第四創世主は殺人衝動を性欲で捻じ伏せるらしい~最強の力を得た凡人、仕方なくイヤイヤ成り上がっていったら世界を救うことになりました~

文場凡

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第三章:第四創世主の弱点

十八話:戦後処理と作戦会議

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 戦後処理はこれで二度目になるが、今回は敵国の侵略を阻止しただけのため、やることはそれほど多くなかった。
 特に、帝国兵への戦後ケアの必要がないのはデカかった。
 前回は、おっさん達と会議を重ねて四苦八苦しながら、ようやく闘技場で五騎龍をやりこめるという妙案に辿りつき、さらに恨みを抱かせないよう秘密裏にそれを実行するという、回りくどいプロセスを必要としただけに、心身ともに負担が大幅減である。
 帝国民への説明も、事前に元老院のシルテバが手を回しておいてくれたおかげで大きな混乱もなく、翌週には戦勝祝いとして王宮前広場で宴まで催す余裕すらあったほどだ。
 さすがは賢明と呼ばれるだけあって、こういう内政的なことに関してはめちゃくちゃ頼りになる。
 そんなこんなで、ここ二週間は忙しいような忙しくないような日々を送ってきたワケだが……腑に落ちないことが一つだけあった。

 「あのさ、なんで毎日セルフィとファフミルもここで寝るの?」

 もちろん、邪魔なのでどこかに行って貰いたいという意味での問いかけなのだが、セルフィとファフミルは「ディブロダールの魔術師に対する警戒」という、額面通りに受け取った回答しか返さない。
 もはや魔術でどうこうなるようなことはない旨は説明と実証を終えているのに、頑なに譲ってくれない二人に、心底困り果てている……が

 「ソウタ様……し、失礼します……」
 「う、うん……こちらこそ…」

 おっさんの『恋人同士になったのなら寝所も共にすべきだ』という謎の勧めもあり、あの日からメリシアも同じベッドで寝てくれるようになったのは、マジで嬉しい。
 それだけに……見張るかのようにこの部屋に自分のベッドを持ってきて一緒に寝ている二人のことは、やはり早急に何とかしたいものだ。
 なにせ俺としては? その日のうちに――は、さすがに無理だったとしても? そろそろメリシアとめくるめく甘い夜を過ごしてみたいなぁーなんて、成人男性ならば誰でも共感してくれるであろう想いを秘めてたりしているわけだから? 頼むからどっかいってくれ?
 エロ動画の撮影現場でもあるまいし、他人に、それも美女二人に見られながら……なんてのは、ちょっとイイ――もとい、ハードルが高すぎて無理だ。
 そんなわけで、心休まりそうで休まらない夜に、今日も枕を濡らしながら夢の中へと落ちていくのだった。

 ♦

 「は? 総攻撃?」

 ディブロダールへの次なる一手について軍議室で話し合っていると、おっさんが突然とんでもないことを提案する。

 「そうだ。現在、ディブロダールの戦力は著しく低下している。この機を逃さず、バルギスソウタ軍による総攻撃で一気に制圧してしまうのだ」
 「……どうしておっさんは、そうやって犠牲者が出そうな作戦ばっかり提案するんだ? もう俺一人でどうとでもなるって分かってるはずだろう?」
 「助長していたオレが言うのもなんだが、先日、セルフィやファフミル、そしてメリシアを、お主のそのうぬぼれが殺しかけたということを忘れたか?」
 「うっ……」

 返す言葉も無いとはこのことだ。

 「お主が、もはやこの世界で何者も触れえぬ存在になりつつあることは認めよう。しかしな、不測の事態というのは往々にして起こるものなのだ。それがこの前の一件で身に染みて分かったであろう?」
 「補足、ディブロダールの召喚術がどんなものかも不明。シャイアの召喚にソウタが必要という事前情報から、何らかを媒介にした術式の可能性も否定できない。このため、ソウタが知らず知らず中枢へ乗り込んでしまうことで発動条件を満たす恐れがある」
 「分かった、分かったよ……今回は俺は大人しくしてればいいんだろ」
 「うむ。それにな、何もこの王宮でゆっくりしておれというわけではなく――お主にはここに行って貰いたくてな」

 おっさんが戦略図の上に別の地図を広げ、とある場所に赤い丸印を書き込む。
 位置関係的に、グステンと帝都に挟まれた深い峡谷の底と思われるが……こんなところに何があるんだ?

 「まさか武林迷宮、ですか?」

 ファフミルが珍しく険しい表情を浮かべる。

 「そうだ。ここは迷宮全体が魔力を吸い上げるような術式構造となっていて、魔術が一切使えぬのだ。よって、己の肉体のみで攻略せねばならぬ」
 「なるほど……」

 険しい表情を浮かべたのはそういう理由か。

 「どうだ? お主好みの場所であろう。ここでならば、ディブロダールの邪魔だてもなく、その有り余る力を存分に振るえるのではないかと思ってな」
 「しかし、セルフィとファフミルは――」
 「留守番になるな。一応、今回はメリシアと二人で行って貰おうかと考えておる」
 「ソウタ様の足手まといにだけはならないように致します」

 確かに二人きりになりたいとは思っていたが、よりにもよってこんなところで……。
 しかし、貴重なチャンスであることは間違いない……不満ばかり言ってもいられない、か……。

 「武林迷宮についての細かいことは、彼奴等から直接聞いてくれ」
 「きゃつら?」

 扉がノックされ、おっさんが返事をすると見知った顔の三人が入ってきた。

 「グステン最強の三獅子イオ、タオ、ラオだ」
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