5 / 11
5
しおりを挟む「サラ様……サラ様……」
低い優しい声でオレリアは、何度も何度もサラの長い金髪を続けて優しく撫でる。
「う~ん……」
サラも寝ぼけるフリをしながら、オレリアのサラを撫でる指にずっと恍惚としていた。
(いい……オレリアの指好き……太くて固いのに……気持ち良くて好き……すごく気持ちいい……)
そして……
目覚めているのに……
オレリアへのちょっとした反抗心からまだ起きられないフリを続けた。
しかしその内、オレリアの手が、サラの額にきた。
そのオレリアの手付きも、大切な壊れモノを触るように優しい。
「サラ様。熱はないようですが……医師をよびましょうか?」
オレリアの声は、凄く心配そうだった。
サラは、そのオレリアが心配してくれてるのがうれしいのと、医師がキライなのとで瞼をバッと上げた。
そして、ベッドの上オレリアに背を向けて横になっていたのを体を反転させた。
すると、サラの顔のすぐ真上に、ベッドに座っていたオレリアの端正な顔があった。
自然とサラとオレリアは、無言で見詰め合う形になった。
同時に、サラは一瞬、心臓が止まるんじゃないかと思う程、ドキっとした。
サラは、オレリアの顔も見慣れているはずだし……
どうしてだろうと思う。
小さい頃から、こんな風によく顔を近づけて呼び起こされるなんて日常だったはずなのに。
そして、しばらくただ見詰め合う内に、サラは、自然とオレリアの形の良い滑らかな唇が気になってそこに視線がいった。
サラの美しく煌めくアメジスト色の瞳でそれを見詰める。
すると……
オレリアは、急にフイっと横を向き、ベッドから降りた。
(えっ?!……)
そのなんとなく冷たく見えたオレリアの態度に、サラの心臓はキュッとなる。
そしてサラは、呆然としてしまう。
だが、そんなサラを一人置いていくように、オレリアはいたって何もないかのように尋ねた。
「ご気分はいかがですか?医師を呼びますか?」
「……医師はいい……大丈夫、もう起きられる……」
サラは、オレリアの態度が釈然としないまま、それを隠すように上半身起き上がり普通に答えた。
するとオレリアは不意に、サラにうれしい提案をしてきた。
「なら、サラ様……今朝は、私と一緒にバルコニーで朝食を取りませんか?」
「えっ?!……」
サラは、オレリアに対してはいたって単純だった。
落ち込んだり喜んだり忙しいが、サラの表情が、一気に明るくなった。
小さい頃からずっと、サラが朝食を食べる時は一人が多くて、世話人だったオレリアがいつも毎日近くに座っていてそれを見守っていてくれた。
そしてやっとオレリアがサラの婚約者になり、やっと一緒に食事が許されるようになったのに……
今度はオレリアが忙しくなり、サラと一緒に食事したのは、婚約者になって二カ月間でたった10回ほどだった。
今は殆どサラは一人で食事し、部屋の端にはメイド達が控えているだけで、サラは、オレリアのいない食事に寂しい思いをしていたから。
「それに今日は丸一日、私はサラ様と一緒にいられます。何をしますか?乗馬?カードゲーム?それともチェス?」
そのオレリアの追加の提案は、サラの今までの憂鬱を吹き飛ばし、体をフワフワとさせた。
「ほっ、本当に?!」
サラは我慢出来ず、幼子のような笑顔で破顔した。
「ええ……私は、ずっとサラ様のお側にいますよ」
オレリアは、さっきの冷た気な態度が嘘のように優しく微笑んだ。
逞しく、それなのに理知的で、欲望など一切持っていないかのような禁欲的な聖職者のような潔い、いつものオレリアらしい微笑みだった。
サラに、心からの安堵が戻った。
「オレリアと朝食を食べながら何をするか決める!」
心を弾ませサラは言って、即ベッドを降りて身支度しようとした。
しかし……
不意にサラは、自分がもっと幼い時から知ってる、オレリアの体温、ぬくもりを欲した。
そしてベッドに足を崩し座ったまま、両腕をオレリアに思いきり伸ばした。
これは、世話役のオレリアに抱擁をせがむ時のサラの幼少時のお決まりのポーズだった。
昔のオレリアは、サラが幼少時このポーズをしたら、必ず優しく抱き締めてくれた。
さすがにサラも16歳になったし、このポーズをするのは6年ぶり位だったが、なんとなく今ならオレリアが昔のように抱き締めてくれるのではと期待した。
「……」
しかし……オレリアは、何故か無言のまま一度下を向き暫くそのままでいると、やがてふと真剣な顔をサラに向けた。
それはサラが又ドキっとするほど、凄く大人の艶を纏った憂いの表情とも言うべきものだった。
そしていつもの、聖職者のようなオレリアの表情では無かった。
(アレ?……)
オレリアの予想外の表情に、サラの急浮上した気持ちはすぐ沈下した。
そして、その後のオレリアの言葉が、更にサラを傷つけた。
「サラ様……それは出来ません……どうか、どうか……サラ様……お願いですから、早く大人になって下さい……では、私は先にバルコニーの方に行っておりますので……」
そう言ってオレリアは、さっとサラの寝室を早足で去って行った。
(オレリア……早く大人になれって、そんな事、分かってる。分かってるよ。でも、久しぶりに、ちょっと、ちょっとだけ甘えたかっただけなのに?……婚約者なのに……以前みたいにちょっとだけ甘えてもダメなのか?オレリア……)
以前の世話役のオレリアなら微笑み、優しくすぐにサラを抱き締めてくれた。
最近明らかにサラは、オレリアが婚約者になってから、オレリアとの距離感が分からなくなっていたが……
今のオレリアの態度で更に分からなくなってしまった。
さっきは、あんなに心が弾んで幸せだったのに……
サラはベッドの上で一人、窓のカーテン越しの朝の柔らかな光を浴びながら、しばらく指一本動かす気すらなれず寂し気に佇んだ。
10
あなたにおすすめの小説
王様の恋
うりぼう
BL
「惚れ薬は手に入るか?」
突然王に言われた一言。
王は惚れ薬を使ってでも手に入れたい人間がいるらしい。
ずっと王を見つめてきた幼馴染の側近と王の話。
※エセ王国
※エセファンタジー
※惚れ薬
※異世界トリップ表現が少しあります
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*本編完結しました
計画的ルームシェアの罠
高木凛
BL
両親の転居をきっかけに、幼馴染の一ノ瀬涼の家に居候することになった湊。
「学生のうちは勉強に専念しろ」なんて正論を吐く涼に反発しながらも、湊は心に決めていた。
しかし湊は知らない。一ノ瀬涼の罠に。
【初回3話は毎日更新! 以降は火・木19時更新予定】
王命で第二王子と婚姻だそうです(王子目線追加)
かのこkanoko
BL
第二王子と婚姻せよ。
はい?
自分、末端貴族の冴えない魔法使いですが?
しかも、男なんですが?
BL初挑戦!
ヌルイです。
王子目線追加しました。
沢山の方に読んでいただき、感謝します!!
6月3日、BL部門日間1位になりました。
ありがとうございます!!!
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿
最強βの俺が偽装Ωになったら、フェロモン無効なのに狂犬王子に求愛されました~前世武道家なので物理で分からせます~
水凪しおん
BL
前世は日本の武道家、今世は平民β(ベータ)のルッツ。
「Ωだって強い」ことを証明するため、性別を偽り「Ω」として騎士団へ入団した彼は、その卓越した身体能力と前世の武術で周囲を圧倒する。
しかし、その強さと堂々とした態度が仇となり、最強のα(アルファ)である第一王子・イグニスの目に止まってしまった!
「お前こそ俺の運命の番だ」
βだからフェロモンなんて効かないのに、なぜかイグニスの熱烈な求愛(物理)攻撃を受ける日々に突入!?
勘違いから始まる、武闘派β×最強王子のドタバタ王宮BLファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる