ブラック企業でポイントを極めた俺、異世界で最強の農民になります

はぶさん

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第百三十三話:奇跡の炊き出しと、語られる決意

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 雪は依然として降り続いていたが、リーフ村の集会所の熱気は、冬の嵐を寄せ付けないほどに高まっていた。
 広場から回収された三台の荷車。そこには、徴収官カストロが他村から略奪し、あるいは辺境伯への献上品として隠し持っていた『最高級の霜降り肉』が山積みにされている。

「……よし。フェン、火加減は任せたぞ。薪を絶やすな」
「ワンッ!」

 フェンが器用に前足で火の魔法を制御し、大鍋の下で薪が勢いよく爆ぜる。
 俺――ルークス・グルトは、八千ポイントを投じて取得したばかりのスキル『料理の極意(Lv.1)』の感覚に身を委ねていた。

 脳内に流れ込む、膨大な調理の「最適解」。
 肉を切り分ける角度、塩を振るタイミング、野菜の旨味を最大限に引き出す火の入れ方――。
 
[ 所持ポイント:84,000 pt ]

 残高はさらに減ったが、今の俺に迷いはない。
 俺は『鑑定』を使い、カストロの略奪品の中から最高品質の部位を選び出した。サシが綺麗に入った、この世界では金貨数枚でも足りないほどの逸品だ。

「まずは、この脂身で……。前世で学んだ『メイラード反応』の極致を見せてやる」

 俺は、熱した大鍋に肉の塊を投入した。
 ――ジュワアアアアアッッ!!
 暴力的なまでの芳醇な香りが、集会所いっぱいに広がる。
 肉の表面が一瞬で香ばしい褐色に焼き固められ、溢れ出した脂が黄金色の輝きを放つ。

「……な、なんだ、この匂いは……! 生きてきて、こんな美味そうな匂い、嗅いだことがねえ……!」

 集会所に集まった村人たちが、一人、また一人と吸い寄せられるように大鍋の周りに集まってくる。
 俺はそこに、ハウスで育てた採れたての小松菜とカブ、そしてポイントで交換した『精製された塩』と、隠し味の『だしの素』を惜しみなく投入した。

「母さん、アク取りをお願い。マキナは皆に木皿を配って」
「ええ、任せて、ルークス!」
「はーい! お兄ちゃんの美味しいスープ、皆待っててねー!」

 リリアとマキナが、俺の指示に従ってきびきびと動く。
 前世の俺は、いつも一人でタスクを抱え込み、他人に頼ることを知らなかった。だが、今は違う。家族を信じ、役割を分担する。これが、本当の意味での「チーム・マネジメント」であり、温かなスローライフの礎なのだ。

 じっくりと煮込まれたスープは、肉の濃厚な旨味と野菜の甘みが完璧に調和し、琥珀色に輝いている。
 俺は最後に、焼き上げた『高品質な小麦粉』のパンを添えて、一人目の村人――震える手で皿を持つマーサさんに手渡した。

「マーサさん、まずは一口。……体、温まりますよ」
「ああ……。ありがとうね、ルークス……」

 マーサさんが、震える手でスプーンを口に運ぶ。
 次の瞬間、彼女の瞳から大粒の涙がこぼれ落ちた。

「……美味しい……。生きてて、良かった……。もうダメかと思ったけれど……こんなに温かくて、美味しいものが、この世にあるなんて……」

 彼女の言葉が信号(合図)だった。
 次々と配られるスープ。それを口にするたび、村人たちの絶望に沈んでいた顔に、赤みが差し、活力が戻っていく。
 『料理の極意』によって引き出された旨味は、単なる栄養を超え、人々の「生きる意志」に直接火を灯したのだ。

「……ルークス」

 父アルフレッドが、最後の一皿を受け取り、俺の隣に立った。
 彼は一口啜ると、静かに目を閉じ、深く息を吐いた。

「お前が守ってくれたのは、麦だけじゃないんだな。……俺たちの、心まで守ってくれたんだ」

「父さん……」

 俺は、大鍋を見つめながら、集まった村人たちの笑顔を見渡した。
 
 前世で俺が求めていたのは、高い給料でも、名誉ある地位でもなかった。
 ただ、仕事を終えて家に帰り、誰かと美味しいものを食べて、「明日も頑張ろう」と思える、そんな当たり前の夜だったのだ。

 俺は、自分の中に残る冷徹なサラリーマンの意識と、この世界で芽生えた農民としての誇りを重ね合わせ、村人たちの前で静かに口を開いた。

「皆、聞いてください。……カストロは追い払いましたが、王都の影はまだ消えていません。これからも、理不尽な力が僕たちのスローライフを壊しに来るかもしれない」

 広場が静まり返る。
 
「でも、僕はもう逃げません。……ポイントを貯め、知恵を絞り、この村の『温かな食卓』を全力で守り抜きます。……だから、皆さんも僕を助けてください。一緒に、誰にも負けない最強の村を作りましょう!」

「「「おおおおおっっ!!」」」

 吹雪の音を掻き消すような、力強い歓声。
 それは、打算や畏怖ではない、本当の意味での「絆」が結ばれた瞬間だった。

[ 称号:『リーフ村の真なる救世主』を獲得しました ]
[ ボーナスポイント:50,000 pt が加算されます ]

[ 現在の所持ポイント:134,000 pt ]

 ウィンドウに流れる通知。
 減った分が、人々の感謝という形で再び俺の元へ戻ってくる。
 
 スローライフという名の戦場。
 俺はこれからも、この鍬(武器)とポイントを手に、理不尽を美味しく調理してやる。

 雪降る夜。
 リーフ村の集会所からは、いつまでも温かな湯気と、人々の笑い声が絶えることはなかった。

---



**【読者へのメッセージ】**
第百三十三話、最後までお読みいただきありがとうございました!
『料理の極意』がもたらした奇跡。ルークスの料理が単なる食事を超え、絶望していた村人たちの心を再起動させる様子を描かせていただきました。
高級パンに続き、5万ポイントのボーナス獲得! 減った分を即座に取り戻すルークスの「ポイントへの執着」は健在です。
しかし、ルークスが宣言した「最強の村作り」。これが今後の辺境伯領編の大きなテーマとなっていきます。
次話、第百三十四話「冬の終わりと、届いた招待状」。
物語は、いよいよ辺境伯レオナルド、そして王都の影が本格的に交錯する新フェーズへ!
評価や感想、ブックマークをいただけますと、ルークスの次なる開発(チート)が加速します。ぜひ応援よろしくお願いします!
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