お見合いから本気の恋をしてもいいですか

濘-NEI-

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10.いざスペインへ①

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 ゴールデンウィークになり、いよいよ出発の日を迎え深夜の東京からロンドンを経由してマドリードに到着したのは、現地時間のお昼過ぎ。
 日本とそんなに気候が変わらないと聞いていたけれど、確かに過ごしやすいいいお天気だ。
 千颯くんはアイボリーのヘンリーネックシャツの袖を捲り、ボトムはカーキのカーゴパンツと黒のモカシン。
 私は白いTシャツに黒のサロペット。薄手のカーディガンを羽織って黒の履き慣れたパンプスを合わせた。
「いいお天気だね」
「晴れてて良かったよね」
 空の旅は思ったよりも快適で、遅延もなく乗り継ぎもスムーズだったので、機内でしっかりと睡眠も取れた。
 空港からはタクシーで、千颯くんのおじいちゃんおばあちゃんが住むコスラダという街まで移動する。
「凄いね。空港から近くて便利」
「そうなんだよ」
 閑静な住宅街でタクシーを降りると、大きな門扉の前で千颯くんがインターホンを鳴らす。
「オラ」
「チハヤ! ビエンベニード」
「クアント・ティエンポ」
 門を開けて姿を現した背の高い男性が、千颯くんを見るなり嬉しそうな顔をしてハグをしている。完全に外国人だけど、顔立ちからして、間違いなくこの人が千颯くんのおじいちゃんだ。
「オーラ・セニョリータ。キミがスズハだね? ようこそ、よく来たね」
「初めまして。お世話になります」
 突然の流暢な日本語に驚きつつ、ペコリと頭を下げてお辞儀すると、熱烈なハグで迎え入れられる。
「トシコが待っているよ。とりあえず入りなさい」
「グラシアス」
 呆気に取られながら案内されるまま家に入ると、玄関までやってきた千颯くんのおばあちゃんと対面する。
「あらあら、まあまあ! 遠いところよく来てくれたわね」
 おばあちゃんは早速千颯くんをハグして出迎えると、すぐに私に笑顔を向けて、同じようにハグしてくれる。
「ようこそいらっしゃい。あなたが涼葉ちゃんね。なんて可愛らしいのかしら」
「ばあちゃん、興奮しすぎだって」
「これが興奮せずにいられますか! 千颯の婚約相手なんだもの。大歓迎するわ。さあ、入ってちょうだい」
 家の中に入ると広々としたリビングの右にあるゲストルームに案内されて荷物を置かせてもらう。
 昼食を用意してくれているというので、そのまま手を洗ってダイニングに向かうと、その奥にあるキッチンからいい匂いがしてきた。
「お腹が減ったでしょ。サラダとボカディージョ、トルティージャも用意しといたからね」
「ワインも飲むかい?」
 おばあちゃんに続いておじいちゃんもニコニコしながら私に気を遣ってくれる。
「ありがとうございます」
 ご厚意に甘えてワインをいただくことにすると、千颯くんにボカディージョがなんなのか小声で質問する。
「ああ、ボカディージョはバゲットサンドみたいなものかな。スペインのサンドイッチだよ。トルティージャはスペインオムレツ」
「なるほど」
 千颯くんの説明通り、たっぷりのハムとチーズが挟まったバゲットサンドと、これまた具材たっぷりのスペインオムレツが運ばれてきた。
 千颯くんのおじいちゃんがワインを開けてくれて、それぞれにグラスが渡ると、たくさん食べるのよとおばあちゃんが笑顔を見せてくれる。
「サルー」
 みんなでグラスを合わせて乾杯すると、早速おばあちゃんの手料理をいただくことにした。

 料理を食べ終わって部屋に戻り、スーツケースから荷物を取り出してハンガーにかける。シワになるからクローゼットを使って構わないと、おばあちゃんに言われたからだ。
「ふう。お腹いっぱい」
「どうする。近所を散歩でもする?」
「そうだね、腹ごなしにちょっと歩きたいね」
「少し歩くけど、大きな公園があるんだよ。そこまで行ってみようか」
「うん」
 片付けを終えておばあちゃんたちに声をかけると、散歩しに出かける。夕飯は十八時だから、それまでには帰ってくるように声をかけられた。
「凄く素敵なところだね」
「気に入った?」
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