異世界ほのぼのクッキングロード ~元フードコーディネーター、不思議な食材で今日も一皿~

はぶさん

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第4話 もちもち海鮮パンケーキ~子供たちと海の恵み~ (4-1)

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日向耕介の料理が評判を呼び、「木漏れ日の食卓亭」はすっかり街の人気店となっていた。
特に、騎士団の男たちが昼夜問わず訪れるようになり、宿屋の経営は驚くほど安定した。俺が作るまかない料理は、いつしか店の正式なメニューとなり、それを目当てに新しい客が次々とやってくる。

「日向さん、今日もアレ、あるかい?」
「もちろんですよ! 今日の魚介に合わせて、隠し味に爽やかな香りのハーブを加えてみました」
「おお、そりゃ楽しみだ!」

客とのそんな会話も、すっかり日常の風景になった。
リリィアは忙しそうに、しかし満面の笑みで店内を駆け回り、ベアトリスもぶっきらぼうな態度は相変わらずだが、その目元は以前よりもずっと柔らかい。

だが、そんな活気を取り戻した宿屋にも、一つ、解決できない悩みがあった。

「……また、お魚が残っちゃったね」

昼食のピークが過ぎた頃、下げられてきた皿を見て、リリィアが悲しそうに呟いた。
俺もその皿に目を落とす。丁寧に塩焼きにされた白身魚が、半分以上も手つかずのまま残されていた。それが置かれていたのは、家族連れが座っていたテーブルだった。

「子供は正直だからな。見た目が楽しくて、分かりやすく美味しいものじゃないと、なかなか食べてくれないんだ」
「でも、ギルさんが毎朝、一生懸命獲ってきてくれる新鮮なお魚なのに……もったいないよ」

リリィアの言う通りだった。この港町で獲れる魚は、どれも新鮮で味がいい。だが、骨が多かったり、見た目が地味だったりするものが多く、特に子供たちからの人気がいまひとつだったのだ。

「食わず嫌いをなくすのも、料理人の大事な仕事の一つなんだが……」

俺が腕を組みながら言うと、ベアトリスが呆れたようにため息をついた。
「あんたも好きだね。ただでさえ忙しいってのに、子供の好き嫌いにまで付き合うのかい?」
「ええ。だって、リリィアちゃんが悲しい顔をしてる。それを見過ごすわけにはいかないでしょう」

俺の言葉に、リリィアの顔がぱっと明るくなり、ベアトリスは「……勝手にしな」と、そっぽを向いた。その横顔が、少しだけ笑っているように見えた。

(子供たちが、夢中になって食べてくれる魚料理か……。骨も気にならなくて、手で持って気軽に食べられて、何より見た目が楽しい……)

俺は思考を巡らせる。魚のすり身でナゲット? 少し手間がかかりすぎる。串焼き? 地味さが残る。どうすれば、この素晴らしい海の恵みを、子供たちが喜ぶ宝物に変えられるだろうか。

その時、ふと頭の中に、あるシンプルで無限の可能性を秘めた料理が浮かんだ。

(そうだ……パンケーキだ)

「リリィアちゃん、パンケーキって知ってるかい?」
「ぱん……けーき?」

リリィアが不思議そうに首を傾げる。

「ああ。俺の世界では、子供から大人まで、みんなを笑顔にする魔法の料理なんだ。平たい鍋(パン)で焼くお菓子(ケーキ)だから、パンケーキ。名前はすごく単純だろ?」

俺は懐かしむように目を細めた。
「その歴史はすごく古くてね。古代ギリシャの時代から、形を変えながら世界中で愛されてきたんだ。小麦粉と卵と牛乳を混ぜて焼くだけ。でも、そのシンプルな料理には、いつだって家族の団らんや、お祝いの日の楽しい記憶が詰まってる。パンケーキは、人を幸せにするために生まれてきたような料理なんだよ」

「人を……幸せに……」
「そう。だから、その幸せの魔法と、この街の海の恵みを合体させてみようと思うんだ。魚を骨ごとミンチにして、この世界の芋と混ぜて、もちもちの生地を作る。そうすれば、魚が苦手な子でも、きっと喜んで食べてくれるはずだ」

俺の提案に、リリィアの瞳がぱあっと輝いた。

「モグモグ! ちょっと手伝ってくれ!」

俺が厨房から声をかけると、カウンターでうたた寝していたモグモグが「きゅぴ!」と飛び起きた。

「この魚介に、最高の『相棒』を見つけてきてほしいんだ。この魚たちの旨味を、もっともっと引き出してくれるような、不思議な食材をさ!」

「きゅい!」

任せろと言わんばかりに、モグもぐは風のように店の外へ飛び出していった。
数分後、彼が息を切らしながら咥えてきたのは、一枚の黒くて大きな海藻だった。

「これは……昆布か!?」

異世界にも存在したのか。日本の料理人にとって、これ以上ない最高の旨味の源だ。

「よくやったぞ、モグモグ! これがあれば、最強のソースが作れる!」

俺はモグモグの頭をわしゃわしゃと撫で、厨房の火を熾した。
子供たちのしかめっ面を、満面の笑みに変えるための、俺たちの新しい挑戦が始まる。
目指すは、この世界で誰も食べたことのない、魚介が主役の、もちもちで美味しいパンケーキだ。

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