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第三章:第四創世主の弱点
エピローグ:戦力増強の必要性
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おっさんが紹介するように三人へと片手を差し出す。
ラオとは週に一度顔を合わせているが、イオとタオとはグステン以来だ。
こうして三人揃うとマジで見分けがつかない。
「久しいな慈愛の」
「息災であったか、慈愛の」
イオとタオが口をへの字から真一文字に結び直して――まさかアレで笑顔のつもりなのだろうか――挨拶してくる。
「二人とも、久しぶり。ラオには世話になってるよ」
「わはははは! もはやイマイに教えることなど何も無いがな」
「そんなことないだろ」
「いや、貴殿はすでに技を云々する領域を遥かに超えてしまっておるよ。それこそ万物の法則を超越した存在とでも言えるほどには、な」
いくらなんでも言い過ぎだと思ういっぽうで、確かに、特性を調節してスローモーション状態に入ると、時間などあってないようなものになるため、動き云々や力の伝え方どうこうとは別の次元なのかもしれない。
「それはそれは……いずれまた我ら三人と手合わせ願いたいものだな」
「お、いいぜ。早速あとでやろうか」
「……さて、挨拶はそのくらいでよいだろう。来て貰って早々悪いが、武林迷宮とはどのようなところなのか、簡単に教えてはもらえまいか」
つい話し込んでしまっていた流れをおっさんが強引にぶった斬ると、新しく広げた地図の前に立った三兄弟がいつものように眉間に皺を寄せながら話し始めた。
「この武林迷宮へは、我らがまだ修行中の身であったころに挑んだのだが……その時は、全五十層からなる迷宮のおよそ三分の一程度しか進むことができなかったため、そこまでの話になることを前もって断っておこう」
「道中には死に繋がるような罠もいたるところに張り巡らされ、階層を進むたびに道のりも長く険しくなっていく。たった十階層進んだだけであれなのだ……さらに先には何が待ち受けておるのか」
「あの時分は……未熟だった故もあるが、何より四十層で炎獄と盟約をかわしたことで激しく消耗してしまってな。あれ以上は当時の我らでは無理だった」
「えっ、エンゴクって、そのブリン迷宮ってとこで契約したのか!」
「うむ」
「ならもっと深くまで踏破できたら俺も何かと契約できたりするのか!?」
あんな変身ヒーローみたいなのになれると思うとワクワクしてしまう――が、
「魔力を基本動力としているから、創世の救主では無理だな」
その期待は一瞬で散った。
「不安ならば我らも同行しても良いが、どうする?」
「いや、せっかくの申し出だけど……気持ちだけ受け取っておくよ」
「貴様ほどの実力があれば我らなど足手まといにしかならぬか」
「あー違う違う、そういうことじゃなくて……」
チラリとメリシアのことを見ると、どうかしましたか? という感じで可愛らしく小首を傾げてこちらを見返してくる想い人に、思わず頬が緩む。
「ソウタ、セルフィとファフミルはしっかり遠見してるから安心して」
「やめてくださいお願いします」
「大変恐縮ながら、ご主人様の初めてのお相手はボクなのをお忘れなく」
「はい、かしこまりました……」
俺の思考を読んでしっかりと釘を刺してくるセルフィに土下座する勢いで懇願するが、隣にいる妹はお姉ちゃん以上に目がマジなんだよなぁ……。
好きな人と二人きりになれるってのに監視付きなんて、興奮しちゃう。
ごめん嘘。やっぱ辛ぇわ……。
「それでだ、ここからが本題なのだが。武林迷宮に行ってもらおうというのには、何も物見遊山で言いだしたわけではなく、ある目的があって頼んでおるのよ」
ディブロダール軍との一戦があったあの日から急務になっている課題の一つに、護衛者の増強というのがあった。
なんでも、王よりも強大な力を持つ人材が皆無というのは、今後なにかあって俺が王宮を留守にした時などに奇襲を受けてしまう恐れがある上、帝国を統治していくにあたっても、貴族連中と結託して強引に平定した小国が反乱する可能性があるため都合が悪いらしい。
「最低限、お主に匹敵……もしくは肉薄する程度の、帝国内外に恐れを抱かせる実力を持つ者が一人は欲しいのだ」
「……それが武林迷宮にいるってのか?」
「最下層に、究覚という武林迷宮を統べる何かが棲んでいる……らしい」
「らしいって、また曖昧だな」
「なにせ伝説に残っているだけで実際にそこまで辿り着いたものがおらぬからな」
そんな不確かなもんのために、こんな辺鄙な場所まで行くのかよ……。
不信感が顔に出ていたらしい。ラオがおっさんをフォローするかのように話しの先を続ける。
「武林迷宮には、六武神といってそれぞれの階層を見張る守護者のような存在がいてな――」
「入り口を守護せしは水令。その姿は何者にも捉えられぬ。水を自在に操って溺れさせんと阻まれたが、功呼吸を極めた我らだから苦も無く入宮できたが、常人ならば溺死しておったろうな」
イオがタオの話を遮って、腕を組んで胸を張りながら自慢げに語り出す。
そんなイオに構わずタオが先を続けた。
「我らが炎獄と盟約せし広間にあった石板に書いてあったのが、さきほどトルキダス殿が言っていた伝説なのだ」
「道の者。倒れし道の深淵に究みを求めよ。力を探す者は愚者ならず。力を欲する者は覚者ならず。力を示す者の真理こそ我へ通ずる。我は究覚なり……」
「我らが進めた四十階層の守護者である炎獄でさえ五位なのだ。一位ともなれば……少なくともお主に劣らぬ存在であろうよ」
なるほど……確かに凄そうだ。
「けど、さっき魔力が動力だから契約は無理って言ってなかったか? 連れて帰るにしても、その魔力は必要になるんじゃねぇの?」
「だからこそのメリシアよ」
「えっ……もしかして……」
「契約して貰うのはお主ではなくメリシアになる。ようは、武林迷宮を攻略して守護武神の序列一位、究覚やらとメリシアが契約できれば、今後、現宰相でお主の恋人が帝国最強の護衛者になるという寸法よ」
「マジかよ」
マジかよ。
ラオとは週に一度顔を合わせているが、イオとタオとはグステン以来だ。
こうして三人揃うとマジで見分けがつかない。
「久しいな慈愛の」
「息災であったか、慈愛の」
イオとタオが口をへの字から真一文字に結び直して――まさかアレで笑顔のつもりなのだろうか――挨拶してくる。
「二人とも、久しぶり。ラオには世話になってるよ」
「わはははは! もはやイマイに教えることなど何も無いがな」
「そんなことないだろ」
「いや、貴殿はすでに技を云々する領域を遥かに超えてしまっておるよ。それこそ万物の法則を超越した存在とでも言えるほどには、な」
いくらなんでも言い過ぎだと思ういっぽうで、確かに、特性を調節してスローモーション状態に入ると、時間などあってないようなものになるため、動き云々や力の伝え方どうこうとは別の次元なのかもしれない。
「それはそれは……いずれまた我ら三人と手合わせ願いたいものだな」
「お、いいぜ。早速あとでやろうか」
「……さて、挨拶はそのくらいでよいだろう。来て貰って早々悪いが、武林迷宮とはどのようなところなのか、簡単に教えてはもらえまいか」
つい話し込んでしまっていた流れをおっさんが強引にぶった斬ると、新しく広げた地図の前に立った三兄弟がいつものように眉間に皺を寄せながら話し始めた。
「この武林迷宮へは、我らがまだ修行中の身であったころに挑んだのだが……その時は、全五十層からなる迷宮のおよそ三分の一程度しか進むことができなかったため、そこまでの話になることを前もって断っておこう」
「道中には死に繋がるような罠もいたるところに張り巡らされ、階層を進むたびに道のりも長く険しくなっていく。たった十階層進んだだけであれなのだ……さらに先には何が待ち受けておるのか」
「あの時分は……未熟だった故もあるが、何より四十層で炎獄と盟約をかわしたことで激しく消耗してしまってな。あれ以上は当時の我らでは無理だった」
「えっ、エンゴクって、そのブリン迷宮ってとこで契約したのか!」
「うむ」
「ならもっと深くまで踏破できたら俺も何かと契約できたりするのか!?」
あんな変身ヒーローみたいなのになれると思うとワクワクしてしまう――が、
「魔力を基本動力としているから、創世の救主では無理だな」
その期待は一瞬で散った。
「不安ならば我らも同行しても良いが、どうする?」
「いや、せっかくの申し出だけど……気持ちだけ受け取っておくよ」
「貴様ほどの実力があれば我らなど足手まといにしかならぬか」
「あー違う違う、そういうことじゃなくて……」
チラリとメリシアのことを見ると、どうかしましたか? という感じで可愛らしく小首を傾げてこちらを見返してくる想い人に、思わず頬が緩む。
「ソウタ、セルフィとファフミルはしっかり遠見してるから安心して」
「やめてくださいお願いします」
「大変恐縮ながら、ご主人様の初めてのお相手はボクなのをお忘れなく」
「はい、かしこまりました……」
俺の思考を読んでしっかりと釘を刺してくるセルフィに土下座する勢いで懇願するが、隣にいる妹はお姉ちゃん以上に目がマジなんだよなぁ……。
好きな人と二人きりになれるってのに監視付きなんて、興奮しちゃう。
ごめん嘘。やっぱ辛ぇわ……。
「それでだ、ここからが本題なのだが。武林迷宮に行ってもらおうというのには、何も物見遊山で言いだしたわけではなく、ある目的があって頼んでおるのよ」
ディブロダール軍との一戦があったあの日から急務になっている課題の一つに、護衛者の増強というのがあった。
なんでも、王よりも強大な力を持つ人材が皆無というのは、今後なにかあって俺が王宮を留守にした時などに奇襲を受けてしまう恐れがある上、帝国を統治していくにあたっても、貴族連中と結託して強引に平定した小国が反乱する可能性があるため都合が悪いらしい。
「最低限、お主に匹敵……もしくは肉薄する程度の、帝国内外に恐れを抱かせる実力を持つ者が一人は欲しいのだ」
「……それが武林迷宮にいるってのか?」
「最下層に、究覚という武林迷宮を統べる何かが棲んでいる……らしい」
「らしいって、また曖昧だな」
「なにせ伝説に残っているだけで実際にそこまで辿り着いたものがおらぬからな」
そんな不確かなもんのために、こんな辺鄙な場所まで行くのかよ……。
不信感が顔に出ていたらしい。ラオがおっさんをフォローするかのように話しの先を続ける。
「武林迷宮には、六武神といってそれぞれの階層を見張る守護者のような存在がいてな――」
「入り口を守護せしは水令。その姿は何者にも捉えられぬ。水を自在に操って溺れさせんと阻まれたが、功呼吸を極めた我らだから苦も無く入宮できたが、常人ならば溺死しておったろうな」
イオがタオの話を遮って、腕を組んで胸を張りながら自慢げに語り出す。
そんなイオに構わずタオが先を続けた。
「我らが炎獄と盟約せし広間にあった石板に書いてあったのが、さきほどトルキダス殿が言っていた伝説なのだ」
「道の者。倒れし道の深淵に究みを求めよ。力を探す者は愚者ならず。力を欲する者は覚者ならず。力を示す者の真理こそ我へ通ずる。我は究覚なり……」
「我らが進めた四十階層の守護者である炎獄でさえ五位なのだ。一位ともなれば……少なくともお主に劣らぬ存在であろうよ」
なるほど……確かに凄そうだ。
「けど、さっき魔力が動力だから契約は無理って言ってなかったか? 連れて帰るにしても、その魔力は必要になるんじゃねぇの?」
「だからこそのメリシアよ」
「えっ……もしかして……」
「契約して貰うのはお主ではなくメリシアになる。ようは、武林迷宮を攻略して守護武神の序列一位、究覚やらとメリシアが契約できれば、今後、現宰相でお主の恋人が帝国最強の護衛者になるという寸法よ」
「マジかよ」
マジかよ。
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