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4.オフ会④
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「そうだね。最後にロッソに確認してもいいかな」
「だから確認ってなに」
タラントさんとエルバを交互に見て困惑していると、エルバが真剣な顔で口を開く。
「ロッソ。本当に俺の恋人役、頼んでいいのかな」
改めて言葉にされるとすごく大変なことのような気がしたけど、本当に付き合うわけじゃなく、あくまでもフリを頼むだけだ。
「エルバが大丈夫なら。私でいいなら、よろしくお願いします」
「本当にいいの。俺、なんの仕事してるとか、どんな家族だとか全然教えてないよ。人に言えない秘密を抱えてたり、言えないような仕事してたらどうする? それでも協力出来るの」
「そっか。もしそうだったとしたら、うちは両親が警察官で兄は弁護士だし、反対されるかも知れないけど、本当に付き合う訳じゃないし大丈夫でしょ」
「え、そうなの?」
驚いた顔をするのはタラントさんだ。
「そうなんですよ。という訳で、エルバはうちの家庭事情を聞いて、それでも恋人役を引き受ける気持ちは変わらないかな」
今度は逆に私が質問する立場になる。
そもそも私が今まで恋をしても結婚まで話が進まなかったのは、この家庭環境が多少なりとも影響しているとは思う。
結婚の話を持ち出されて、する気はないんですよねと、半笑いで言い逃げできるタイプの親じゃないから、私も困っているのだ。
「うん。ロッソなら大丈夫。試すようなこと言ってごめんね」
「試す?」
「とりあえず、人に言えない仕事はしてないし、家族もそうだから安心して」
エルバの話によると、彼は見た目のせいで女性にいい思い出がないらしく、だからこそ結婚はおろか恋人を作る気もさらさらないという。
けれど仕事の立場や三十八という年齢のせいもあって、周りから結婚を強く望まれることが増え、持ち込まれるお見合い話などを断ることに疲れてしまったそうだ。
そんな中、タラントさんを介して私と知り合って、恋人のフリを頼めそうな人物だと踏んだそうだけど、なにせ彼の恵まれた容姿だ。
自分の見た目で釣り上げるのではなく、まずは私がどれだけ本気でこの話を受け止めてるか判断するために、きちんと確認しておきたかったらしい。
「ごめんね。ロッソがそんな浮ついた奴じゃないことは分かってたんだけど」
なにをそこまで頑なにと思ったけど、エルバは確かにモテることを喜んで過ごせるタイプじゃないんだろう。
「理由は分かったけどさ。実際会っちゃった訳だし、私がエルバに入れ上げるとは思わないの?」
そうなのだ。私は決して面食いではないけれど、ここまで綺麗な顔をしてると、思わず見惚れてしまう。
相手が一緒にゲームをして、くだらない話をしたエルバだと分かっているから、キュンとするまではいかないけれど、漂う色気にはドキドキさせられる。
「そういうことを遠慮なく聞いてくる時点で、ロッソはそういうタイプじゃないって分かるよ」
ニッコリ笑うとさらに破壊力を増す色気ではあるけれど、エルバが恋愛方面にうんざりしているのは、ゲームで一緒に遊んだ時にも色々聞かされている。
それにドキドキはしても、恋愛として好きかと言われると、そんなに思い上げるほど本人を知らないから、私にとってエルバの容姿はさほど問題じゃない。
「なるほどね。まあ私としては、うちの面倒な家族をあしらってくれるなら、それ相応に私も務めを果たすつもりだよ」
うちのうるさい親も、ここまでの色男を連れていけば、あるいは黙って見守る姿勢に切り替わるかも知れない。
「よし。じゃあせっかくの料理が冷めちゃうから、早くオフ会を再開するか!」
停滞した空気を掻き回すように、タラントさんがパンッと手を打って声を出すと、三人でようやくグラスを掲げて乾杯をする。
こうして私は、親を黙らせるための恋人役となるエルバとの交流を、一歩前進させたのだった。
「だから確認ってなに」
タラントさんとエルバを交互に見て困惑していると、エルバが真剣な顔で口を開く。
「ロッソ。本当に俺の恋人役、頼んでいいのかな」
改めて言葉にされるとすごく大変なことのような気がしたけど、本当に付き合うわけじゃなく、あくまでもフリを頼むだけだ。
「エルバが大丈夫なら。私でいいなら、よろしくお願いします」
「本当にいいの。俺、なんの仕事してるとか、どんな家族だとか全然教えてないよ。人に言えない秘密を抱えてたり、言えないような仕事してたらどうする? それでも協力出来るの」
「そっか。もしそうだったとしたら、うちは両親が警察官で兄は弁護士だし、反対されるかも知れないけど、本当に付き合う訳じゃないし大丈夫でしょ」
「え、そうなの?」
驚いた顔をするのはタラントさんだ。
「そうなんですよ。という訳で、エルバはうちの家庭事情を聞いて、それでも恋人役を引き受ける気持ちは変わらないかな」
今度は逆に私が質問する立場になる。
そもそも私が今まで恋をしても結婚まで話が進まなかったのは、この家庭環境が多少なりとも影響しているとは思う。
結婚の話を持ち出されて、する気はないんですよねと、半笑いで言い逃げできるタイプの親じゃないから、私も困っているのだ。
「うん。ロッソなら大丈夫。試すようなこと言ってごめんね」
「試す?」
「とりあえず、人に言えない仕事はしてないし、家族もそうだから安心して」
エルバの話によると、彼は見た目のせいで女性にいい思い出がないらしく、だからこそ結婚はおろか恋人を作る気もさらさらないという。
けれど仕事の立場や三十八という年齢のせいもあって、周りから結婚を強く望まれることが増え、持ち込まれるお見合い話などを断ることに疲れてしまったそうだ。
そんな中、タラントさんを介して私と知り合って、恋人のフリを頼めそうな人物だと踏んだそうだけど、なにせ彼の恵まれた容姿だ。
自分の見た目で釣り上げるのではなく、まずは私がどれだけ本気でこの話を受け止めてるか判断するために、きちんと確認しておきたかったらしい。
「ごめんね。ロッソがそんな浮ついた奴じゃないことは分かってたんだけど」
なにをそこまで頑なにと思ったけど、エルバは確かにモテることを喜んで過ごせるタイプじゃないんだろう。
「理由は分かったけどさ。実際会っちゃった訳だし、私がエルバに入れ上げるとは思わないの?」
そうなのだ。私は決して面食いではないけれど、ここまで綺麗な顔をしてると、思わず見惚れてしまう。
相手が一緒にゲームをして、くだらない話をしたエルバだと分かっているから、キュンとするまではいかないけれど、漂う色気にはドキドキさせられる。
「そういうことを遠慮なく聞いてくる時点で、ロッソはそういうタイプじゃないって分かるよ」
ニッコリ笑うとさらに破壊力を増す色気ではあるけれど、エルバが恋愛方面にうんざりしているのは、ゲームで一緒に遊んだ時にも色々聞かされている。
それにドキドキはしても、恋愛として好きかと言われると、そんなに思い上げるほど本人を知らないから、私にとってエルバの容姿はさほど問題じゃない。
「なるほどね。まあ私としては、うちの面倒な家族をあしらってくれるなら、それ相応に私も務めを果たすつもりだよ」
うちのうるさい親も、ここまでの色男を連れていけば、あるいは黙って見守る姿勢に切り替わるかも知れない。
「よし。じゃあせっかくの料理が冷めちゃうから、早くオフ会を再開するか!」
停滞した空気を掻き回すように、タラントさんがパンッと手を打って声を出すと、三人でようやくグラスを掲げて乾杯をする。
こうして私は、親を黙らせるための恋人役となるエルバとの交流を、一歩前進させたのだった。
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