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辺りは真っ白で、深い霧に包まれている。

「サラ様…サラ様…」

今年11歳になったのに、その年より少し幼い印象のサラは、その聞き覚えのある、優しい低い美声に周りをキョロキョロする。

昨夜ベッドに入った時と同じレースの就寝用のナイトローブを着て、長いストレートの金髪は、頭頂で結ばず下ろしたままだ。
 
「オレリア!オレリア!どこだ?どこにいる?!見えない!お前が見えない!オレリア!オレリア!オレリア!会いたい!今すぐお前の顔が見たい!」  

サラは叫び、尚必死で辺りを見回す。

「サラ様…サラ様…」

サラを呼ぶ声は、尚も続いた。

「オレリアぁぁー!!!」

サラは胸の辺りが苦しくてたまらなくなって叫ぶと、目が覚めた。

「ゆ…夢か…」

サラは、豪奢な天蓋付きのフカフカのベッドの上で目覚めた。

気分は、最悪だった。

しかし、部屋に差し込む窓のカーテン越しの光は穏やかで明るい朝を知らせていた。

ふと気づくと、サラの両目から涙が流れていた。

(11歳にもなった男子なのに…もっとしっかりしないと…)

と、サラはそれをすぐにキレイに両方の手の甲で拭いた。
















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