おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。

はぶさん

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第六十三話『卓上機織り機と、創造の産声』

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完成したばかりの、温かい毛糸玉を手に、リディアが不思議そうに尋ねた。
「ユキ殿、この素晴らしい糸で、どうやってショールを作るのだ?一本の紐を、どうやって一枚の布に…?」

「糸を布に変えるための、新しい工房を作りましょう」
俺が地面に描いた設計図は、これまでで最も複雑で、最も精密な道具…**『卓上機織り機』**だった。
「これが、縦糸。そして、これが横糸。この組み合わせが、布になるんです」
俺は、その場で紡いだばかりの糸を数本指に絡め、リディアの目の前で、小さなコースターほどの「ミニチュア織物」を作って見せた。言葉だけでなく、実物で見せることで、彼女の理解は一気に深まったようだった。

その日から、俺たちの拠点には、新しい「工房の音」が響き始めた。
まず、頑丈なフレームを組むための、主要な部材を召喚する。

ポンッ!ポンッ!
【創造力:150/150 → 137/150】
Dランクの『工作用の木材ブロック』と『木ネジセット』、そしてEランクの『紙やすり』だ。
俺が『手動ドリル』で木の板に穴を開ける「キュルキュル」という音。リディアが、切り出した木材の角を紙やすりで丁寧に磨く「シュッシュッ」という音。
このDIYで求められるのは、ミリ単位の『精密さ』。ここで、リディアの新しい才能が開花した。彼女は、木ネジを締め上げながら、ぽつりと呟く。
「…なるほど。これは、寸分の狂いなく剣の柄を締め上げる感覚や、弓の弦を張り詰める時の指先の力加減と、全く同じだ」
彼女の過去の経験が、今の創造に直接繋がっている。その姿に、俺は「彼女も、すっかり『作る側』の人間になったな」と、心の中で感慨にふけっていた。

横糸を打ち込む『筬(おさ)』には、100均の意外なアイテムを活用する。
ポンッ!
【創造力:137/150 → 135/150】
Eランクの『プラスチック製のクシ』だ。これを木の枠に固定し、完璧な代用品を作り上げた。

数日後、ついに、素朴ながらも機能的な『卓上機織り機』が完成した。
俺たちは、自分たちが紡いだ毛糸を、縦糸として一本一本、丁寧に機に張っていく。
ピンと張られた縦糸を、シラタマがギターの弦のように「ビヨーン」と弾いて遊び、その音に驚いたメイが飛び跳ねる。つちのこも、家の入り口から、その複雑な機械の構造を、不思議そうにじっと見つめていた。

全ての準備が整った。
俺は、横糸を巻いた『杼(ひ)』を、リディアに手渡す。
「リディアさん、最初の一織りを、どうぞ」

リディアは、固唾をのんで頷くと、綜絖を操作して縦糸を上下させる。
カタン、と木の部品が心地よい音を立てる。
開いた縦糸の隙間に、彼女の緊張した手によって、俺たちの歴史で初めて、一本の横糸が通り抜ける。
そして、クシで作った筬で、その糸を自分の方へ引き寄せる。
トン、と柔らかく、しかし確かな音が響いた。

それは、これまでの地道な工房の音の果てに生まれた、俺たちが、ついに『布』という文明を手に入れた、記念すべき創造の産声だった。
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