第四創世主は殺人衝動を性欲で捻じ伏せるらしい~最強の力を得た凡人、仕方なくイヤイヤ成り上がっていったら世界を救うことになりました~

文場凡

文字の大きさ
42 / 120
第二章:帝国の滅亡

エピローグ:依頼の達成報酬と戦後の処理

しおりを挟む
 ロイタージェンからの報酬は、バルギスソウタの商人に対する恒久的な優遇取り引きと、その取り引きによってもたらされる税収のうち6%を、おっさんと俺とメリシアで等分にして受け取れるというものだった。

 「こちらがグステン間との取り引きにおける収支報告書になります」

 そんなわけで今日も執務室で色々な書類に目を通していると、グステンから律儀に毎月送られてくる、数字のビッシリ書き込まれたひと際ぶ厚い紙の束をメリシアが手渡してくる。

 「ありがとう、メリシア」
 「どういたしまして」
 「提案、今回の分もセルフィが処理する?」
 「いや……こういうのはいつまでも苦手意識持ってたらダメだから、目くらいは通すよ」
 「目を通すだけではなく改善点などを指摘せねばならぬぞ」
 「なるほどな」

 メリシアから受け取ったばかりの書類を、そのままセルフィへと横流しする。

 「セルフィ、やっぱり頼む」
 「了解」
 「……その諦めの早さは瞠目に値するな」
 「そんなに褒めるなよおっさん」
 「お主、皮肉という言葉を知っておるか?」
 「いやそもそもおっさんが勝手に俺を皇帝にしたからこうなってるんだろ」
 「責任転嫁はやめて貰おうか。責任を果たすと言ったのはお主のほうだろう? ディモズを打ち倒したのだから、その責を負って皇帝を継ぐなど当然のことだ」
 「ぐっ……」

 それを言われると弱い……。
 未だ山積している戦後処理に俺が音を上げそうになると、おっさんは必ずこの話をしてくるが、あれから約三カ月が経過しようとしているのにまだまだ終わりが見えないのでは弱音も吐きたくなる。
 ――あの後、王宮内部のゴタゴタは全てシルテバを筆頭とした元老院が片づけてくれたのは良かったのだが、帰還したバルギス兵の再編成には骨を折らされた。
 バルギス軍の規模は予想より遥かにでかく、小国との国境付近にいる守備兵なども併せると全部で十一万人もいるとのことで、最初「これは無理」と思ったのだが、例のシュロル六頭が引いていた御車を護衛してた五人――五騎龍とか呼ばれるバルギス軍最強の兵士だったらしい――を、帝都にある三万人収容の巨大闘技場で、満員のバルギス兵を前に鎧を全部剝ぎ取って文字通り素っ裸にしたら、兵はあっさり俺を認めてくれた。
 しかしその後、圧倒的な武を誇る俺に忠誠心を示したいからとかいう理由で、五騎龍を筆頭にした親イマイソウタ皇帝兵とかいうのが新設された時はさすがに眩暈がしたね。なんつーか……重いわ。
 次に、国民に対する皇帝演説だが、これもヤバかった。
 王宮前広場に数十万もの人が集まっているあの光景は、今思い出しても冷や汗が流れる。
 おっさんとメリシアが事前に台本を用意してくれていたので、当日はそれをそのまま言ったんだと思うのだが、いかんせん何を言ったのか緊張でほとんど覚えていない。
 とりあえず、演説後におっさんに言われた「すまん、急に無理をさせ過ぎたな」という言葉の意味だけは、深く考えないように気を付けている。
 後はとにかく……帝王学ってやつなのか、皇帝たる者これをすべしみたいなことを毎日ミッチリ教え込まれながら、合間に書類――ほぼ予算をどう使うかとかの稟議書と決裁書――と格闘する日々が続き、あっという間にここまで来ている。

 「だが、お主は良くやっておるよ」
 「なんだよ急に」
 「いやな、この……時間や月日、曜日といった概念は画期的だったと思ってな」
 「何度も言ってるけど、そんなの俺の世界じゃ常識だったことだし、時間なんてセルフィがいなきゃどうしようもなかったんだから、俺の手柄みたいに言ってくれんなよ」

 時間という概念を教えること自体は、日時計を作って説明することで割と簡単に分かって貰えたのだが、問題は一秒の定義だった。
 正確に一秒を図ることが電子機器の無いこの世界では至難の業で、もう大体の感じでいいか、と一度は投げやりになったのだが……十日前後が過ぎた頃に、セルフィが突然「日の出から次の日の出まで、毎回等間隔に数字を数えていってみたところ、一つか二つ程度のバラツキはあったが86400が妥当な数となった」と報告してくれたことで一気に現実味を帯びたのだ。

 「目標だった機械式の時計だって、まさか一か月で完成するとは思ってなかったからな」

 遂に先月から――まだ王宮内部でだけだが――普及し始め、今では欠かせない存在となっているのだ。

 「否定、異世界においての常識に屈することなく自身の世界の概念を持ち込めるのがソウタの強さ。セルフィはそんなソウタだから好きになった」

 そう言うと、セルフィがムニッと俺の腕に自分の胸を押し当ててきて、それを見たファフミルが俺のもう片方の腕を自分の胸の谷間にムチプリと押し込んで挟んできて、メリシアがそんな二人を俺から引き離す。
 ……正直これだけは、皇帝になって良かったかもと思える数少ないいつもの日常ではある。
 しかし、そんな辛く楽しい日常を壊すかのように、血相を変えたギリゴスモが執務室へと飛び込んできた。

 「ノックも無しに失礼いたします! ディブロダールが……ディブロダールがオールタニアを平定し、自国の国教をシャイア教として、皇帝陛下の引き渡しを要求してきました!」
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

【完結】487222760年間女神様に仕えてきた俺は、そろそろ普通の異世界転生をしてもいいと思う

こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
 異世界転生の女神様に四億年近くも仕えてきた、名も無きオリ主。  億千の異世界転生を繰り返してきた彼は、女神様に"休暇"と称して『普通の異世界転生がしたい』とお願いする。  彼の願いを聞き入れた女神様は、彼を無難な異世界へと送り出す。  四億年の経験知識と共に異世界へ降り立ったオリ主――『アヤト』は、自由気ままな転生者生活を満喫しようとするのだが、そんなぶっ壊れチートを持ったなろう系オリ主が平穏無事な"普通の異世界転生"など出来るはずもなく……?  道行く美少女ヒロイン達をスパルタ特訓で徹底的に鍛え上げ、邪魔する奴はただのパンチで滅殺抹殺一撃必殺、それも全ては"普通の異世界転生"をするために!  気が付けばヒロインが増え、気が付けば厄介事に巻き込まれる、テメーの頭はハッピーセットな、なろう系最強チーレム無双オリ主の明日はどっちだ!?    ※小説家になろう、エブリスタ、ノベルアップ+にも掲載しております。

魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します

burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。 その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。

御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜

伽羅
ファンタジー
【幼少期】 双子の弟に殺された…と思ったら、何故か赤ん坊に生まれ変わっていた。 ここはもしかして異世界か?  だが、そこでも双子だったため、後継者争いを懸念する親に孤児院の前に捨てられてしまう。 ようやく里親が見つかり、平和に暮らせると思っていたが…。 【学院期】 学院に通い出すとそこには双子の片割れのエドワード王子も通っていた。 周りに双子だとバレないように学院生活を送っていたが、何故かエドワード王子の影武者をする事になり…。  

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...