24 / 67
10.いざスペインへ①
しおりを挟む
ゴールデンウィークになり、いよいよ出発の日を迎え深夜の東京からロンドンを経由してマドリードに到着したのは、現地時間のお昼過ぎ。
日本とそんなに気候が変わらないと聞いていたけれど、確かに過ごしやすいいいお天気だ。
千颯くんはアイボリーのヘンリーネックシャツの袖を捲り、ボトムはカーキのカーゴパンツと黒のモカシン。
私は白いTシャツに黒のサロペット。薄手のカーディガンを羽織って黒の履き慣れたパンプスを合わせた。
「いいお天気だね」
「晴れてて良かったよね」
空の旅は思ったよりも快適で、遅延もなく乗り継ぎもスムーズだったので、機内でしっかりと睡眠も取れた。
空港からはタクシーで、千颯くんのおじいちゃんおばあちゃんが住むコスラダという街まで移動する。
「凄いね。空港から近くて便利」
「そうなんだよ」
閑静な住宅街でタクシーを降りると、大きな門扉の前で千颯くんがインターホンを鳴らす。
「オラ」
「チハヤ! ビエンベニード」
「クアント・ティエンポ」
門を開けて姿を現した背の高い男性が、千颯くんを見るなり嬉しそうな顔をしてハグをしている。完全に外国人だけど、顔立ちからして、間違いなくこの人が千颯くんのおじいちゃんだ。
「オーラ・セニョリータ。キミがスズハだね? ようこそ、よく来たね」
「初めまして。お世話になります」
突然の流暢な日本語に驚きつつ、ペコリと頭を下げてお辞儀すると、熱烈なハグで迎え入れられる。
「トシコが待っているよ。とりあえず入りなさい」
「グラシアス」
呆気に取られながら案内されるまま家に入ると、玄関までやってきた千颯くんのおばあちゃんと対面する。
「あらあら、まあまあ! 遠いところよく来てくれたわね」
おばあちゃんは早速千颯くんをハグして出迎えると、すぐに私に笑顔を向けて、同じようにハグしてくれる。
「ようこそいらっしゃい。あなたが涼葉ちゃんね。なんて可愛らしいのかしら」
「ばあちゃん、興奮しすぎだって」
「これが興奮せずにいられますか! 千颯の婚約相手なんだもの。大歓迎するわ。さあ、入ってちょうだい」
家の中に入ると広々としたリビングの右にあるゲストルームに案内されて荷物を置かせてもらう。
昼食を用意してくれているというので、そのまま手を洗ってダイニングに向かうと、その奥にあるキッチンからいい匂いがしてきた。
「お腹が減ったでしょ。サラダとボカディージョ、トルティージャも用意しといたからね」
「ワインも飲むかい?」
おばあちゃんに続いておじいちゃんもニコニコしながら私に気を遣ってくれる。
「ありがとうございます」
ご厚意に甘えてワインをいただくことにすると、千颯くんにボカディージョがなんなのか小声で質問する。
「ああ、ボカディージョはバゲットサンドみたいなものかな。スペインのサンドイッチだよ。トルティージャはスペインオムレツ」
「なるほど」
千颯くんの説明通り、たっぷりのハムとチーズが挟まったバゲットサンドと、これまた具材たっぷりのスペインオムレツが運ばれてきた。
千颯くんのおじいちゃんがワインを開けてくれて、それぞれにグラスが渡ると、たくさん食べるのよとおばあちゃんが笑顔を見せてくれる。
「サルー」
みんなでグラスを合わせて乾杯すると、早速おばあちゃんの手料理をいただくことにした。
料理を食べ終わって部屋に戻り、スーツケースから荷物を取り出してハンガーにかける。シワになるからクローゼットを使って構わないと、おばあちゃんに言われたからだ。
「ふう。お腹いっぱい」
「どうする。近所を散歩でもする?」
「そうだね、腹ごなしにちょっと歩きたいね」
「少し歩くけど、大きな公園があるんだよ。そこまで行ってみようか」
「うん」
片付けを終えておばあちゃんたちに声をかけると、散歩しに出かける。夕飯は十八時だから、それまでには帰ってくるように声をかけられた。
「凄く素敵なところだね」
「気に入った?」
日本とそんなに気候が変わらないと聞いていたけれど、確かに過ごしやすいいいお天気だ。
千颯くんはアイボリーのヘンリーネックシャツの袖を捲り、ボトムはカーキのカーゴパンツと黒のモカシン。
私は白いTシャツに黒のサロペット。薄手のカーディガンを羽織って黒の履き慣れたパンプスを合わせた。
「いいお天気だね」
「晴れてて良かったよね」
空の旅は思ったよりも快適で、遅延もなく乗り継ぎもスムーズだったので、機内でしっかりと睡眠も取れた。
空港からはタクシーで、千颯くんのおじいちゃんおばあちゃんが住むコスラダという街まで移動する。
「凄いね。空港から近くて便利」
「そうなんだよ」
閑静な住宅街でタクシーを降りると、大きな門扉の前で千颯くんがインターホンを鳴らす。
「オラ」
「チハヤ! ビエンベニード」
「クアント・ティエンポ」
門を開けて姿を現した背の高い男性が、千颯くんを見るなり嬉しそうな顔をしてハグをしている。完全に外国人だけど、顔立ちからして、間違いなくこの人が千颯くんのおじいちゃんだ。
「オーラ・セニョリータ。キミがスズハだね? ようこそ、よく来たね」
「初めまして。お世話になります」
突然の流暢な日本語に驚きつつ、ペコリと頭を下げてお辞儀すると、熱烈なハグで迎え入れられる。
「トシコが待っているよ。とりあえず入りなさい」
「グラシアス」
呆気に取られながら案内されるまま家に入ると、玄関までやってきた千颯くんのおばあちゃんと対面する。
「あらあら、まあまあ! 遠いところよく来てくれたわね」
おばあちゃんは早速千颯くんをハグして出迎えると、すぐに私に笑顔を向けて、同じようにハグしてくれる。
「ようこそいらっしゃい。あなたが涼葉ちゃんね。なんて可愛らしいのかしら」
「ばあちゃん、興奮しすぎだって」
「これが興奮せずにいられますか! 千颯の婚約相手なんだもの。大歓迎するわ。さあ、入ってちょうだい」
家の中に入ると広々としたリビングの右にあるゲストルームに案内されて荷物を置かせてもらう。
昼食を用意してくれているというので、そのまま手を洗ってダイニングに向かうと、その奥にあるキッチンからいい匂いがしてきた。
「お腹が減ったでしょ。サラダとボカディージョ、トルティージャも用意しといたからね」
「ワインも飲むかい?」
おばあちゃんに続いておじいちゃんもニコニコしながら私に気を遣ってくれる。
「ありがとうございます」
ご厚意に甘えてワインをいただくことにすると、千颯くんにボカディージョがなんなのか小声で質問する。
「ああ、ボカディージョはバゲットサンドみたいなものかな。スペインのサンドイッチだよ。トルティージャはスペインオムレツ」
「なるほど」
千颯くんの説明通り、たっぷりのハムとチーズが挟まったバゲットサンドと、これまた具材たっぷりのスペインオムレツが運ばれてきた。
千颯くんのおじいちゃんがワインを開けてくれて、それぞれにグラスが渡ると、たくさん食べるのよとおばあちゃんが笑顔を見せてくれる。
「サルー」
みんなでグラスを合わせて乾杯すると、早速おばあちゃんの手料理をいただくことにした。
料理を食べ終わって部屋に戻り、スーツケースから荷物を取り出してハンガーにかける。シワになるからクローゼットを使って構わないと、おばあちゃんに言われたからだ。
「ふう。お腹いっぱい」
「どうする。近所を散歩でもする?」
「そうだね、腹ごなしにちょっと歩きたいね」
「少し歩くけど、大きな公園があるんだよ。そこまで行ってみようか」
「うん」
片付けを終えておばあちゃんたちに声をかけると、散歩しに出かける。夕飯は十八時だから、それまでには帰ってくるように声をかけられた。
「凄く素敵なところだね」
「気に入った?」
1
あなたにおすすめの小説
地味系秘書と氷の副社長は今日も仲良くバトルしてます!
楓乃めーぷる
恋愛
見た目はどこにでもいそうな地味系女子の小鳥風音(おどりかざね)が、ようやく就職した会社で何故か社長秘書に大抜擢されてしまう。
秘書検定も持っていない自分がどうしてそんなことに……。
呼び出された社長室では、明るいイケメンチャラ男な御曹司の社長と、ニコリともしない銀縁眼鏡の副社長が風音を待ち構えていた――
地味系女子が色々巻き込まれながら、イケメンと美形とぶつかって仲良くなっていく王道ラブコメなお話になっていく予定です。
ちょっとだけ三角関係もあるかも?
・表紙はかんたん表紙メーカーで作成しています。
・毎日11時に投稿予定です。
・勢いで書いてます。誤字脱字等チェックしてますが、不備があるかもしれません。
・公開済のお話も加筆訂正する場合があります。
優しい雨が降る夜は
葉月 まい
恋愛
浮世離れした地味子 × 外資系ITコンサルのエリートイケメン
無自覚にモテる地味子に
余裕もなく翻弄されるイケメン
二人の恋は一筋縄ではいかなくて……
雨降る夜に心に届いた
優しい恋の物語
⟡☾·̩͙⋆☔┈┈┈ 登場人物 ┈┈┈ ☔⋆·̩͙☽⟡
風間 美月(24歳)……コミュニティセンター勤務・地味でお堅い性格
雨宮 優吾(28歳)……外資系ITコンサルティング会社勤務のエリートイケメン
完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす
小木楓
恋愛
完結しました✨
タグ&あらすじ変更しました。
略奪された大納言家の香子を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。
「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」
「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」
大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。
しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。
強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。
夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。
恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……?
「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」
逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。
それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。
「一生、私の腕の中で溺れていろ」
守るために壊し、愛するために縛る。
冷酷な仮面の下に隠された、
一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。
★最後は極上のハッピーエンドです。
※AI画像を使用しています。
禁断溺愛
流月るる
恋愛
親同士の結婚により、中学三年生の時に湯浅製薬の御曹司・巧と義兄妹になった真尋。新しい家族と一緒に暮らし始めた彼女は、義兄から独占欲を滲ませた態度を取られるようになる。そんな義兄の様子に、真尋の心は揺れ続けて月日は流れ――真尋は、就職を区切りに彼への想いを断ち切るため、義父との養子縁組を解消し、ひっそりと実家を出た。しかし、ほどなくして海外赴任から戻った巧に、その事実を知られてしまう。当然のごとく義兄は大激怒で真尋のマンションに押しかけ、「赤の他人になったのなら、もう遠慮する必要はないな」と、甘く淫らに懐柔してきて……? 切なくて心が甘く疼く大人のエターナル・ラブ。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」
母に紹介され、なにかの間違いだと思った。
だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。
それだけでもかなりな不安案件なのに。
私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。
「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」
なーんて義父になる人が言い出して。
結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。
前途多難な同居生活。
相変わらず専務はなに考えているかわからない。
……かと思えば。
「兄妹ならするだろ、これくらい」
当たり前のように落とされる、額へのキス。
いったい、どうなってんのー!?
三ツ森涼夏
24歳
大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務
背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。
小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。
たまにその頑張りが空回りすることも?
恋愛、苦手というより、嫌い。
淋しい、をちゃんと言えずにきた人。
×
八雲仁
30歳
大手菓子メーカー『おろち製菓』専務
背が高く、眼鏡のイケメン。
ただし、いつも無表情。
集中すると周りが見えなくなる。
そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。
小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。
ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!?
*****
千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』
*****
表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる