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【第百十話】『聖域の玄関(げんかん)と、泥の戦争』
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春の長雨が続く、ある日の朝。
拠点周りに敷いたレンガの小道は素晴らしい働きをしていたが、問題は、その道と母屋の入り口を繋ぐ、最後の数歩だった。その空間は、雨と俺たちの往来で、ぬかるんだ泥沼と化していたのだ。
朝の巡回から戻ったリディアは、ブーツについた泥を、入り口の石で懸命にこそげ落とす。しかし、完全には落としきれず、母屋の床は、どうしても泥で汚れてしまう。
そして、一番の被害者は、もちろんシラタマだ。彼は、泥で汚れた前足で家に入ってきては、可愛い、しかし非常に厄介な足跡を、あちこちにつけてしまう。
「むぅ…!この泥濘(ぬかるみ)は、ゴブリンの軍勢よりも厄介だ…!何度拭いても、きりがない…!」
リディアの嘆きに、俺は「戦っても勝てない敵なら、戦わずして勝つための『仕組み』を作るんですよ」と、新たなインフラ整備を宣言した。
俺が提案したのは、ただの入り口ではない、**『玄関』**という、聖域の内と外を明確に分ける、新しい空間の創造だった。
「玄関とは、外の汚れを内に持ち込まないための、フィルターであり、結界です。靴を脱ぎ、心を整え、家という聖域に入るための、神聖な場所なんですよ」
その説明に、リディアは衝撃を受けていた。
「家の中で、ブーツを脱ぐ…だと…!?それは、あまりにも無防備ではないか!?敵襲に即座に対応できん!」
俺は、そんな彼女の騎士としての懸念に、穏やかに微笑みかけた。
「いいんですよ、無防備で。ここは、鎧も、ブーツも、そして心の武装さえも解いていい、俺たちの『家』なんですから」
その言葉に、リディアはハッとさせられた。
俺は、この文化革命を実現するため、100均グッズを駆使して、最高の玄関を作り上げる。
まずは、玄関の外に、泥を落とすためのマットと、濡れたブーツを乾かしながら収納するための棚。
ポンッ!ポンッ!
【創造力:73/150 → 53/150】
Dランクの『コイヤーマット(ヤシ繊維のマット)』と、Cランクの『組み立て式のシューズラック』。コストは合わせて20。
そして、このプロジェクトの切り札を召喚する。100円ショップで300円商品として売られている、魔法の石だ。
ポンッ!
【創造力:53/150 → 25/150】
Bランクの『珪藻土(けいそうど)バスマット』。コストは28。
「リディアさん、この石は、水を飲む魔法の石なんですよ」
俺が、濡れた靴下のままマットの上に立つと、足跡が、すぅっと、まるで魔法のように消えていく。その、あまりにも不可思議な光景に、リディアは言葉を失っていた。
新しい玄関が完成し、一同は、新しい作法を学ぶ。
リディアは、少しぎこちないながらも、マットで泥を落とし、ブーツを脱ぎ、珪藻土マットの上に立つ。そして、手編みの靴下で、初めて清潔な家の床を歩く。その、あまりにも心地よく、そして温かい感触に、彼女は驚きを隠せない。
最大の難関は、もちろんシラタマだ。彼は、コイヤーマットを巨大な爪とぎと勘違いしたり、シューズラックを新しい遊び場にしようとしたり。俺とリディアは、根気よく、彼に「お座り」と「お手(足拭き)」を教える。
ポンッ!
【創造力:25/150 → 24/150】
Eランクの『マイクロファイバータオル』で、その大きな肉球を一つ一つ拭いてあげる。やがて、彼は、家に入る前には、マットの上でちょこんと座り、誇らしげに前足を差し出す、賢い聖獣へと成長したのだった。
その日の夜。外は、また激しい雨。
リディアが、巡回から戻ってくる。彼女は、新設された屋根の下で、落ち着いてブーツの泥を落とし、シューズラックにそれを収める。そして、珪藻土マットで足元を清め、静かに、母屋の扉を開けた。
暖炉の前で本を読んでいた俺の背中に、彼女の、少しだけ照れくさそうな、しかし、どこまでも温かい声がかけられる。
「…ただいま、戻った」
その、彼女の口から初めて発せられた『ただいま』という言葉。
俺は、顔を上げ、最高の笑顔で言った。
「ええ、おかえりなさい、リディアさん」
一同は、暖炉の前で、温かいお茶を飲んでいた。外では雨が降り続いている。しかし、家の中は、どこまでも清潔で、温かく、そして穏やかな空気に満ちている。
リディアは、手編みの靴下に包まれた自分の足先を、愛おしそうに見つめていた。
(無防備…か。だが、これほどまでに心が安らぐのならば、それも悪くない…)
彼女は、生まれて初めて、『帰る場所』というものの、本当の意味を、その足の裏から、そして、心の芯から、理解したのだった。
拠点周りに敷いたレンガの小道は素晴らしい働きをしていたが、問題は、その道と母屋の入り口を繋ぐ、最後の数歩だった。その空間は、雨と俺たちの往来で、ぬかるんだ泥沼と化していたのだ。
朝の巡回から戻ったリディアは、ブーツについた泥を、入り口の石で懸命にこそげ落とす。しかし、完全には落としきれず、母屋の床は、どうしても泥で汚れてしまう。
そして、一番の被害者は、もちろんシラタマだ。彼は、泥で汚れた前足で家に入ってきては、可愛い、しかし非常に厄介な足跡を、あちこちにつけてしまう。
「むぅ…!この泥濘(ぬかるみ)は、ゴブリンの軍勢よりも厄介だ…!何度拭いても、きりがない…!」
リディアの嘆きに、俺は「戦っても勝てない敵なら、戦わずして勝つための『仕組み』を作るんですよ」と、新たなインフラ整備を宣言した。
俺が提案したのは、ただの入り口ではない、**『玄関』**という、聖域の内と外を明確に分ける、新しい空間の創造だった。
「玄関とは、外の汚れを内に持ち込まないための、フィルターであり、結界です。靴を脱ぎ、心を整え、家という聖域に入るための、神聖な場所なんですよ」
その説明に、リディアは衝撃を受けていた。
「家の中で、ブーツを脱ぐ…だと…!?それは、あまりにも無防備ではないか!?敵襲に即座に対応できん!」
俺は、そんな彼女の騎士としての懸念に、穏やかに微笑みかけた。
「いいんですよ、無防備で。ここは、鎧も、ブーツも、そして心の武装さえも解いていい、俺たちの『家』なんですから」
その言葉に、リディアはハッとさせられた。
俺は、この文化革命を実現するため、100均グッズを駆使して、最高の玄関を作り上げる。
まずは、玄関の外に、泥を落とすためのマットと、濡れたブーツを乾かしながら収納するための棚。
ポンッ!ポンッ!
【創造力:73/150 → 53/150】
Dランクの『コイヤーマット(ヤシ繊維のマット)』と、Cランクの『組み立て式のシューズラック』。コストは合わせて20。
そして、このプロジェクトの切り札を召喚する。100円ショップで300円商品として売られている、魔法の石だ。
ポンッ!
【創造力:53/150 → 25/150】
Bランクの『珪藻土(けいそうど)バスマット』。コストは28。
「リディアさん、この石は、水を飲む魔法の石なんですよ」
俺が、濡れた靴下のままマットの上に立つと、足跡が、すぅっと、まるで魔法のように消えていく。その、あまりにも不可思議な光景に、リディアは言葉を失っていた。
新しい玄関が完成し、一同は、新しい作法を学ぶ。
リディアは、少しぎこちないながらも、マットで泥を落とし、ブーツを脱ぎ、珪藻土マットの上に立つ。そして、手編みの靴下で、初めて清潔な家の床を歩く。その、あまりにも心地よく、そして温かい感触に、彼女は驚きを隠せない。
最大の難関は、もちろんシラタマだ。彼は、コイヤーマットを巨大な爪とぎと勘違いしたり、シューズラックを新しい遊び場にしようとしたり。俺とリディアは、根気よく、彼に「お座り」と「お手(足拭き)」を教える。
ポンッ!
【創造力:25/150 → 24/150】
Eランクの『マイクロファイバータオル』で、その大きな肉球を一つ一つ拭いてあげる。やがて、彼は、家に入る前には、マットの上でちょこんと座り、誇らしげに前足を差し出す、賢い聖獣へと成長したのだった。
その日の夜。外は、また激しい雨。
リディアが、巡回から戻ってくる。彼女は、新設された屋根の下で、落ち着いてブーツの泥を落とし、シューズラックにそれを収める。そして、珪藻土マットで足元を清め、静かに、母屋の扉を開けた。
暖炉の前で本を読んでいた俺の背中に、彼女の、少しだけ照れくさそうな、しかし、どこまでも温かい声がかけられる。
「…ただいま、戻った」
その、彼女の口から初めて発せられた『ただいま』という言葉。
俺は、顔を上げ、最高の笑顔で言った。
「ええ、おかえりなさい、リディアさん」
一同は、暖炉の前で、温かいお茶を飲んでいた。外では雨が降り続いている。しかし、家の中は、どこまでも清潔で、温かく、そして穏やかな空気に満ちている。
リディアは、手編みの靴下に包まれた自分の足先を、愛おしそうに見つめていた。
(無防備…か。だが、これほどまでに心が安らぐのならば、それも悪くない…)
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