異世界ほのぼのクッキングロード ～元フードコーディネーター、不思議な食材で今日も一皿～

第4話 もちもち海鮮パンケーキ～子供たちと海の恵み～ (4-3)

「……んっ！」

パンケーキを頬張った瞬間、リリィアの目が、今まで見たことがないくらい大きく見開かれた。
もぐもぐと数回、口を動かした後、ごくりと喉を鳴らす。

「……おいひい……！」

舌足らずな声で、しかしはっきりと、彼女はそう言った。

「日向さん！ なにこれ！ 外はカリッとしてるのに、中はすっごくもちもちだよ！ それに、お魚の味が、ふわーって口の中に広がる……！ こんな美味しいお魚料理、初めて食べた！」

興奮気味に、しかし的確に感想を述べるリリィア。彼女には、食の才能があるのかもしれないな。

「だろ？ これなら、子供たちもきっと喜んでくれるはずだ」

俺たちは早速、この新作パンケーキを「お子様ランチ」の目玉として、店に出すことにした。
案の定、昨日まで魚料理に見向きもしなかった子供たちが、その香ばしい匂いと、楽しげな見た目に惹かれて、次々と注文してくれた。

「うわー！ まんまるだ！」
「ソースの匂い、たまらない！」

子供たちは、手掴みで、あるいはフォークで、夢中になってパンケーキを頬張る。
その顔には、昨日までの退屈そうな表情はどこにもなかった。あるのは、ただ純粋な「美味しい！」という喜びと、満面の笑みだけ。

「お母さん！ このお魚、すっごく美味しいよ！」
「おかわり！」

食堂は、子供たちの元気な声と、幸せそうな笑顔で満ち溢れていた。
その光景を、漁師のギルさんが、目頭を熱くしながら見つめている。

「日向の旦那……あんたは、魔法使いだ。俺が獲ってきた魚が、あんなに子供たちを笑顔にするなんて……。漁師をやってて、本当に良かった……」

その日の夕方、店が閉まった後。
リリィアは、嬉しそうに売上を計算しながら、俺に言った。

「日向さん、ありがとう！ 今日はね、お魚、一つも残らなかったんだよ！」
「そうか。それは良かった」

俺は、満足そうに微笑むリリィアの頭を、優しく撫でた。
料理は、ただ腹を満たすだけじゃない。
人を笑顔にし、心を繋ぎ、そして、世界を少しだけ豊かにする力がある。

俺は、この異世界で、フードコーディネーターとして、最高の仕事ができたのかもしれない。
そんなことを思いながら、窓の外に広がる、美しい夕焼けを眺めていた。


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