やがてゴウッと音を立てて、力強い炎となる。
「外へ!」
俺の合図で、一同は息をのんで、家の外の煙突を見守った。
一瞬の沈黙の後。
煙突の先から、まっすぐで、美しい一本の白煙が、秋の澄み切った空へと昇っていった。大成功の瞬間だ。

その夜、俺たちは初めて、自分たちの家の中で、揺れる炎を囲んでいた。
パチパチと薪がはぜる音。壁に映る、オレンジ色の優しい光。そして、じんわりと部屋全体に広がっていく、柔らかな暖かさ。
リディアが、うっとりとその炎を見つめながら、ぽつりと呟いた。
「…これが、『暖炉』か。私の知る、野営の焚き火とは全く違う。危険ではなく、ただ、温かい…」
その言葉に、俺は静かに頷いた。
それは、俺たちの家の心臓が、確かに鼓動を始めた証だった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

DIYと異世界建築生活〜ギャル娘たちとパパの腰袋チート

みーくん
ファンタジー
気づいたら異世界に飛ばされていた、おっさん大工。 唯一の武器は、腰につけた工具袋—— …って、これ中身無限!?釘も木材もコンクリも出てくるんだけど!? 戸惑いながらも、拾った(?)ギャル魔法少女や謎の娘たちと家づくりを始めたおっさん。 土木工事からリゾート開発、果てはダンジョン探索まで!? 「異世界に家がないなら、建てればいいじゃない」 今日もおっさんはハンマー片手に、愛とユーモアと魔法で暮らしをDIY! 建築×育児×チート×ギャル “腰袋チート”で異世界を住みよく変える、大人の冒険がここに始まる! 腰活(こしかつっ!)よろしくお願いします

異世界に転生したら?(改)

まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。 そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。 物語はまさに、その時に起きる! 横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。 そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。 ◇ 5年前の作品の改稿板になります。 少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。 生暖かい目で見て下されば幸いです。

精霊さんと一緒にスローライフ ~異世界でも現代知識とチートな精霊さんがいれば安心です~

ファンタジー
かわいい精霊さんと送る、スローライフ。 異世界に送り込まれたおっさんは、精霊さんと手を取り、スローライフをおくる。 夢は優しい国づくり。 『くに、つくりますか?』 『あめのぬぼこ、ぐるぐる』 『みぎまわりか、ひだりまわりか。それがもんだいなの』 いや、それはもう過ぎてますから。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

町工場の専務が異世界に転生しました。辺境伯の嫡男として生きて行きます!

トリガー
ファンタジー
町工場の専務が女神の力で異世界に転生します。剣や魔法を使い成長していく異世界ファンタジー

子育てスキルで異世界生活 ~かわいい子供たち(人外含む)と楽しく暮らしてます~

九頭七尾
ファンタジー
 子供を庇って死んだアラサー女子の私、新川沙織。  女神様が異世界に転生させてくれるというので、ダメもとで願ってみた。 「働かないで毎日毎日ただただ可愛い子供と遊んでのんびり暮らしたい」 「その願い叶えて差し上げましょう!」 「えっ、いいの?」  転生特典として与えられたのは〈子育て〉スキル。それは子供がどんどん集まってきて、どんどん私に懐き、どんどん成長していくというもので――。 「いやいやさすがに育ち過ぎでしょ!?」  思ってたよりちょっと性能がぶっ壊れてるけど、お陰で楽しく暮らしてます。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

小さいぼくは最強魔術師一族!目指せ!もふもふスローライフ!

ひより のどか
ファンタジー
ねぇたまと、妹と、もふもふな家族と幸せに暮らしていたフィリー。そんな日常が崩れ去った。 一見、まだ小さな子どもたち。実は国が支配したがる程の大きな力を持っていて? 主人公フィリーは、実は違う世界で生きた記憶を持っていて?前世の記憶を活かして魔法の世界で代活躍? 「ねぇたまたちは、ぼくがまもりゅのら!」 『わふっ』 もふもふな家族も一緒にたくましく楽しく生きてくぞ!

処理中です...