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愛されていると錯覚。そして……
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気怠い体で寝返りをうとうとして、身じろぐ。
しかし体はなにかに阻まれて身動きが取れず、私は重たい瞼を開いた。
目の前には、長い睫毛に整った顔のルドが静かに寝息を立てている。
昨日一日のことがまるで夢だったのではないかという思いは、彼の体の温かさが夢ではないと証明していた。
「……」
ふいに、ルドに触れてみたい。
そんな衝動にかられた私は、抱きしめられている体制からもぞもぞと腕を引き抜く。
そしてそのままルドの頬に触れた。
確かにここに存在し、また私もここにいる。
ただこの事態はどういうことなのだろう。
私には確かにアーシエの記憶はない。
しかし転移や転生というなら、そもそも他人の体に憑依するなどという現象は起きるのだろうか。
しかも、アーシエにしか分からないはずの記憶や感覚も、少なからず、今の私の中には残っている。
「私は……」
「アーシエ?」
ルドの瞳の中に、アーシエの顔が映る。
自分の姿だというのに、その瞳に映るだけで心臓の音が加速する。
この気持ちはアーシエのモノなのか、それとも私のモノなのか。
その答えは見つからなかった。
「もう起きたのかい」
「……はい。あの、湯浴みがしたいのですが……」
「昨日、僕が体を拭いてはおいたけど。そうだね。すぐに用意するよ」
ルドは私の額に軽くキスを落とすと、そのまま立ち上がった。
さらりとこういうことが出来るのは、彼がこの国の人なのだからだろうか。
キスを落とされたところが、熱を帯びているのが触れなくても分かる。
今、鏡で自分の顔を見たら、きっと真っ赤になっているはずだ。
思わず私は掛けていた布団を、そのまま顔にまで引き寄せる。
なんだろう、この感覚は。
愛や恋と呼ぶには、昨日までの関係はかなり歪だったはず。
なのにこんなことをされると、心がどこかで期待してしまう。
ホントは彼に愛されているのではないかと。
彼はアーシエに固執しているだけ。
そして私がアーシエではないと分かった時、どうするのだろう。
そしてなにより私は……。
「アーシエ、お湯を張ったけど?」
「え、ルド様がそんなことを」
本来ならば、メイドや使用人たちがする作業をルド自ら行うとは思っておらず、ぼーっと考えごとをしてしまっていた。
「いいんだよ。僕がやりたいんだ。君のことはすべてね」
「いえ、でも」
そういうわけにはいかない。
私は急いで立ち上がってルドの側に向かおうとし、自分の体に力が入らないことに気づいた。
しかし気づいたところで、勢いよく起き上がった私はどうすることも出来ずにそのままシーツと共に倒れ込む。
ただ激突するだろうと思っていた衝撃はなく、代わりにルドの腕が私を支えていた。
「ルド様!」
「急に立ち上がるからだよ、アーシエ。その綺麗な顔に傷でも出来たら大変だ」
ルドはシーツごと私を抱き上げるとそのまま浴室へと歩き出した。
「るるる、ルド様っ」
「ほら、暴れると落ちてしまうよ、アーシエ。僕がしっかり洗ってあげるからね」
にこやかなルドの表情。
アーシエはなにを思い、彼から逃げたかったのだろう。
少なくとも今の私は、彼に愛されていると錯覚し、そしてその居心地の良さにもう身動きが取れないような気がした。
しかし体はなにかに阻まれて身動きが取れず、私は重たい瞼を開いた。
目の前には、長い睫毛に整った顔のルドが静かに寝息を立てている。
昨日一日のことがまるで夢だったのではないかという思いは、彼の体の温かさが夢ではないと証明していた。
「……」
ふいに、ルドに触れてみたい。
そんな衝動にかられた私は、抱きしめられている体制からもぞもぞと腕を引き抜く。
そしてそのままルドの頬に触れた。
確かにここに存在し、また私もここにいる。
ただこの事態はどういうことなのだろう。
私には確かにアーシエの記憶はない。
しかし転移や転生というなら、そもそも他人の体に憑依するなどという現象は起きるのだろうか。
しかも、アーシエにしか分からないはずの記憶や感覚も、少なからず、今の私の中には残っている。
「私は……」
「アーシエ?」
ルドの瞳の中に、アーシエの顔が映る。
自分の姿だというのに、その瞳に映るだけで心臓の音が加速する。
この気持ちはアーシエのモノなのか、それとも私のモノなのか。
その答えは見つからなかった。
「もう起きたのかい」
「……はい。あの、湯浴みがしたいのですが……」
「昨日、僕が体を拭いてはおいたけど。そうだね。すぐに用意するよ」
ルドは私の額に軽くキスを落とすと、そのまま立ち上がった。
さらりとこういうことが出来るのは、彼がこの国の人なのだからだろうか。
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今、鏡で自分の顔を見たら、きっと真っ赤になっているはずだ。
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なんだろう、この感覚は。
愛や恋と呼ぶには、昨日までの関係はかなり歪だったはず。
なのにこんなことをされると、心がどこかで期待してしまう。
ホントは彼に愛されているのではないかと。
彼はアーシエに固執しているだけ。
そして私がアーシエではないと分かった時、どうするのだろう。
そしてなにより私は……。
「アーシエ、お湯を張ったけど?」
「え、ルド様がそんなことを」
本来ならば、メイドや使用人たちがする作業をルド自ら行うとは思っておらず、ぼーっと考えごとをしてしまっていた。
「いいんだよ。僕がやりたいんだ。君のことはすべてね」
「いえ、でも」
そういうわけにはいかない。
私は急いで立ち上がってルドの側に向かおうとし、自分の体に力が入らないことに気づいた。
しかし気づいたところで、勢いよく起き上がった私はどうすることも出来ずにそのままシーツと共に倒れ込む。
ただ激突するだろうと思っていた衝撃はなく、代わりにルドの腕が私を支えていた。
「ルド様!」
「急に立ち上がるからだよ、アーシエ。その綺麗な顔に傷でも出来たら大変だ」
ルドはシーツごと私を抱き上げるとそのまま浴室へと歩き出した。
「るるる、ルド様っ」
「ほら、暴れると落ちてしまうよ、アーシエ。僕がしっかり洗ってあげるからね」
にこやかなルドの表情。
アーシエはなにを思い、彼から逃げたかったのだろう。
少なくとも今の私は、彼に愛されていると錯覚し、そしてその居心地の良さにもう身動きが取れないような気がした。
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