37 / 166
第三十六話:宝の山と、街の循環
しおりを挟む
ひまわりの最初の芽が顔を出してから、数日が過ぎた。『実験農場』での朝は、その小さな緑の双葉の成長を確認することから始まるのが、俺たちの新しい習慣となっていた。
「まあ!昨日よりも、ほんの少しだけ、背が伸びていますわ!」
今日も、俺の隣で畝を覗き込んでいたエレナ様が、宝物でも見つけたかのように、嬉々とした声を上げる。その横顔は、初めて見る生命の神秘に心を奪われた、純粋な探求者のそれだった。
「はい。この子たちは、今、一生懸命に大きくなろうとしています。ですが……」
俺は、畝の土を指先でそっとすくい上げ、彼女に見せた。
「このままでは、すぐに土の中のご馳走が、全部なくなってしまいます」
俺の言葉に、エレナ様は不思議そうに首を傾げる。俺は、彼女にも分かるように、言葉を選んで説明を続けた。
「僕たちが毎日ご飯を食べるのと同じで、植物たちも、土の中からたくさんの栄養をもらって大きくなります。特に、ひまわりのような大きくなるお花は、ものすごい大食漢なんです。このままでは、栄養が足りなくなって、大きく、強いお花を咲かせることができません」
「では、どうすれば……。また、あの不思議な栄養の粒を使うのですか?」
彼女が言うのは、雪中花の時に使った馬糞や灰、そしてリーフ村のハウスで使った『化学肥料の粒』のことだろう。だが、俺は静かに首を横に振った。
「もっと、良いものがあります。この子たちのために、僕が、最高の『ご馳走』を作ってあげます」
俺の、自信に満ちた宣言。それは、この城壁都市ランドールに、リーフ村の『陽だまりの家』とはまた違う、新たな革命をもたらすことになる、壮大な計画の始まりを告げるものだった。
その計画の名は、『堆肥(コンポスト)作り』。この世界の誰もまだ知らない、有機物を微生物の力で分解させ、最高の肥料へと生まれ変わらせる、錬金術にも似た、大地への恩返しだ。
◇
「……それで?その、最高の『ご馳走』とやらは、どこで手に入れるのですか?」
エレナ様の、純粋な問いに、俺はにやりと笑って答えた。
「これから、探しに行きます。この街は、宝の山ですから」
俺の言葉の意味が分からず、きょとんとしているエレナ様を促し、俺たちはセバスチャンとギデオンを伴って、実験農場を出た。行き先は、ランドールで最も活気に満ちた場所、中央市場だ。
朝の市場は、まさしく戦場のような喧騒に満ちていた。威勢のいい八百屋の親父の怒鳴り声。新鮮な魚を運ぶ男たちの掛け声。そして、値切ろうとする客と、それを頑として譲らない商人の、丁々発止のやり取り。その全てが、この街が生きていることを、力強く主張していた。
だが、俺が目指したのは、そんな市場の華やかな表通りではない。その裏手にある、薄暗く、少しだけ生ゴミの匂いが漂う、裏路地だった。
そこには、各商店が捨てたであろう、野菜くずや果物の皮が、木の樽の中に山と積まれている。
「こ、これは……」
エレナ様が、思わず鼻をつまむ。セバスチャンに至っては、顔面蒼白で、今にも倒れそうだ。
「ル、ルークス殿……!いくらなんでも、お嬢様をこのような不潔な場所に……!」
「セバスチャン、静かに。ルークスさんには、何かお考えがあるのですわ」
エレナ様は、匂いに顔をしかめながらも、俺の行動を、好奇心に満ちた瞳で見守っていた。
俺は、その野菜くずの山の中から、まだ新鮮なキャベツの外葉や、大根の皮などを、手際よく選り分け始めた。
「おい、小僧!何してやがる!」
突然、背後から鋭い声が飛んだ。振り返ると、そこには腕っぷしの強そうな、八百屋の店主らしき男が、仁王立ちでこちらを睨んでいた。
「人の店のゴミを漁るとは、いい度胸じゃねえか。物乞いなら、他所でやんな!」
「物乞いじゃありません。これは、取引です」
俺は、臆することなく、男の目を真っ直ぐに見返した。
「この、あんたたちが捨てている野菜くずを、俺に譲ってもらえないでしょうか」
俺の、あまりにも突飛な申し出に、店主は呆気に取られたという顔をした。
「……はあ?ゴミを、譲れだと?頭でも打ったのか、お前」
「これは、ゴミじゃありません。俺にとっては、宝の山なんです」
俺は、真剣な眼差しで訴えた。
「これを、特別な方法で土に返してやれば、どんな痩せた土地でも蘇らせる、最高の肥料になる。もし、この街の農家が、あんたたちの野菜くずを欲しがるようになったら、どうなります?」
俺の言葉に、店主の目が、ぴくりと動いた。商人としての勘が、目の前の子供が、ただの戯言を言っているのではないと告げているのだ。
「あんたたちは、今まで金を払って捨てていたゴミを、農家に売ることができるようになるかもしれない。……俺は、その最初の客になりたい。(タダでもらうこともできるだろうが、それでは『取引』にならない。持続可能な関係を築くためには、初期投資が必要だ。相手に『ゴミが金になった』という成功体験を植え付けるための銅貨一枚。費用対効果は、計り知れない)もちろん、今はまだ価値がないから、タダで、とは言いません。この野菜くず全部で、銅貨一枚。どうです?」
俺が、懐から銅貨を一枚差し出すと、店主は、信じられないというように、俺の顔と、銅貨と、そして野菜くずの山を、何度も見比べた。ゴミが、金になる。その、あまりにも常識外れな提案に、彼の頭は完全についていけていないようだった。
やがて、彼は、がしがしと頭を掻きながら、大きなため息をついた。
「……わけのわかんねえ小僧だな。まあいいや、銅貨一枚で片付くなら、安いもんだ。好きに持っていきな!」
商談は、成立した。俺は、持参した麻袋に、宝の山を詰め込んでいく。その光景を、エレナ様は、尊敬の眼差しで、そしてセバスチャンは、この世の終わりのような顔で、見つめていた。
◇
次に俺たちが向かったのは、城壁の近くにある、騎士団の馬小屋だった。ここには、俺が求める第二の宝、つまり、大量の馬糞がある。
市場の野菜くずとは比べ物にならない、強烈な匂いに、エレナ様もセバスチャンも、今度こそ完全に言葉を失っていた。
馬小屋の管理をしていたのは、人の良さそうな、初老の兵士だった。俺が、馬糞を少し分けてもらえないかと頼むと、彼は八百屋の店主以上に、怪訝な顔をした。
「坊主、本気で言ってるのか?こんな臭いもん、どうするんだ?」
「最高の肥料になるんです。ひまわりを、太陽まで届くくらい、大きく育てるための」
俺が、目を輝かせてそう言うと、兵士は「ひまわり、ねえ」と、何かを懐かしむように、遠い目をした。
「昔、南の国にいた頃、見たことがある。見渡す限り、黄金色の花が咲いていて、まるで、地面に太陽が降りてきたようだった。……いいだろう。あの花を、この凍てついた北の地で咲かせようって言うんなら、いくらでも持っていきな。どうせ、捨てるだけのものだ」
幸運にも、彼は話の分かる男だった。俺は、心からの感謝を告げ、野菜くずとは別の麻袋に、第二の宝を、ぎっしりと詰め込んだ。
俺が深々と頭を下げた、その瞬間。
――ピロン♪
俺の脳内にだけ、心地よい電子音が響いた。
【称号の効果範囲外です。**通常ポイントとして、他者からの純粋な協力の意志を検知しました。5ポイントを獲得しました。**】
(**…5ポイントか。エレナ様の時とは違うけど、それでも嬉しい。**この街でも、人の温かい心は、ちゃんとポイントになるんだ)
俺は、誰にも気づかれないように、そっと笑みを浮かべた。
◇
実験農場に戻った時には、日はすでに高く昇っていた。俺たちが、異臭を放つ二つの巨大な麻袋を荷馬車から降ろすのを、ギデオンが、無言で、しかし力強く手伝ってくれた。
俺は、農場の隅の、日当たりの良い場所を指さした。
「よし。ここに、ご馳走のレストランを作りましょう」
俺は、まず地面に枯れ葉や小枝を敷き詰めた。レストランの、ふかふかの絨毯だ。
次に、市場で手に入れた野菜くずを、その上に広げる。これが、メインディッシュ。
そして、最後に、馬小屋から運んできた馬糞を、スパイスのように振りかける。
「う……!」
強烈な匂いに、セバスチャンが再び膝から崩れ落ちそうになるのを、ギデオンが屈強な腕で支えている。
「ルークスさん、本当に、これで……?」
エレナ様が、不安そうに尋ねる。
「はい。これから、土の中にいる小さな、目に見えない生き物たちが、このレストランに集まってきて、パーティーを始めるんです。彼らがいっぱい食べて、いっぱい遊んだ後には、最高の土だけが残る。それが、堆肥です」
俺は、最後に土をかぶせて、小さな山を完成させると、満足げにその頂点を叩いた。
それは、他の誰が見ても、ただの汚いゴミの山にしか見えないだろう。
だが、俺と、そして俺を信じるエレナ様の目には、未来のひまわりを黄金色に輝かせる、まさしく『宝の山』に、見えていた。
この小さな山が、やがてこの街の「常識」を、そして「循環」そのものを、根底から変えていくことになる。
その、壮大な食料革命の、産声が、今、静かに上がったのだ。
【読者へのメッセージ】
第三十六話、お読みいただきありがとうございました!
「堆肥作り」という、これ以上なく地味で、しかし重要な挑戦。そして、それを巡る街の人々との交流、楽しんでいただけましたでしょうか。ルークスの革命が、少しずつ街へと広がっていく予感を感じていただければ幸いです。
「ゴミを宝の山に!ルークスの交渉術、すごい!」「セバスチャンの心労が…(笑)」「不器用なギデオンの優しさ、好き!」など、皆さんの感想や応援が、堆肥の発酵を促す微生物たちのエネルギーになります。下の評価(☆)やブックマークも、ぜひよろしくお願いいたします!
ついに完成した「宝の山」。この堆肥が完成するまでの間、実験農場ではどんな日常が繰り広げられるのか。そして、あの人物の再登場は…?次回も、どうぞお楽しみに!
「まあ!昨日よりも、ほんの少しだけ、背が伸びていますわ!」
今日も、俺の隣で畝を覗き込んでいたエレナ様が、宝物でも見つけたかのように、嬉々とした声を上げる。その横顔は、初めて見る生命の神秘に心を奪われた、純粋な探求者のそれだった。
「はい。この子たちは、今、一生懸命に大きくなろうとしています。ですが……」
俺は、畝の土を指先でそっとすくい上げ、彼女に見せた。
「このままでは、すぐに土の中のご馳走が、全部なくなってしまいます」
俺の言葉に、エレナ様は不思議そうに首を傾げる。俺は、彼女にも分かるように、言葉を選んで説明を続けた。
「僕たちが毎日ご飯を食べるのと同じで、植物たちも、土の中からたくさんの栄養をもらって大きくなります。特に、ひまわりのような大きくなるお花は、ものすごい大食漢なんです。このままでは、栄養が足りなくなって、大きく、強いお花を咲かせることができません」
「では、どうすれば……。また、あの不思議な栄養の粒を使うのですか?」
彼女が言うのは、雪中花の時に使った馬糞や灰、そしてリーフ村のハウスで使った『化学肥料の粒』のことだろう。だが、俺は静かに首を横に振った。
「もっと、良いものがあります。この子たちのために、僕が、最高の『ご馳走』を作ってあげます」
俺の、自信に満ちた宣言。それは、この城壁都市ランドールに、リーフ村の『陽だまりの家』とはまた違う、新たな革命をもたらすことになる、壮大な計画の始まりを告げるものだった。
その計画の名は、『堆肥(コンポスト)作り』。この世界の誰もまだ知らない、有機物を微生物の力で分解させ、最高の肥料へと生まれ変わらせる、錬金術にも似た、大地への恩返しだ。
◇
「……それで?その、最高の『ご馳走』とやらは、どこで手に入れるのですか?」
エレナ様の、純粋な問いに、俺はにやりと笑って答えた。
「これから、探しに行きます。この街は、宝の山ですから」
俺の言葉の意味が分からず、きょとんとしているエレナ様を促し、俺たちはセバスチャンとギデオンを伴って、実験農場を出た。行き先は、ランドールで最も活気に満ちた場所、中央市場だ。
朝の市場は、まさしく戦場のような喧騒に満ちていた。威勢のいい八百屋の親父の怒鳴り声。新鮮な魚を運ぶ男たちの掛け声。そして、値切ろうとする客と、それを頑として譲らない商人の、丁々発止のやり取り。その全てが、この街が生きていることを、力強く主張していた。
だが、俺が目指したのは、そんな市場の華やかな表通りではない。その裏手にある、薄暗く、少しだけ生ゴミの匂いが漂う、裏路地だった。
そこには、各商店が捨てたであろう、野菜くずや果物の皮が、木の樽の中に山と積まれている。
「こ、これは……」
エレナ様が、思わず鼻をつまむ。セバスチャンに至っては、顔面蒼白で、今にも倒れそうだ。
「ル、ルークス殿……!いくらなんでも、お嬢様をこのような不潔な場所に……!」
「セバスチャン、静かに。ルークスさんには、何かお考えがあるのですわ」
エレナ様は、匂いに顔をしかめながらも、俺の行動を、好奇心に満ちた瞳で見守っていた。
俺は、その野菜くずの山の中から、まだ新鮮なキャベツの外葉や、大根の皮などを、手際よく選り分け始めた。
「おい、小僧!何してやがる!」
突然、背後から鋭い声が飛んだ。振り返ると、そこには腕っぷしの強そうな、八百屋の店主らしき男が、仁王立ちでこちらを睨んでいた。
「人の店のゴミを漁るとは、いい度胸じゃねえか。物乞いなら、他所でやんな!」
「物乞いじゃありません。これは、取引です」
俺は、臆することなく、男の目を真っ直ぐに見返した。
「この、あんたたちが捨てている野菜くずを、俺に譲ってもらえないでしょうか」
俺の、あまりにも突飛な申し出に、店主は呆気に取られたという顔をした。
「……はあ?ゴミを、譲れだと?頭でも打ったのか、お前」
「これは、ゴミじゃありません。俺にとっては、宝の山なんです」
俺は、真剣な眼差しで訴えた。
「これを、特別な方法で土に返してやれば、どんな痩せた土地でも蘇らせる、最高の肥料になる。もし、この街の農家が、あんたたちの野菜くずを欲しがるようになったら、どうなります?」
俺の言葉に、店主の目が、ぴくりと動いた。商人としての勘が、目の前の子供が、ただの戯言を言っているのではないと告げているのだ。
「あんたたちは、今まで金を払って捨てていたゴミを、農家に売ることができるようになるかもしれない。……俺は、その最初の客になりたい。(タダでもらうこともできるだろうが、それでは『取引』にならない。持続可能な関係を築くためには、初期投資が必要だ。相手に『ゴミが金になった』という成功体験を植え付けるための銅貨一枚。費用対効果は、計り知れない)もちろん、今はまだ価値がないから、タダで、とは言いません。この野菜くず全部で、銅貨一枚。どうです?」
俺が、懐から銅貨を一枚差し出すと、店主は、信じられないというように、俺の顔と、銅貨と、そして野菜くずの山を、何度も見比べた。ゴミが、金になる。その、あまりにも常識外れな提案に、彼の頭は完全についていけていないようだった。
やがて、彼は、がしがしと頭を掻きながら、大きなため息をついた。
「……わけのわかんねえ小僧だな。まあいいや、銅貨一枚で片付くなら、安いもんだ。好きに持っていきな!」
商談は、成立した。俺は、持参した麻袋に、宝の山を詰め込んでいく。その光景を、エレナ様は、尊敬の眼差しで、そしてセバスチャンは、この世の終わりのような顔で、見つめていた。
◇
次に俺たちが向かったのは、城壁の近くにある、騎士団の馬小屋だった。ここには、俺が求める第二の宝、つまり、大量の馬糞がある。
市場の野菜くずとは比べ物にならない、強烈な匂いに、エレナ様もセバスチャンも、今度こそ完全に言葉を失っていた。
馬小屋の管理をしていたのは、人の良さそうな、初老の兵士だった。俺が、馬糞を少し分けてもらえないかと頼むと、彼は八百屋の店主以上に、怪訝な顔をした。
「坊主、本気で言ってるのか?こんな臭いもん、どうするんだ?」
「最高の肥料になるんです。ひまわりを、太陽まで届くくらい、大きく育てるための」
俺が、目を輝かせてそう言うと、兵士は「ひまわり、ねえ」と、何かを懐かしむように、遠い目をした。
「昔、南の国にいた頃、見たことがある。見渡す限り、黄金色の花が咲いていて、まるで、地面に太陽が降りてきたようだった。……いいだろう。あの花を、この凍てついた北の地で咲かせようって言うんなら、いくらでも持っていきな。どうせ、捨てるだけのものだ」
幸運にも、彼は話の分かる男だった。俺は、心からの感謝を告げ、野菜くずとは別の麻袋に、第二の宝を、ぎっしりと詰め込んだ。
俺が深々と頭を下げた、その瞬間。
――ピロン♪
俺の脳内にだけ、心地よい電子音が響いた。
【称号の効果範囲外です。**通常ポイントとして、他者からの純粋な協力の意志を検知しました。5ポイントを獲得しました。**】
(**…5ポイントか。エレナ様の時とは違うけど、それでも嬉しい。**この街でも、人の温かい心は、ちゃんとポイントになるんだ)
俺は、誰にも気づかれないように、そっと笑みを浮かべた。
◇
実験農場に戻った時には、日はすでに高く昇っていた。俺たちが、異臭を放つ二つの巨大な麻袋を荷馬車から降ろすのを、ギデオンが、無言で、しかし力強く手伝ってくれた。
俺は、農場の隅の、日当たりの良い場所を指さした。
「よし。ここに、ご馳走のレストランを作りましょう」
俺は、まず地面に枯れ葉や小枝を敷き詰めた。レストランの、ふかふかの絨毯だ。
次に、市場で手に入れた野菜くずを、その上に広げる。これが、メインディッシュ。
そして、最後に、馬小屋から運んできた馬糞を、スパイスのように振りかける。
「う……!」
強烈な匂いに、セバスチャンが再び膝から崩れ落ちそうになるのを、ギデオンが屈強な腕で支えている。
「ルークスさん、本当に、これで……?」
エレナ様が、不安そうに尋ねる。
「はい。これから、土の中にいる小さな、目に見えない生き物たちが、このレストランに集まってきて、パーティーを始めるんです。彼らがいっぱい食べて、いっぱい遊んだ後には、最高の土だけが残る。それが、堆肥です」
俺は、最後に土をかぶせて、小さな山を完成させると、満足げにその頂点を叩いた。
それは、他の誰が見ても、ただの汚いゴミの山にしか見えないだろう。
だが、俺と、そして俺を信じるエレナ様の目には、未来のひまわりを黄金色に輝かせる、まさしく『宝の山』に、見えていた。
この小さな山が、やがてこの街の「常識」を、そして「循環」そのものを、根底から変えていくことになる。
その、壮大な食料革命の、産声が、今、静かに上がったのだ。
【読者へのメッセージ】
第三十六話、お読みいただきありがとうございました!
「堆肥作り」という、これ以上なく地味で、しかし重要な挑戦。そして、それを巡る街の人々との交流、楽しんでいただけましたでしょうか。ルークスの革命が、少しずつ街へと広がっていく予感を感じていただければ幸いです。
「ゴミを宝の山に!ルークスの交渉術、すごい!」「セバスチャンの心労が…(笑)」「不器用なギデオンの優しさ、好き!」など、皆さんの感想や応援が、堆肥の発酵を促す微生物たちのエネルギーになります。下の評価(☆)やブックマークも、ぜひよろしくお願いいたします!
ついに完成した「宝の山」。この堆肥が完成するまでの間、実験農場ではどんな日常が繰り広げられるのか。そして、あの人物の再登場は…?次回も、どうぞお楽しみに!
126
あなたにおすすめの小説
元侯爵令嬢の異世界薬膳料理~転生先はみんな食事に興味が無い世界だったので、美味しいご飯で人の身も心も癒します~
向原 行人
ファンタジー
異世界へ転生して数日。十七歳の侯爵令嬢、アリスとして目覚めた私は、早くも限界を迎えていた。
というのも、この世界……みんな食事に興味が無くて、毎食パンとハムだけとか、ハムがチーズに変わるとか、せいぜいその程度だ。
料理というより、食材を並べているだけって感じがする。
元日本人の私としては温かいご飯がたべたいので、自分で食事を作るというと、「貴族が料理など下賤なことをするのは恥だ!」と、意味不明な怒られ方をした。
わかった……だったら、私は貴族を辞める!
家には兄が二人もいるし、姉だっているから問題無いでしょ。
宛てもなく屋敷を飛び出した私は、小さな村で更に酷い食事事情を目の当たりにする。
育ち盛りの子供たちや、身体を使う冒険者たちが、それだけしか食べないなんて……よし、美味しいご飯でみんなも私も幸せになろう!
医食同源! 大食いモフモフ聖獣に、胃袋を掴んでしまった騎士隊長と一緒に、異世界で美味しくて身体に良い食材探しだ!
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
底辺から始まった俺の異世界冒険物語!
ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。
しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。
おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。
漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。
この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――
【土壌改良】で死の荒野がSランク農園に!食べただけでレベルアップする野菜で、世界最強ギルド設立
黒崎隼人
ファンタジー
「え? これ、ただのトマトですよ?」
「いいえ、それは食べただけで魔力が全回復する『神の果実』です!」
ブラック企業で働き詰めだった青年は、異世界の名門貴族の三男・ノアとして転生する。
しかし、授かったスキルは【土壌改良】という地味なもの。
「攻撃魔法も使えない役立たず」と罵られ、魔物すら寄り付かない死の荒野へ追放されてしまう。
だが、彼らは知らなかった。
ノアのスキルは、現代の農業知識と合わせることで、荒れ果てた土地を「Sランク食材」が溢れる楽園に変えるチート能力だったことを!
伝説の魔獣(もふもふ)をキュウリ一本で手懐け、行き倒れた天才エルフを極上スープで救い出し、気づけば荒野には巨大な「農業ギルド」が誕生していた。
これは、本人がただ美味しい野菜を作ってのんびり暮らしたいだけなのに、周囲からは「世界を救う大賢者」と崇められてしまう、無自覚・最強の農業ファンタジー!
侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】
のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。
そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。
幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、
“とっておき”のチートで人生を再起動。
剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。
そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。
これは、理想を形にするために動き出した少年の、
少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。
【なろう掲載】
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
転生したら『塔』の主になった。ポイントでガチャ回してフロア増やしたら、いつの間にか世界最強のダンジョンになってた
季未
ファンタジー
【書き溜めがなくなるまで高頻度更新!♡٩( 'ω' )و】
気がつくとダンジョンコア(石)になっていた。
手持ちの資源はわずか。迫りくる野生の魔物やコアを狙う冒険者たち。 頼れるのは怪しげな「魔物ガチャ」だけ!?
傷ついた少女・リナを保護したことをきっかけにダンジョンは急速に進化を始める。
罠を張り巡らせた塔を建築し、資源を集め、強力な魔物をガチャで召喚!
人間と魔族、どこの勢力にも属さない独立した「最強のダンジョン」が今、産声を上げる!
転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする
初
ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。
リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。
これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる