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第4話 もちもち海鮮パンケーキ~子供たちと海の恵み~ (4-2)
しおりを挟む「よし、まずは主役の準備からだ」
俺は市場から仕入れたばかりの新鮮な魚介をまな板の上に乗せた。アジに似た魚、小エビ、そしてイカのような生き物。それらを丁寧に下処理し、骨や硬いスジを丁寧に取り除いていく。
「日向さん、お魚さん、ミンチみたいになっていくね」
「ああ。こうすれば骨も気にならないし、色々な魚の美味しいところを全部一緒に楽しめるだろ? これじゃあ、もうただの『魚』じゃない。たくさんの海の恵みが詰まった、『宝物』の素さ」
次に、この世界のジャガイモに似た、粘り気の強い芋「モチイモ」をすりおろし、小麦粉、卵、そして先ほどの魚のミンチと混ぜ合わせていく。これが「もちもち」食感の秘密だ。
「へえ……お魚がお団子みたいになっていく。面白い!」
リリィアが、目を輝かせながら生地を混ぜる俺の手元を覗き込んでいる。
「そうだろ? 料理は科学実験みたいなものなんだ。食材の組み合わせ一つで、全く新しい食感や味が生まれる。これが面白いところさ」
「かがくじっけん……?」
「うん。例えば、このモチイモの粘りが、魚のミンチを優しく包み込んで、焼いた時に水分が逃げるのを防いでくれる。だから、中はふっくら、もちもちに仕上がるんだ」
俺がそういうと、リリィアは「へぇー!」と感心したように声を上げた。ただ作るだけでなく、その理由を伝えることで、彼女の料理への興味がさらに深まっていくのが分かった。
生地作りの傍ら、もう一つの鍋でソースの準備を進める。
モグモグが採ってきてくれた昆布を水に浸し、じっくりと旨味を抽出する。そこに、この世界の醤油風調味料と、甘みのある酒を加えて煮詰めていく。厨房に、甘じょっぱい極上の香りが立ち込めた。
「日向さん、この匂い、なんだかすごく落ち着きます……」
「これは『出汁(だし)』っていう、俺の故郷の味の基本なんだ。特にこの昆布から出る『旨味』は、料理の味をぐっと深くしてくれる。モグモグは、それをちゃんと分かってて、一番いい昆布を持ってきてくれたんだな」
俺の足元で、モグモグが「きゅん!」と誇らしげに尻尾を振った。
全ての準備が整い、いよいよパンケーキを焼いていく。
熱したフライパンにラードを薄く引き、お玉一杯分の生地を流し込む。
ジュウウゥゥ……!
心地よい音と共に、魚介と昆布醤油の香ばしい匂いが一気に広がった。
「うわあ……!」
リリィアが思わず感嘆の声を上げる。
表面にぷつぷつと気泡が浮かんできたら、ひっくり返す合図だ。
俺はフライ返しで勢いよく生地を返すと、そこには見事なきつね色の焼き目がついていた。
「美味しそう……!」
「だろ? この焼き目こそが、美味しさの証なんだ」
焼きあがったパンケーキを皿に乗せ、特製の昆布醤油ソースをたっぷりとかける。仕上げに、刻んだ青ネギと、カリカリに揚げた小エビを散らして完成だ。
「さあ、リリィアちゃん。毒見役、お願いできるかな?」
「うん!」
リリィアは、満面の笑みで大きく頷くと、熱々のパンケーキをフォークで一口大に切り、小さな口で頬張った。
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