【R18】悪役令嬢の鳥籠~勘違い断罪からのヤンデレルートは、溺愛ルートへ移行しました~

あやめ。

文字の大きさ
23 / 41

真実の欠片を求めて(一)

しおりを挟む
 ルドへの手紙はすぐに届けられた。

 忙しく執務室から出られないルドは、仕方なくこの部屋から真っすぐ執務室へと来る許可を出してくれた。

 侍女長の話によると、ここまで自分が迎えに行くと言い張ったルドを周りが止める形となったようだ。

 そう考えると、少し周りの人たちに申し訳なく感じてしまう。

 しかしだからといって、このままアーシエのことを考えずに生きていくわけにもいかない。

 いつかバレる日が来る。

 そうでなくても、いつか私の心が嘘を付き続けることに苦しくなるのは目に見えているから。

 何日かぶりに離宮から、外へと出た。

 秋の柔らかい日差しと、対照的な冷たい風が吹き抜けてゆく。

 中庭にはたくさんの花が植えられていた。

 日中なら、まだしばらくの間はこの庭でお茶など外で楽しむことも出来るだろう。

 もっとも、それすらルドの許可が下りればということに変わりはなかった。

 先導する侍女と騎士たちと共に王宮へと入る。

 事前に話が入っていただけあるのか、普段なら他の侍女や騎士など様々な人たちがいるはずの大廊下には誰もいない。

 なんというルドの念の入れようだろうか。

 そこまで……と考え、辞める。

 ヤンデレルートなのだ。

 これぐらいは普通のことなのだろう。

 むしろ他の者たちに違う意味で迷惑がかかることがなかっただけ、良しとしておこう。

 二階の中央にルドの執務室はあった。

 重厚な赤く金の細工が施された扉の前には、さすがに二名の騎士が控えていた。

 しかし私たちを見るなり頭を下げ、扉から離れる。


「ルド様、アーシエです」


 ノックの後、入室をすると待ってましたとばかりにルドが立ち上がった。

 華やかで幸せそうなルドの表情とは対照的に、中にいた側近らしい男の表情からはあからさまに敵意を感じる。

 仕事の邪魔をしたせいかな?

 いや。

 それにしてはそんな生優しいモノではなく、明らかな敵意と分かるぐらいにうんざりとした表情だった。


「お忙しいのに、申し訳ないですわ、ルド様」


 そう言いながら、視線をルドからその男へと移す。

 するとルドは私がなにを言いたいのか分かったかのように、表情を曇らす。


「いや大丈夫だよ、アーシエ」

「いえいえ。わたくし などのために、ルド様のお仕事を邪魔するわけにもいきませんわ。ただ一つ、ルド様にお願いしたいことがあってここまで参りましたの」


 ルドの後ろに控える男性が感じが悪いにせよ、対一ではこのお願いが効果がない以上、仕方ないだろう。


「なんだい、アーシエ。なにか欲しいモノでもあったのかい?」

「いえ。そんなモノなどなにもありませんわ。全て、ルド様から頂いたもので、アーシエは満足しております」

「だったら」

実家いえに、一度荷物を取りに帰りたいのです。ルド様から頂いた文や、お気に入りの便せんや日記など。ダメでしょうか?」


 手を胸の前で組み、ルドに近寄りながら小首を傾げた。

 そして追い打ちをかけるように目をうるうるさせルドを見上げれば、これ以上ない完璧さだろう。

 こう言ってはなんだが私の目から見ても、アーシエはかわいい。

 あの縦ロールは悪役令嬢そのものでどうかと思ったが、そのままのアーシエはふわふわした茜色の髪が色白の肌をよく引き立てている。

 線も細くどこか儚げなのに、胸は手に余るほど大きく、そのアンバランスさがギャップ萌えとでもいうのだろうか。


「いや、しかし……」

「ルド様がご用意して下さった馬車で向かって、夕方までには戻りますわ。ね、ダメです?」

「アーシエ、君は」

「荷物を取りに行くだけですわ。私はルド様のモノです。ココにしか居場所などないというのに、どこに行くと言うのですか?」


 これはアーシエではなく私の本心だ。

 ココにしか、私の居場所など最初からない。

 鳥籠なんかに閉じ込めなくたって、どこにも行くあてなんてないのだから。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢の末路

ラプラス
恋愛
政略結婚ではあったけれど、夫を愛していたのは本当。でも、もう疲れてしまった。 だから…いいわよね、あなた?

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

魔性の大公の甘く淫らな執愛の檻に囚われて

アマイ
恋愛
優れた癒しの力を持つ家系に生まれながら、伯爵家当主であるクロエにはその力が発現しなかった。しかし血筋を絶やしたくない皇帝の意向により、クロエは早急に後継を作らねばならなくなった。相手を求め渋々参加した夜会で、クロエは謎めいた美貌の男・ルアと出会う。 二人は契約を交わし、割り切った体の関係を結ぶのだが――

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

結婚式に結婚相手の不貞が発覚した花嫁は、義父になるはずだった公爵当主と結ばれる

狭山雪菜
恋愛
アリス・マーフィーは、社交界デビューの時にベネット公爵家から結婚の打診を受けた。 しかし、結婚相手は女にだらしないと有名な次期当主で……… こちらの作品は、「小説家になろう」にも掲載してます。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話

よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。 「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

処理中です...