おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。

はぶさん

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第六十一話『冬の菜園と、神様の温室』

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家の心臓である暖炉が完成し、その粘土がゆっくりと乾いていく数日間。秋はいよいよ深まり、畑から夏の作物が姿を消し始めていた。棚に並んだ保存食の瓶を眺めながら、俺はぽつりと呟く。
「冬の間、新鮮な葉物野菜が全く食べられないのは、健康的にも、精神的にも寂しいですよね」
俺の言葉に、リディアもシラタマもこくりと頷いた。

「そこで!」と俺は宣言する。「冬でも野菜が育てられる魔法の建物…**『温室』**を作りましょう!」
「冬に、野菜を…?氷点下では、どんな植物も凍てつくだろう」
訝しむリディアに、俺は温室の科学的な原理を解説した。
「太陽の光はビニールを通しますが、中の地面から出る熱は、外に逃げにくいんです。この『温室効果』を利用すれば、昼間の太陽熱を夜まで保ち、野菜を寒さから守れるんですよ」
「なるほど…太陽の暖かさだけを選んで通す、魔法の布というわけか!」
リディアの騎士らしい解釈に苦笑しつつ、俺たちは早速、拠点の南側の日当たりの良い場所に、温室の建設を始めた。

リディアがその怪力で木のフレームを支え、俺が組み上げていく。問題は、壁と屋根を覆う、透明なシートだ。

ポンッ!ポンッ!
【創造力:150/150 → 120/150】
俺が召喚したのは、Cランクの素材『テーブルクロス(ビニール製・大判)』を数枚と、Dランクの工具『タッカー』。
複数枚のテーブルクロスを、これまた召喚した『ビニールテープ』で繋ぎ合わせ、大きな一枚のカバーを作る。秋の風に煽られる巨大なビニールシートとの格闘の末、俺たちはそれを木の骨組みに、タッカーでバチン、バチンと、素早く、そして頑丈に固定していった。

数日後、俺たちの前には、太陽の光をたっぷりと取り込んでキラキラと輝く、小さな宝石のような温室が完成した。
そして、この温室を、誰よりも気に入ったのが、畑の神様である『つちのこ』だった。
暖かく、植物の匂いに満ちた温室は、土の精霊である彼にとって、まさに天国。俺たちが植えたコマツナやホウレンソウの苗の根本で、つちのこが気持ちよさそうに丸くなって眠る姿が、俺たちの新しい日常になった。
「神様が、お引越しされたみたいですね」
俺とリディアは、その微笑ましい光景を、邪魔しないようにそっと見守った。

さらに数日が過ぎた朝。
温室を覗いた俺とリディアは、信じられない光景を目にすることになる。
つちのこが住み着いたおかげか、植えたばかりで、か弱かったはずの冬野菜の苗が、ありえないほどのスピードで、青々と、そして力強く成長しているのだ。

「…これは、科学じゃないですね」
俺は、苗の横ですやすやと眠る、小さな神様に感謝するように呟いた。
「つちのこの、魔法ですよ」

俺たちの優しさが、畑の神様からの『奇跡』という形で返ってきた、最初の恩返しだった。
厳しい冬の間も、俺たちの食卓が、新鮮な緑で彩られることを、誰もが確信した瞬間だった。
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