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18.報告②
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私はいわゆる生理不順で、固定のサイクルで生理が来る訳じゃないので、今回は完全に油断していた。
「はい、ハーブティー。薬は飲んだ?」
「さっき飲んだ。ありがとう」
さすがにそろそろ来るとは思っていたけれど、トイレに行ったタイミングで早めに気付けて良かった。
「ちゃんと家まで送るから安心して」
「大丈夫。そんな大袈裟なものじゃないよ。毎回のことだし」
「ダメダメ。車で送るから」
「ありがとう」
心配性だなと思う反面、千颯くんのこの優しさには感謝しかない。
「俺の家にも生理用品とか置いてていいからね」
「そんな、悪いよ」
「自分の家の方がゆっくりできるだろうけど、俺んちの方がベッドも広いし、ソファーだってゆっくりしてるし」
「いやいや、万が一にでも汚したらと思うと怖いよ」
「それでも生理痛とか酷いんでしょ」
「まあね」
「一緒にいたら助けてあげやすいし、俺今日スズの家に泊まろうかな」
「だから大袈裟だって」
苦笑しながらハーブティーを飲む。確かに貧血は酷いし生理痛もなかなかだけど、生理の度に助けてもらってたら千颯くんが参ってしまう。
「大袈裟じゃないよ。自分の顔色分かってる? 真っ青だよ」
「いやいや、いつものことなんで」
「ダメだよ。俺やっぱり今日は泊まりに行くよ」
「……分かった。でもなんのもてなしもできないからね」
「だから俺が行くんだよ。料理もちゃんとするし、それに掃除とか洗濯とか……あとは買い出し? 気兼ねなく言って」
「頼りになるね」
正直こんな時は一人で静かに過ごしたくはあるけれど、結婚する相手なんだから、こういう時の一面を見せないで過ごすことも難しいだろう。
生理不順に関しては毎回病院に行かなきゃと思うのに、いまだに行ってないので、近いうちにきちんと診てもらった方がいい。
結婚するなら子どものことも考える機会はあるだろうし、するべきことが結構山積みだ。
「そろそろ出る?」
「そうだね。なんかごめんね、ちぃちゃん」
「謝ることじゃないよ。こういう時こそ頼ってね」
「ありがとう」
「お礼もいいから」
千颯くんはそう言って私の頭をクシャッと撫でる。
私も逆の立場なら同じように考えるかもしれない。だからここは頑なにならずに甘えた方がいいんだろう。それが彼なりの優しさなんだから。
車で私の家に向かい、千颯くんは近くのコインパーキングに車を停めて、コンビニに寄ると言って一旦別れた。
「ふう。ただいま」
自宅に帰ってきたら安堵からなのか、ドッと倦怠感が押し寄せる。
浮腫んだ足から引き剥がすようにパンプスを脱いで部屋に上がり、そのままベッドに倒れ込む。
既にお腹や腰回りが痛く、僅かに頭痛もする。薬は飲んだので、もう少しすれば効いてきて楽にはなるだろう。
ベッドの上でゴロゴロして二十分くらい経ってから、千颯くんがやって来てコンビニで買って来てくれたフルーツゼリーを食べた。
「別に病人じゃないから、本当に気を遣わないでね」
「分かってはいるんだけどね。顔色見てるとかなり辛そうに見えるから」
「気のせいだと思うよ? 明日以降の方が酷いだろうし」
「まだ酷くなるの⁉︎ 女の人は大変だね」
「まあね」
千颯くんは一人っ子だし、今まで付き合って来た人がどうだったかは分からないけど、生理について詳しくなくても仕方ない。
今回のことは、実態を知ってもらういい機会だと考えることにする。
「お風呂はどうする?」
「怠いから明日にする。悪いけど、ちぃちゃんは勝手に入って。あとお布団も、このシーツ使ってくれていいから」
立ち上がってクローゼットを開けると、心配そうに千颯くんがついてくる。
「分かった。大丈夫だよ」
「ごめん、私着替えたらちょっと横になるね」
「じゃあ俺はシャワー使わせてもらうよ」
千颯くんが着替えを持ってバスルームに向かったのを確認すると、サッと部屋着に着替え、そのまま寝落ちしても大丈夫なように支度してからベッドに入った。
「はい、ハーブティー。薬は飲んだ?」
「さっき飲んだ。ありがとう」
さすがにそろそろ来るとは思っていたけれど、トイレに行ったタイミングで早めに気付けて良かった。
「ちゃんと家まで送るから安心して」
「大丈夫。そんな大袈裟なものじゃないよ。毎回のことだし」
「ダメダメ。車で送るから」
「ありがとう」
心配性だなと思う反面、千颯くんのこの優しさには感謝しかない。
「俺の家にも生理用品とか置いてていいからね」
「そんな、悪いよ」
「自分の家の方がゆっくりできるだろうけど、俺んちの方がベッドも広いし、ソファーだってゆっくりしてるし」
「いやいや、万が一にでも汚したらと思うと怖いよ」
「それでも生理痛とか酷いんでしょ」
「まあね」
「一緒にいたら助けてあげやすいし、俺今日スズの家に泊まろうかな」
「だから大袈裟だって」
苦笑しながらハーブティーを飲む。確かに貧血は酷いし生理痛もなかなかだけど、生理の度に助けてもらってたら千颯くんが参ってしまう。
「大袈裟じゃないよ。自分の顔色分かってる? 真っ青だよ」
「いやいや、いつものことなんで」
「ダメだよ。俺やっぱり今日は泊まりに行くよ」
「……分かった。でもなんのもてなしもできないからね」
「だから俺が行くんだよ。料理もちゃんとするし、それに掃除とか洗濯とか……あとは買い出し? 気兼ねなく言って」
「頼りになるね」
正直こんな時は一人で静かに過ごしたくはあるけれど、結婚する相手なんだから、こういう時の一面を見せないで過ごすことも難しいだろう。
生理不順に関しては毎回病院に行かなきゃと思うのに、いまだに行ってないので、近いうちにきちんと診てもらった方がいい。
結婚するなら子どものことも考える機会はあるだろうし、するべきことが結構山積みだ。
「そろそろ出る?」
「そうだね。なんかごめんね、ちぃちゃん」
「謝ることじゃないよ。こういう時こそ頼ってね」
「ありがとう」
「お礼もいいから」
千颯くんはそう言って私の頭をクシャッと撫でる。
私も逆の立場なら同じように考えるかもしれない。だからここは頑なにならずに甘えた方がいいんだろう。それが彼なりの優しさなんだから。
車で私の家に向かい、千颯くんは近くのコインパーキングに車を停めて、コンビニに寄ると言って一旦別れた。
「ふう。ただいま」
自宅に帰ってきたら安堵からなのか、ドッと倦怠感が押し寄せる。
浮腫んだ足から引き剥がすようにパンプスを脱いで部屋に上がり、そのままベッドに倒れ込む。
既にお腹や腰回りが痛く、僅かに頭痛もする。薬は飲んだので、もう少しすれば効いてきて楽にはなるだろう。
ベッドの上でゴロゴロして二十分くらい経ってから、千颯くんがやって来てコンビニで買って来てくれたフルーツゼリーを食べた。
「別に病人じゃないから、本当に気を遣わないでね」
「分かってはいるんだけどね。顔色見てるとかなり辛そうに見えるから」
「気のせいだと思うよ? 明日以降の方が酷いだろうし」
「まだ酷くなるの⁉︎ 女の人は大変だね」
「まあね」
千颯くんは一人っ子だし、今まで付き合って来た人がどうだったかは分からないけど、生理について詳しくなくても仕方ない。
今回のことは、実態を知ってもらういい機会だと考えることにする。
「お風呂はどうする?」
「怠いから明日にする。悪いけど、ちぃちゃんは勝手に入って。あとお布団も、このシーツ使ってくれていいから」
立ち上がってクローゼットを開けると、心配そうに千颯くんがついてくる。
「分かった。大丈夫だよ」
「ごめん、私着替えたらちょっと横になるね」
「じゃあ俺はシャワー使わせてもらうよ」
千颯くんが着替えを持ってバスルームに向かったのを確認すると、サッと部屋着に着替え、そのまま寝落ちしても大丈夫なように支度してからベッドに入った。
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